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勉強のコツを訊いてみた
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序盤にトラブルがあったものの、懇親会はなんとか平和的に終わった。
退場していく生徒たちを見送り、片付け作業に入る。
飾り付け担当だった私は、自分でやっといてなんだが、大変だったので一緒にやったという名目で会計様を捕まえて、諸々の備品を運び出し、最後に壁紙を剥がす作業をしていた。
「ルテナさん、俺の持ち回り終わったから手伝うよ」
「ケイオットさん、ありがとうございます。じゃあ、その専用のヘラ使ってくれますか? それ使うと、綺麗に剥がせて再利用出来るんです」
「了解。えーっと、継ぎ目は──」
「後ろ、後ろ」
手伝いを申し出てくれたのは、同じ学年の男子生徒のケイオットさん。
クラスは違うけれど、彼は有名人だから知っている。何せ、毎回テストの成績表で一番最初に名前が書かれる学年主席様だからね。
「でも意外でした。ケイオットさんが懇親会準備に参加してるなんて。私みたいに進級が危ないわけじゃないんでしょ?」
「あはは・・・・・・ルテナさんの参加動機は大分レアケースだと思うよ? 俺は元々、こういう裏方仕事が好きなんだ」
「へぇ。変わってますね。勉強する時間だって減っちゃうでしょう?」
「勉強は好きでやっているだけだから。余程下がらなければ成績は気にしてないんだ。ルテナさんにとっての探索みたいなものかな?」
「私だったら、全部の時間探索に使いたいって思いますけれどねー。勉強とかする気全く起きませんよ」
「けど、成績いいじゃない。ルテナさん、毎回十五位以内にはいるし」
「山勘ですよ。私、運と要領はいいんで」
元々記憶力は悪くないし、授業中に先生がテストで出すっていった場所に印をつけておけば、後は山を張れば大体当たるのでなんとかなる。
おかげで懇親会の手伝いだけで留年回避を見込める。これで学力不振だったら、問答無用で留年──いや、その前に世話焼きの担任にとうに自習室に連行されていただろう。
「すごいなぁ。俺なんて勉強しててここが出るかな? って思ったの当たったこと一度もないよ。だから、満遍なく勉強するようになって勉強が好きになったからいいけど」
「それで勉強好きになれる辺り、ケイオットさんの方がすごいですよ。私、趣味関連以外の勉強嫌いなんですよねぇ。やらないと成績下がってお母さんに怒られるから、予習復習はある程度してるんですけど、めちゃくちゃ憂鬱になります。何か好きになるコツとかってあるんですか?」
「ええ? コツ、かぁ。うーん、俺の場合、問題解けるのが楽しいんだよね。こう、冒険物語の難しい試練を攻略していくみたいな感覚で。達成感を味わえるっていうか。ルテナさんの感覚に例えると──そうだなぁ。神都の新しいエリアを開拓出来た感じ?」
「それはめっちゃ分かります。ああ!」
「ど、どうしたの?」
「この間ギルドが新しいエリア見つけたの思い出しました・・・・・・うぅ、休みに入るまで行けない・・・・・・完っ全に出遅れましたぁ・・・・・・」
「げ、元気だしてっ」
ガックリと膝をついて頽れた私に、ケイオットさんがおろおろしながら励ましの声を掛けてくれる。
嬉しいけれど、ああ、けど、新エリアぁ・・・・・・。
行きたい行きたい行きたい。
ただでさえ、手つかずのエリアなんて激戦区なのに、今回開拓されたのは首都・セイクリッド!
