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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

驚くのも無理はない

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「到着しました」
「ありがとうございます」

 御者さんにお礼を言って、馬車から降りる。
 コクさんも魔法道具が入った包みを抱えて降りてきた。

「う~ん・・・・・・」
「どうかされましたか?」

 私がシーエンス家の門の前で唸りながらじっとしていたため、コクさんが声を掛けてくる。
 なので、私は猫の爪に行く前の経緯を簡単に説明した。

「いえ。実は慌てて録な説明もせずに飛び出して来ちゃったので、戻りにくいと言いますか」

 私が魔法道具を壊しちゃったのかと思ったから、言いにくくて出てきちゃったんだよね。だからか、帰りにくい。
 ギーシャは怒ったりしないだろうけど、びっくりさせちゃったかもだし。

「ミリア様はうか──いえ、考えるより、行動する派なんですね」

 今、迂闊って言いかけたな。

「気を使わなくていいですよ。そそっかしいのは自覚あるので。ただ、治らないんですよねぇ」
「自身の性格や性質は変えにくいものですから」
「そうですね! もはや、不治の病と思うことにします」
「そんな胸を張って言われましても──ですが、お立場としてはもう少し考えてから行動された方が良いかと・・・・・・」
「・・・・・・はい、気をつけます」

 全うな忠告にそれしか言えなかった。

「とりあえず、これは運び込んでしまいますね」
「はい。お願いします」



「只今、戻りました~・・・・・・」

 そろ~っと気配を殺して扉の影に隠れながら大広間の中を窺う。

「って、あれ?」
「あ、ミリア戻ったのか。どこに行ってたんだ?」
「どこか行ってたの?」
「その後ろにいる警邏隊の服を着た方は?」

 大広間では、ギーシャ、マリス嬢、リンス嬢がグループワークみたいに一つのテーブルに固まっていた。

「えっと、はい。猫の爪に行ってて──ところで、三人で何を?」
「そうだ。ミリア、この原稿はどうだろう? マリスとリンスにアドバイスをもらって書いてみたのだが」

 そう言って差し出されたのは、例の謝罪文の原稿。
 どうやら、行き詰まっていたところにマリス嬢とリンス嬢が現れて相談に乗ってもらってたようだ。
 この三人で謝罪文を考えるというのはマチガッテないし、それがいいだろう。ただ、この三人の共同謝罪文・・・・・・内容が想像しにくいな。

「ふんふん。ふむ──うん! いいと思う!」

 書かれていた内容はさっきのより格段に良くなっていた。これなら波風立てることはないだろう。

「そうか、よかった」

 ギーシャはほっとして、心なしか口角が緩んでいた。

「ねぇ、その人固まってるけど、大丈夫?」
「へ? 固まってるって──コクさん!? どうしました? コクさーん!」

 コクさんは何故か目を丸くして固まっていた。なんで!?
 呼び掛けても反応がないので、腕を掴んで軽く揺さぶってみる。だが、力が抜けてたのか、危うく魔法道具が腕からずり落ちそうになった。

「うわおーっと!」
「はっ!」

 私は咄嗟に膝をついて魔法道具を支え、コクさんも意識が戻ったのか、腕に力を入れ直した。

「「は~っ」」

 危機一髪の状況に私とコクさんは安堵のため息を溢した。あー、びっくりした! 危うく、また猫の爪のお世話になるところだった。流石に二度目は申し訳なすぎる。

「す、すみません!」
「いえ、大丈夫ですか?」

 もう大丈夫なことを確認してから、私は立ち上がる。
 コクさんは申し訳なさそうに何度も頭を下げてくれた。けど、いきなりどうしたんだろう。

「申し訳ありません。その──王子殿下がいるとは思わず、驚いてしまって」
「それは無理もありませんね」

 そういうことか。そういえば、ギーシャがいること言ってなかった。何の前触れもなく王子様に会ったら、そりゃ驚くよね。納得だ。
 当の本人であるギーシャは、何故自分がそこまで驚かれたのかがわかっていないらしく、私を見ながら「俺?」と言いたげに自身を指差してことりと首を傾げた。
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