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カナとソール
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ヴィネの恋人のとんでもない情報を明かし、レオンは生徒会室へ帰っていった。
再び二人だけの時間が訪れる。
「ねぇ、ソール」
「何?」
「私たち、婚約者としてうまくやっていけそうだね」
デートのスケジュールを考えるのが楽しい。
会話が弾む。
一緒にいるのが自然だ。
共にいて居心地がいいのが、共に歩む上で一番大切なことだとカナは考える。
この心地よさはヴィネが隣にいた時にはなかったものだ。
「うん」
カナの言葉にソールも頷く。
未来のことは誰にもわからない。
けれど、上手くやっていきたい。
せっかく結ばれた縁なのだから。
特にカナは二度目の婚約ということもあり、同じ轍を踏みたくないというのもある。
二人にはわかっていた。
まだ互いに対する想いは成熟していない。今は言わば、やっと色づき始めた蕾くらいの段階だ。
けれど、カナはソールといて楽しいし、ソールもまたそうだった。
これから胸に撒かれた小さな種は、婚約者という関係に相応しい花を咲かせる。
そんな予感があった。
◆
次の休日。
ソールとカナはデートらしく待ち合わせをし、美術館へ向かう途中に異様な光景を見た。
それはあのヴィネが少女に追い縋っている姿だった。
「な、なぁ、俺たちは恋人だよな?」
「ええ、もちろん」
「だよな。そうだよな!」
「ヴィネは大切な三番目の恋人よ」
「・・・・・・!」
ミラが笑顔で繰り出した攻撃に、ヴィネは沈んだ。当然、見てないふりをした。
「見て見て。切り絵のランプ作りだって。やってこーよ」
「荷物が嵩張るぞ」
「平気平気。いざとなれば駅のコインロッカーに預ければオーケーでしょ。ね? やってこ?」
わざとらしく可愛いおねだりをすれば、ソールほ折れる。もちろんソールにもカナが狙ってやっていることはわかっていたが、反論するつもりはハナからなかった。
「午後の演奏会も楽しみだねぇ。私シンバルのジャーンって音が好きー」
「シンバルめっちゃ連打する曲あるぞ。今日のリストにもある」
「何それー! めっちゃ気になる!」
「試聴聞く?」
「んー、せっかくだしお楽しみにとっとく」
「そうか」
他愛ない楽しい話をして、二人は歩いていく。
空は晴天。
今日は絶好のデート日和だ。
再び二人だけの時間が訪れる。
「ねぇ、ソール」
「何?」
「私たち、婚約者としてうまくやっていけそうだね」
デートのスケジュールを考えるのが楽しい。
会話が弾む。
一緒にいるのが自然だ。
共にいて居心地がいいのが、共に歩む上で一番大切なことだとカナは考える。
この心地よさはヴィネが隣にいた時にはなかったものだ。
「うん」
カナの言葉にソールも頷く。
未来のことは誰にもわからない。
けれど、上手くやっていきたい。
せっかく結ばれた縁なのだから。
特にカナは二度目の婚約ということもあり、同じ轍を踏みたくないというのもある。
二人にはわかっていた。
まだ互いに対する想いは成熟していない。今は言わば、やっと色づき始めた蕾くらいの段階だ。
けれど、カナはソールといて楽しいし、ソールもまたそうだった。
これから胸に撒かれた小さな種は、婚約者という関係に相応しい花を咲かせる。
そんな予感があった。
◆
次の休日。
ソールとカナはデートらしく待ち合わせをし、美術館へ向かう途中に異様な光景を見た。
それはあのヴィネが少女に追い縋っている姿だった。
「な、なぁ、俺たちは恋人だよな?」
「ええ、もちろん」
「だよな。そうだよな!」
「ヴィネは大切な三番目の恋人よ」
「・・・・・・!」
ミラが笑顔で繰り出した攻撃に、ヴィネは沈んだ。当然、見てないふりをした。
「見て見て。切り絵のランプ作りだって。やってこーよ」
「荷物が嵩張るぞ」
「平気平気。いざとなれば駅のコインロッカーに預ければオーケーでしょ。ね? やってこ?」
わざとらしく可愛いおねだりをすれば、ソールほ折れる。もちろんソールにもカナが狙ってやっていることはわかっていたが、反論するつもりはハナからなかった。
「午後の演奏会も楽しみだねぇ。私シンバルのジャーンって音が好きー」
「シンバルめっちゃ連打する曲あるぞ。今日のリストにもある」
「何それー! めっちゃ気になる!」
「試聴聞く?」
「んー、せっかくだしお楽しみにとっとく」
「そうか」
他愛ない楽しい話をして、二人は歩いていく。
空は晴天。
今日は絶好のデート日和だ。
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