ああああぁ! 絶対、神々の遺産だってごろごろあるだろうに。
行けるのが次の休みじゃ、もうほとんど探索し尽くされてるだろうなぁ。それでも行くけど。
それはそれとして落ち込んで手が止まり、作業が停滞した私に厳しい声が飛んでくる。
「おい、ルテナ。何やってるんだ。「一緒に作業したから、ディルガス様も飾り付け班ですよね?」とか言って、人を強引に手伝わせておいて手を止めるな。ちゃっちゃっと働け!」
そう言ってきたのは、友好的な関係を築けたとは言いにくいものの、なんやかんやでネルト会長以上に一緒に行動することの多かった生徒会長会計のディルガス様だった。
取り外したガーランドや丸めた壁紙をいっぱいに抱えたディルガス様は、眉間に深い皺を寄せ、不機嫌そうにこちらを睨みつけていた。
退場していく生徒たちを見送り、片付け作業に入る。
飾り付け担当だった私は、自分でやっといてなんだが、大変だったので一緒にやったという名目で会計様を捕まえて、諸々の備品を運び出し、最後に壁紙を剥がす作業をしていた。
「ルテナさん、俺の持ち回り終わったから手伝うよ」
「ケイオットさん、ありがとうございます。じゃあ、その専用のヘラ使ってくれますか? それ使うと、綺麗に剥がせて再利用出来るんです」
「了解。えーっと、継ぎ目は──」
「後ろ、後ろ」
手伝いを申し出てくれたのは、同じ学年の男子生徒のケイオットさん。
クラスは違うけれど、彼は有名人だから知っている。何せ、毎回テストの成績表で一番最初に名前が書かれる学年主席様だからね。
「でも意外でした。ケイオットさんが懇親会準備に参加してるなんて。私みたいに進級が危ないわけじゃないんでしょ?」
「あはは・・・・・・ルテナさんの参加動機は大分レアケースだと思うよ? 俺は元々、こういう裏方仕事が好きなんだ」
「へぇ。変わってますね。勉強する時間だって減っちゃうでしょう?」
「勉強は好きでやっているだけだから。余程下がらなければ成績は気にしてないんだ。ルテナさんにとっての探索みたいなものかな?」
「私だったら、全部の時間探索に使いたいって思いますけれどねー。勉強とかする気全く起きませんよ」
「けど、成績いいじゃない。ルテナさん、毎回十五位以内にはいるし」
「山勘ですよ。私、運と要領はいいんで」
元々記憶力は悪くないし、授業中に先生がテストで出すっていった場所に印をつけておけば、後は山を張れば大体当たるのでなんとかなる。
おかげで懇親会の手伝いだけで留年回避を見込める。これで学力不振だったら、問答無用で留年──いや、その前に世話焼きの担任にとうに自習室に連行されていただろう。
「すごいなぁ。俺なんて勉強しててここが出るかな? って思ったの当たったこと一度もないよ。だから、満遍なく勉強するようになって勉強が好きになったからいいけど」
「それで勉強好きになれる辺り、ケイオットさんの方がすごいですよ。私、趣味関連以外の勉強嫌いなんですよねぇ。やらないと成績下がってお母さんに怒られるから、予習復習はある程度してるんですけど、めちゃくちゃ憂鬱になります。何か好きになるコツとかってあるんですか?」
「ええ? コツ、かぁ。うーん、俺の場合、問題解けるのが楽しいんだよね。こう、冒険物語の難しい試練を攻略していくみたいな感覚で。達成感を味わえるっていうか。ルテナさんの感覚に例えると──そうだなぁ。神都の新しいエリアを開拓出来た感じ?」
「それはめっちゃ分かります。ああ!」
「ど、どうしたの?」
「この間ギルドが新しいエリア見つけたの思い出しました・・・・・・うぅ、休みに入るまで行けない・・・・・・完っ全に出遅れましたぁ・・・・・・」
「げ、元気だしてっ」
ガックリと膝をついて頽れた私に、ケイオットさんがおろおろしながら励ましの声を掛けてくれる。
嬉しいけれど、ああ、けど、新エリアぁ・・・・・・。
行きたい行きたい行きたい。
ただでさえ、手つかずのエリアなんて激戦区なのに、今回開拓されたのは首都・セイクリッド!
ああああぁ! 絶対、神々の遺産だってごろごろあるだろうに。
行けるのが次の休みじゃ、もうほとんど探索し尽くされてるだろうなぁ。それでも行くけど。
それはそれとして落ち込んで手が止まり、作業が停滞した私に厳しい声が飛んでくる。
「おい、ルテナ。何やってるんだ。「一緒に作業したから、ディルガス様も飾り付け班ですよね?」とか言って、人を強引に手伝わせておいて手を止めるな。ちゃっちゃっと働け!」
そう言ってきたのは、友好的な関係を築けたとは言いにくいものの、なんやかんやでネルト会長以上に一緒に行動することの多かった生徒会長会計のディルガス様だった。
取り外したガーランドや丸めた壁紙をいっぱいに抱えたディルガス様は、眉間に深い皺を寄せ、不機嫌そうにこちらを睨みつけていた。
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