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皆様、頭をヒヤシンス
日常が異世界になって取り残された
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ヤバい。王子が壊れた。
いやいや、これはこうちょっとズレた冗談とかですよね。
「なるほど。このお花さんが王子の──」
いやいや! エリザベス様、これは真面目に取り合わなくていいやつでは!?
「ああ。俺はヒヤシンスと日々を共にし、どうしようもなく惹かれてしまったんだ!」
ええ-・・・・・・。
日々を共にって、そのヒヤシンス、理科の授業で育ててたやつですよね。
いや、確かに香りがいいですし、私も自分のヒヤシンスに愛着を持ってますけど、何がどうなったらそれが恋愛感情になるんですか・・・・・・。
「王子──本当に、ヒヤシンスさんを愛しているのですね」
「そうだ」
「そうですか・・・・・・ですが、わたくしたちの婚約は国王陛下がお決めになったこと。申し訳ありませんが、ヒヤシンスさんには側妃になっていただくしか──」
ん?
「そんな──! 俺にヒヤシンスを二番目にしろというのか!?」
んん?
「はい」
「嫌だ! 俺はヒヤシンスを愛してるんだ! 側妃になどしない! 正妃にする!」
「無理をおっしゃらないで下さい」
「そうですわ! 王子、公爵令嬢であるエリザベス様を押し退けて、貴族でもないヒヤシンスを正妃にするなんて、許されるわけありません!」
「お待ちになって。王子がお育てあそばされたのであれば、このヒヤシンスは由緒正しいヒヤシンス様なのでは?」
「確かに──でも、お相手がどんなに由緒正しいヒヤシンス様であっても、エリザベス様以上に正妃に相応しい方はおりませんわ!」
取り巻きAと取り巻きBまで何を言ってるんですか!?
あと、同じ取り巻きでもあまり親しくないから名前が出てこない! ごめんね!
「ぐっ・・・・・・確かに、エリザベスがどれ程俺の婚約者として、王家に尽くしてくれたかは知っている。だが! それでも俺はヒヤシンスへの愛を捨てることは出来ない!」
「王子! 王子はこの先の国の未来を担う大切なお方。どうか、ヒヤシンスさんのことは側妃としてお迎えすることでご納得下さい。ヒヤシンスさんとの関係は邪魔しません。共に手と葉を取り合って、王子を支えていきますから」
「エリー・・・・・・」
恐ろしい──私は知らないうちに、恐ろしい異世界に迷い込んでしまったようです。
だって──だって──誰一人として王子の想う相手がヒヤシンスであることを問題にしていないのである!
え? え? 何コレ──私の方がおかしいの?
自分の中の常識が崩壊しそうになった時、はっと気づいた。
ヒヤシンスを持っているアルバート様の目が死んでいるのだ。それはこの状況を受け入れられていない証拠! きっと私もあんな顔をしているんですね!
アルバート様と目が合いました。
私の顔を見て、アルバート様の目に活力が戻っていかれます。
言葉はなくとも、アルバート様が何を思われているのかが分かります。だって、きっと、私とおんなじ気持ちだから──。
同志よ!!!!!!!!!!
いやいや、これはこうちょっとズレた冗談とかですよね。
「なるほど。このお花さんが王子の──」
いやいや! エリザベス様、これは真面目に取り合わなくていいやつでは!?
「ああ。俺はヒヤシンスと日々を共にし、どうしようもなく惹かれてしまったんだ!」
ええ-・・・・・・。
日々を共にって、そのヒヤシンス、理科の授業で育ててたやつですよね。
いや、確かに香りがいいですし、私も自分のヒヤシンスに愛着を持ってますけど、何がどうなったらそれが恋愛感情になるんですか・・・・・・。
「王子──本当に、ヒヤシンスさんを愛しているのですね」
「そうだ」
「そうですか・・・・・・ですが、わたくしたちの婚約は国王陛下がお決めになったこと。申し訳ありませんが、ヒヤシンスさんには側妃になっていただくしか──」
ん?
「そんな──! 俺にヒヤシンスを二番目にしろというのか!?」
んん?
「はい」
「嫌だ! 俺はヒヤシンスを愛してるんだ! 側妃になどしない! 正妃にする!」
「無理をおっしゃらないで下さい」
「そうですわ! 王子、公爵令嬢であるエリザベス様を押し退けて、貴族でもないヒヤシンスを正妃にするなんて、許されるわけありません!」
「お待ちになって。王子がお育てあそばされたのであれば、このヒヤシンスは由緒正しいヒヤシンス様なのでは?」
「確かに──でも、お相手がどんなに由緒正しいヒヤシンス様であっても、エリザベス様以上に正妃に相応しい方はおりませんわ!」
取り巻きAと取り巻きBまで何を言ってるんですか!?
あと、同じ取り巻きでもあまり親しくないから名前が出てこない! ごめんね!
「ぐっ・・・・・・確かに、エリザベスがどれ程俺の婚約者として、王家に尽くしてくれたかは知っている。だが! それでも俺はヒヤシンスへの愛を捨てることは出来ない!」
「王子! 王子はこの先の国の未来を担う大切なお方。どうか、ヒヤシンスさんのことは側妃としてお迎えすることでご納得下さい。ヒヤシンスさんとの関係は邪魔しません。共に手と葉を取り合って、王子を支えていきますから」
「エリー・・・・・・」
恐ろしい──私は知らないうちに、恐ろしい異世界に迷い込んでしまったようです。
だって──だって──誰一人として王子の想う相手がヒヤシンスであることを問題にしていないのである!
え? え? 何コレ──私の方がおかしいの?
自分の中の常識が崩壊しそうになった時、はっと気づいた。
ヒヤシンスを持っているアルバート様の目が死んでいるのだ。それはこの状況を受け入れられていない証拠! きっと私もあんな顔をしているんですね!
アルバート様と目が合いました。
私の顔を見て、アルバート様の目に活力が戻っていかれます。
言葉はなくとも、アルバート様が何を思われているのかが分かります。だって、きっと、私とおんなじ気持ちだから──。
同志よ!!!!!!!!!!
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