人の話を聞かない婚約者

夢草 蝶

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カナとソール

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 ヴィネの恋人のとんでもない情報を明かし、レオンは生徒会室へ帰っていった。
 再び二人だけの時間が訪れる。

「ねぇ、ソール」

「何?」

「私たち、婚約者としてうまくやっていけそうだね」

 デートのスケジュールを考えるのが楽しい。
 会話が弾む。
 一緒にいるのが自然だ。
 共にいて居心地がいいのが、共に歩む上で一番大切なことだとカナは考える。
 この心地よさはヴィネが隣にいた時にはなかったものだ。

「うん」

 カナの言葉にソールも頷く。

 未来のことは誰にもわからない。
 けれど、上手くやっていきたい。
 せっかく結ばれた縁なのだから。

 特にカナは二度目の婚約ということもあり、同じ轍を踏みたくないというのもある。

 二人にはわかっていた。
 まだ互いに対する想いは成熟していない。今は言わば、やっと色づき始めた蕾くらいの段階だ。
 けれど、カナはソールといて楽しいし、ソールもまたそうだった。
 これから胸に撒かれた小さな種は、婚約者という関係に相応しい花を咲かせる。
 そんな予感があった。







 次の休日。
 ソールとカナはデートらしく待ち合わせをし、美術館へ向かう途中に異様な光景を見た。
 それはあのヴィネが少女に追い縋っている姿だった。

「な、なぁ、俺たちは恋人だよな?」

「ええ、もちろん」

「だよな。そうだよな!」

「ヴィネは大切なよ」

「・・・・・・!」

 ミラが笑顔で繰り出した攻撃に、ヴィネは沈んだ。当然、見てないふりをした。



「見て見て。切り絵のランプ作りだって。やってこーよ」

「荷物が嵩張るぞ」

「平気平気。いざとなれば駅のコインロッカーに預ければオーケーでしょ。ね? やってこ?」

 わざとらしく可愛いおねだりをすれば、ソールほ折れる。もちろんソールにもカナが狙ってやっていることはわかっていたが、反論するつもりはハナからなかった。

「午後の演奏会も楽しみだねぇ。私シンバルのジャーンって音が好きー」

「シンバルめっちゃ連打する曲あるぞ。今日のリストにもある」

「何それー! めっちゃ気になる!」

「試聴聞く?」

「んー、せっかくだしお楽しみにとっとく」

「そうか」

 他愛ない楽しい話をして、二人は歩いていく。
 空は晴天。
 今日は絶好のデート日和だ。
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