165 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
友情の存在有無
しおりを挟む
「ホワイ? 何で何で何で? フツーに一番のヤバヤバ危険人物っぽくなかったですか? イクス。いや、何も考えてなさそーでしたけど、魔力的にはぶっちぎりでヤバい子ですよね!?」
「そう言われてもねぇ」
「私だって詳しくは知らないし」とマリス嬢があっさりと答える。
「てゆーか、釈放も意味不明ですけど、逃亡だったらもっとワケわかんないんですけど。何をどうしたら魔法管理局から逃げられるんですか」
魔法管理局はレイセン王国の魔法機関の心臓部。
魔法犯罪者を一時的に収監することだってあるから、逃亡防止の仕掛けだって沢山施されている筈なのに。どうやって逃亡出来るのだろうか?
「釈放だの、逃亡だの、はっきりしないのね」
「私だって今朝師匠から聞いたばかりだし。何か凄く歯切れが悪くて釈放逃亡って言うより、イクスはもう管理局にいる訳でも、牢の中でもないって話だったわ。だったら、そのどっちかでしょ」
「えー・・・・・・流石に今日乱入して来たりはしないですよね?」
もし、今日のパーティーまでおじゃんになったらキレる自信あるんですけど。
「それはない。あの男が何者かは知らないけど、存在を把握している以上、状況を今より悪化させることはないわよ。師匠は女だけど、聖女として信用出来るから平気よ。女だけど」
大丈夫と断言するマリス嬢は聖女様を大分信用している様だった。
私は天幻鳥越しの聖女様しか知らないけど、聖女という大切な役目に選ばれた人だし、きっとしっかりしているのだろう。
先日はちょっと変わった人という印象を受けたけど、それは眠かったからだろう。
改めて考えると想像以上にブラックだな。あの職。
にしても。
「薄々察してはいましたが・・・・・・マリス嬢、ひょっとしなくても女性がお嫌いで?」
割りと以前からそうじゃないかと思ってたけど、ここ数日のマリス嬢の態度でなんとなく察していた。
マリス嬢は同性より異性の方が態度が柔らかいところがあった。恋のライバルであるリンス嬢に対してだけならまぁ、そんかものかと納得出来たけど、一昨日からよく話すようになって少しは軟化したとはいえ、私に対しても壁があるように感じる。
一番それを感じたのは先日、お花屋さんでミカさんと話している時だけど。
ぐいぐいとパーソナルスペースに入っていってるミカさんに対して、マリス嬢は常に抑揚のない声で返していたから。
もしかしたら、卒業式がそんなにいいものかと疑問を呈したマリス嬢にミカさんがあんなに怒ったのは、その距離感を寂しがったからかもしれない。
あ、寒い。
さっきの私みたいに、別に魔力で周囲に影響を及ぼしている訳でもないのに室温が下がった気がして、私はどうやらマリス嬢の地雷を踏んでしまったことに気づいた。
「ま、マリス嬢・・・・・・?」
ここ数日、本能でマリス嬢の地雷はヤバいと感じていたが、とうとう踏み抜いてしまったのだろうか?
恐る恐る様子を窺う。
すると、マリス嬢は能面のような、どういう感情なのか読み取れない表情で言った。
「当たり前でしょ」
それはあまりにも静かな肯定。
無機質過ぎる返答。
マジでヤバめの地雷を踏んだと確信して、どうしたらいいかと考える。
「この世に同性間での友情なんて存在しないわ。女に対して親愛が生まれるものですか」
「あら、意外ね。貴女みたいなタイプ。それこそ男女間での友情なんてないって言いそうだと思ってたけど」
続けられたマリス嬢の言葉に私より早くリンス嬢が返した。
リンス嬢の言葉にマリス嬢は何を言ってるんだと言いたそうな表情をした。
「何言ってるの。男女の友情なんてそれこそ幻想でしょう。つまり、この世に友情なんて存在しない」
証明終了と言いたげなキリッとした表情をしてから再び能面に戻り、マリス嬢はリンス嬢の髪を黙々と弄るが、流石の暴論に私も口を開いた。
「「いや、ある(わ)よ」」
計らずも私とハモったリンス嬢の引き顔が鏡越しに見えた。
「そう言われてもねぇ」
「私だって詳しくは知らないし」とマリス嬢があっさりと答える。
「てゆーか、釈放も意味不明ですけど、逃亡だったらもっとワケわかんないんですけど。何をどうしたら魔法管理局から逃げられるんですか」
魔法管理局はレイセン王国の魔法機関の心臓部。
魔法犯罪者を一時的に収監することだってあるから、逃亡防止の仕掛けだって沢山施されている筈なのに。どうやって逃亡出来るのだろうか?
