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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
令嬢とお姫様抱っこ
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「──なので、恐らくは断絶層を使用していると思います」
「そうか。なら、特に問題はないな」
「何の話ですか?」
全員に味噌汁を配り終えて、私も飲んでいると、ギーシャとコクさんが何やら神妙な顔つきで話していたので、そっちに近づいて訊ねてみた。
「猫の爪の温泉のことだ」
「地熱魔法を使用しているのであれば、周辺の温度が上がるはずですが、猫の爪に向かった時に特にそういった温度変化を感じなかったので、空間を熱源となる地面の空間を断ち切っているのではないかと」
「そういえば、温泉以外は特に暑くなかったかも?」
猫の爪にいた時を思い出す。
体感的に暑くはなかったし、地面からも熱は感じなかった。
断絶層とは魔法で空間の一部を囲み、切り取り、少しだけずらす魔法らしい。それなら、熱を持った部分の地面を切り取って温泉にだけ熱が流れるようにすることも出来るんだろう。
「テナントでも貸し出し中は使用者に権利が移るんだっけ?」
「レイセンでの規定なら、退去時に元通りにするなら魔法的改装も可能だ。敷地内であれば断絶層を作っても問題ない」
「それにしても、空間断絶の魔法を行うとは・・・・・・何者なのでしょうか」
コクさんの疑問にギーシャが俯き、考え込むよあうな仕草をする。
どうも、ギーシャは猫の爪が気になっているみたいだ。
「ギーシャ王子、何か気になるようでしたら、魔法管理局の方でその猫の爪を調べましょうか?」
「そんなこと出来るんですか? マリス嬢」
「それくらいの権限なら私にもあるわ。と言っても、秘密裏に人を動かすくらいだけど──って、ああ。平気よ。大臣の息がかかった連中じゃなくて、師匠の直属の人たちだから。大臣派閥よりは信頼出来るわ」
魔法管理局の人というと、今朝の印象が強くて信用していいのか分からないと思っていたら、マリス嬢は察したらしくそう付け加えた。
マリス嬢の師匠って聖女様だよね?
なら、安心だ。
「いや、いい。ただの思い過ごしだ。何の疑惑もない入局許可のある者を無断調査する訳にもいかないしな」
そう言ったギーシャの顔は晴れない。
猫の爪の人たちの印象は「いい人たち」だと思うけど、どうしてギーシャはこんなに気にしてるんだろう。
いや、気にしてるのは猫の爪というより、ロイドさんなのかな。それに、エリックさんのエーデルグラン式の数え方についてもあるし・・・・・・。
「あ、そうだ」
私はそのことを思い出し、エリックさんがエーデルグランの人間と同じ癖があることを報告した。
「エーデルグランの? そうか・・・・・・」
ギーシャは静かに頷くと、ますます何かを考え込むように黙ってしまった。
「ギーシャ、そんなに気になるんだったら、いっそ本当に調べてみたら?」
ギーシャがあまりにも暗い顔をしてたから、私はつい、そう提案してしまった。
「疑うようで、猫の爪の人たちには申し訳ないけど、白だったら白だったで、ずっと怪しむのも失礼だと思うし」
思い悩むよりは、ばーんと行動して解決しちゃえば? なんていう私らしい安直な考えを告げてみると、ギーシャが顔を上げ、少し唖然としていた。
「なんなら、私も手伝うよ?」
「──! いや、それはいい」
間髪入れずに、ギーシャに断られた。
なんだか、焦ってる?
