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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

二本

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 この二人が一番の関所というか、難関だよねぇ。

 大勢の前でキャットファイトを演じた二人。
 キャットファイト時点では、リンス嬢がギーシャの正式な婚約者で、マリス嬢はリンス嬢からギーシャを横取りした形になるし、ギーシャは婚約者がありながら他の女性に現を抜かしてしまったというのが周囲の認識だろう。

 まぁ、今となってはマリス嬢もリンス嬢も互いに対しては全く悪びれることもなく、単なる邪魔者から恋敵にシフトチェンジしたし、ギーシャはギーシャで、婚約破棄を申し出たことよりも今まで自分がリンス嬢の婚約者だったことを申し訳なく思ってるしで、なんだコレ。

 懐石鍋の蓋を開けたらカレーがくつくつ言ってたくらいには話が想定外の方向に進んでいた。
 割りと二人が潔い(?)性格だったおかげで、奉仕活動部や交際禁止とか諸々も反論されずに受け入れられたし。

 奉仕活動部の活動期間は私達が高等部に在学している間の三年間。
 高等部を卒業する頃には、ギーシャが誰を選ぼうとほとぼりは冷めているだろうし。

 ただ皆、二人の立場を考えて口には出さないけど、やっぱり不満や畏怖はあるだろう。
 何せ、片や魔法管理局の被保護者、片や筆頭侯爵令嬢。後ろ楯が大きすぎる。
 その上、マリス嬢は王子様に横恋慕するわ、リンス嬢はマリス嬢ぶん投げるわで、二人揃って色々剛の者過ぎる・・・・・・。
 こう現実になると、ゲームでのギーシャとヒロインの絡みの不自然さとかが目立つなー。普通、婚約者がいる人が他の女の子とキラキラスチルしちゃダメでしょう。だからこそ、悪役令嬢のゲームのリンス嬢は徹頭徹尾、極悪非道に描かれてたのかな?

 とはいえ、能力面はともかく、人間関係においてリアルにキャラクター補正は入らない。
 ので、ここでどうするかはマリス嬢とリンス嬢次第。

 と、思ったが、何やら揉めているような?

 何だ何だ?

 まさかまた喧嘩かと思いつつ、二人の様子を窺う。

「ちょっと、私が先に話すからそれ貸して」
「持ってるのは私なんだから、私が先でいいでしょう」

 どうやら魔法拡声器の取り合いのようだった。私がうっかりしてて一本しか持って来なかったから・・・・・・。
 裏に戻ればもう一本あるし、今から・・・・・・

 ごろごろごろ~。

『どうぞ』
「「え!? あ、どうも・・・・・・」」

 ごろごろごろ~。

 取りに行こうと思ったところで、取っ手のないタイプの台車に乗った謎の黒子がどこからともなく現れ、カンペを見せながら魔法拡声器を二人に差し出して颯爽と去っていった。

 ・・・・・・ナンダアレ。

 いや、知ってるぞ。

 ばっ!

 私は勢いよくラウルの方を見たが、私が振り返るのと同時にラウルは明後日の方向へと目を向けた。
 いや、誤魔化しても無理だから。ミリアとして見たのは今が初めてだけど。いたいた、あの黒子! ゲームに!
 ラウルルートでちょくちょく出てくるお助けキャラっぽい黒子さん!
 結局最後までシーエンス家の関係者かどうかすら明かされなかったマジの謎キャラ。
 ラウルの反応からしてやっぱ、シーエンス家の関係者だったのか・・・・・・本当に何者なんだろう。

 一連の流れでシリアルに更にシリアルを振り掛けたような空気になったけど、それは置いておいて。
 ちゃんと二人分の魔法拡声器を手にしたマリス嬢とリンス嬢は、互いに目配せをしてアイコンタクトを取り、それからまるで鏡合わせのようにすっと頭を下げた。

「改めて」
「「申し訳ありませんでした」」

 謝罪の言葉で口火を切り、今度こそ二人の話が始まった。
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