「釈放だの、逃亡だの、はっきりしないのね」
「私だって今朝師匠から聞いたばかりだし。何か凄く歯切れが悪くて釈放逃亡って言うより、イクスはもう管理局にいる訳でも、牢の中でもないって話だったわ。だったら、そのどっちかでしょ」
「えー・・・・・・流石に今日乱入して来たりはしないですよね?」
もし、今日のパーティーまでおじゃんになったらキレる自信あるんですけど。
「それはない。あの男が何者かは知らないけど、存在を把握している以上、状況を今より悪化させることはないわよ。師匠は女だけど、聖女として信用出来るから平気よ。女だけど」
大丈夫と断言するマリス嬢は聖女様を大分信用している様だった。
私は天幻鳥越しの聖女様しか知らないけど、聖女という大切な役目に選ばれた人だし、きっとしっかりしているのだろう。
先日はちょっと変わった人という印象を受けたけど、それは眠かったからだろう。
改めて考えると想像以上にブラックだな。あの職。
にしても。
「薄々察してはいましたが・・・・・・マリス嬢、ひょっとしなくても女性がお嫌いで?」
割りと以前からそうじゃないかと思ってたけど、ここ数日のマリス嬢の態度でなんとなく察していた。
マリス嬢は同性より異性の方が態度が柔らかいところがあった。恋のライバルであるリンス嬢に対してだけならまぁ、そんかものかと納得出来たけど、一昨日からよく話すようになって少しは軟化したとはいえ、私に対しても壁があるように感じる。
一番それを感じたのは先日、お花屋さんでミカさんと話している時だけど。
ぐいぐいとパーソナルスペースに入っていってるミカさんに対して、マリス嬢は常に抑揚のない声で返していたから。
もしかしたら、卒業式がそんなにいいものかと疑問を呈したマリス嬢にミカさんがあんなに怒ったのは、その距離感を寂しがったからかもしれない。
あ、寒い。
さっきの私みたいに、別に魔力で周囲に影響を及ぼしている訳でもないのに室温が下がった気がして、私はどうやらマリス嬢の地雷を踏んでしまったことに気づいた。
「ま、マリス嬢・・・・・・?」
ここ数日、本能でマリス嬢の地雷はヤバいと感じていたが、とうとう踏み抜いてしまったのだろうか?
恐る恐る様子を窺う。
すると、マリス嬢は能面のような、どういう感情なのか読み取れない表情で言った。
「当たり前でしょ」
それはあまりにも静かな肯定。
無機質過ぎる返答。
マジでヤバめの地雷を踏んだと確信して、どうしたらいいかと考える。
「この世に同性間での友情なんて存在しないわ。女に対して親愛が生まれるものですか」
「あら、意外ね。貴女みたいなタイプ。それこそ男女間での友情なんてないって言いそうだと思ってたけど」
続けられたマリス嬢の言葉に私より早くリンス嬢が返した。
リンス嬢の言葉にマリス嬢は何を言ってるんだと言いたそうな表情をした。
「何言ってるの。男女の友情なんてそれこそ幻想でしょう。つまり、この世に友情なんて存在しない」
証明終了と言いたげなキリッとした表情をしてから再び能面に戻り、マリス嬢はリンス嬢の髪を黙々と弄るが、流石の暴論に私も口を開いた。
「「いや、ある(わ)よ」」
計らずも私とハモったリンス嬢の引き顔が鏡越しに見えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,273
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる