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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

ミソスープと魔法道具持って

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 ところ戻って猫の爪。

「よし、これで問題ないな。終わったぞ」

 エリックさんが手にしていたスパナを置いて、魔法道具を見せてくる。

「おお!」

 私はお玉を置いて、魔法道具に近づいた。

「おお!」

 更に、修理の終わった魔法道具を掲げて、外れた部分がくっついたのを確認する。

「おおー!」

 感嘆の声を上げて、私は魔法道具を抱えたままその場でくるくると回ってしまった。

「すごいすごい! 完璧に元通りです。エリックさん天才!」
「当然だ」
「わー、エリックの鼻が木の枝みたいに伸びそう」

 胸を反らしているエリックさんにロイドさんがのんびり笑いながら言う。
 何はともあれ、治って良かった。

「ありがとうございます」

 私はエリックさんにお辞儀をしてから、猫の爪の人たちにも頭を下げた。

「いえいえ。こちらとしてもいいデータが取れたので」
「次は聖光石を溶かさない方法とか考えたいな。つっても、闇魔法の使い手がいないと無理か。ロイドー、生捕り出来る?」
「いけ・・・・・・っ!?」

 なかなかに物騒な物言いをするエリックさんにびっくりしてしまった。
 隣ではコクさんがぴくりと反応を示している。

「あはは。ちゃんと同意の上で協力してもらってますよ。エリックは言い回しが物騒でいけない」

 ぽんぽんとエリックさんの頭を叩くように撫でながら、ロイドさんは困り顔で首を横に振った。

「でも、闇魔法の影響を受けないっていうのはいいアイデアかも。防犯グッズとかに応用出来そうだし」
「その話、詳しくよろしいですか?」

 防犯グッズの辺りから、コクさんが何やらうずうずし出して、二人の会話に入っていった。警邏隊の人だからかそういう話題は気になるようだ。

「あ、じゃあ私はそろそろ戻りますね」
「っ! なら付き添います」
「え! でも、お話──」

 コクさんの申し出に私はちらりとロイドさんを窺った。

「話なら後日でも出来ます。また訪ねてもいいですか?」
「勿論、猫の爪はどんな方でもいつでも大歓迎てすよ」
「ということです」
「はぁ」

 圧が強い。
 ここで断るともっと時間を食いそうだから、私はコクさんに付き添って貰うことにした。

「お前たちは屯所に戻っていろ」
「「はい」」

 コクさんが部下の人たちに指示を出していると、ロイドさんが筒状のものを私に差し出してきた。

「水筒?」
「はい。さっきのミソスープです。ミリア嬢には作るのを手伝っていただいたので」
「あ、ありがとうございます」
「こっちはコク殿に」
「はい。ミソスープ、楽しみです。悪いが、これも一緒に持ち帰ってくれ」

 嵩張るからか、コクさんは水筒を部下の人に渡した。

「では、行きましょう」
「はい。あの、リリーちゃんによろしくお伝え下さい」
「ええ」
「──?」
「どうかしましたか?」

 頷いたアリスさんの後ろ。
 廊下に続く出入口に何か白いものが見えた。

「何か、白いものがひらひらって」
「ああ。蝶か何かでしょう。窓を開けっ放しにしてましたから」
「もう春ですもんね~」

 お姉様の薔薇園にも何匹かいたし、そういうこともあるだろう。白なら紋白蝶かな?

「じゃ、失礼します」
「はい」

 魔法道具はコクさんが持ってくれたので、私は水筒だけ持って猫の爪を後にした。
 さて、と。シーエンス家はどうなってるかな?
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