ギーシャの顔が少しだけ青ざめる。
「殿下、顔色が──」
「ギーシャ──って、え?」
「ちょっ!」
「一体、何を・・・・・・!?」
気分の悪そうなギーシャを私、ギルハード様、マリス嬢、コクさんが心配していると、今まで静かに話に耳を傾けていたリンス嬢が思わぬ行動に出た。
「り、リンス?」
これには、あまり狼狽とかしないギーシャも戸惑っていた。
何故なら、リンス嬢は突然、ギーシャをお姫様抱っこしたから。
「ギーシャ王子、少しじっとしていて下さい。症状が悪化してしまいます」
言うが早いか、リンス嬢はギーシャを抱っこしたまま、競歩の速度で大広間から出ていった。
「ぎ、ギーシャ────!!!」
当然、私たちはその後を直ぐ様追いかけた。
「そうか。なら、特に問題はないな」
「何の話ですか?」
全員に味噌汁を配り終えて、私も飲んでいると、ギーシャとコクさんが何やら神妙な顔つきで話していたので、そっちに近づいて訊ねてみた。
「猫の爪の温泉のことだ」
「地熱魔法を使用しているのであれば、周辺の温度が上がるはずですが、猫の爪に向かった時に特にそういった温度変化を感じなかったので、空間を熱源となる地面の空間を断ち切っているのではないかと」
「そういえば、温泉以外は特に暑くなかったかも?」
猫の爪にいた時を思い出す。
体感的に暑くはなかったし、地面からも熱は感じなかった。
断絶層とは魔法で空間の一部を囲み、切り取り、少しだけずらす魔法らしい。それなら、熱を持った部分の地面を切り取って温泉にだけ熱が流れるようにすることも出来るんだろう。
「テナントでも貸し出し中は使用者に権利が移るんだっけ?」
「レイセンでの規定なら、退去時に元通りにするなら魔法的改装も可能だ。敷地内であれば断絶層を作っても問題ない」
「それにしても、空間断絶の魔法を行うとは・・・・・・何者なのでしょうか」
コクさんの疑問にギーシャが俯き、考え込むよあうな仕草をする。
どうも、ギーシャは猫の爪が気になっているみたいだ。
「ギーシャ王子、何か気になるようでしたら、魔法管理局の方でその猫の爪を調べましょうか?」
「そんなこと出来るんですか? マリス嬢」
「それくらいの権限なら私にもあるわ。と言っても、秘密裏に人を動かすくらいだけど──って、ああ。平気よ。大臣の息がかかった連中じゃなくて、師匠の直属の人たちだから。大臣派閥よりは信頼出来るわ」
魔法管理局の人というと、今朝の印象が強くて信用していいのか分からないと思っていたら、マリス嬢は察したらしくそう付け加えた。
マリス嬢の師匠って聖女様だよね?
なら、安心だ。
「いや、いい。ただの思い過ごしだ。何の疑惑もない入局許可のある者を無断調査する訳にもいかないしな」
そう言ったギーシャの顔は晴れない。
猫の爪の人たちの印象は「いい人たち」だと思うけど、どうしてギーシャはこんなに気にしてるんだろう。
いや、気にしてるのは猫の爪というより、ロイドさんなのかな。それに、エリックさんのエーデルグラン式の数え方についてもあるし・・・・・・。
「あ、そうだ」
私はそのことを思い出し、エリックさんがエーデルグランの人間と同じ癖があることを報告した。
「エーデルグランの? そうか・・・・・・」
ギーシャは静かに頷くと、ますます何かを考え込むように黙ってしまった。
「ギーシャ、そんなに気になるんだったら、いっそ本当に調べてみたら?」
ギーシャがあまりにも暗い顔をしてたから、私はつい、そう提案してしまった。
「疑うようで、猫の爪の人たちには申し訳ないけど、白だったら白だったで、ずっと怪しむのも失礼だと思うし」
思い悩むよりは、ばーんと行動して解決しちゃえば? なんていう私らしい安直な考えを告げてみると、ギーシャが顔を上げ、少し唖然としていた。
「なんなら、私も手伝うよ?」
「──! いや、それはいい」
間髪入れずに、ギーシャに断られた。
なんだか、焦ってる?
ギーシャの顔が少しだけ青ざめる。
「殿下、顔色が──」
「ギーシャ──って、え?」
「ちょっ!」
「一体、何を・・・・・・!?」
気分の悪そうなギーシャを私、ギルハード様、マリス嬢、コクさんが心配していると、今まで静かに話に耳を傾けていたリンス嬢が思わぬ行動に出た。
「り、リンス?」
これには、あまり狼狽とかしないギーシャも戸惑っていた。
何故なら、リンス嬢は突然、ギーシャをお姫様抱っこしたから。
「ギーシャ王子、少しじっとしていて下さい。症状が悪化してしまいます」
言うが早いか、リンス嬢はギーシャを抱っこしたまま、競歩の速度で大広間から出ていった。
「ぎ、ギーシャ────!!!」
当然、私たちはその後を直ぐ様追いかけた。
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