修羅場を観察していたら巻き込まれました。

夢草 蝶

文字の大きさ
上 下
127 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

危機管理

しおりを挟む
「大豆の話じゃないですよ! 大事な話です!」

 コクさんはむすっとした表情でこちらを見下ろしてくる。

「しゃきしゃきもやし♪ ネバネバ納豆♪」

 そして、ロイドさんはお構いなしに陽気に大豆の歌を歌い続けている。だからやめてー、

「メイアーツ家のご令嬢が護衛もなしに市井を歩くなど!」
「一応、一人って訳じゃないですよ? 外に御者さんいますし」
「今、ここで一人という時点で問題です」
「でも、後ろを着いてこられるのって苦手なんです」

 お散歩とかで後ろにぴったりとひっつかれて歩きたくはないし、何より圧を感じるんだよ。圧を。
 ドラマでSPに護衛されるお偉いさんになった気分だ。いや、一応偉いんだけど。でも、それって血筋や家柄だし、私自身が偉いことしたって訳じゃないから実感湧かない。

「苦手だからって、護衛をつけないなんて」
「これでも自衛手段はありますので。それに、身分が高くても護衛着けない人も結構いますよ」

 レイセンは王家や古参の貴族ほど魔力が強い。昔からこの地にいて、源泉の影響を受けているからだ。
 だから、爵位が高くても護衛をつけない人は結構いる。ギーシャも護衛に専任騎士のギルハード様がいらっしゃるけど、見たところ別行動もちょくちょくしているみたいだし。

「ですが、絶対に安全とは言えません。そもそも、魔力の高い人間は同じ魔力持ちよりも他の──例えば呪術師などを差し向けられるそうです。レイセンは治安の整った国ですし、王都の犯罪率は一パーセントにも満たないですが、油断はできません」
「うっ!」

 呪術師の名前を出されてはぐうの音も出ない。一昨日、呪術にかかったばかりだしね。
 そもそも、呪術師なんて滅多に見かけないし、闇魔法の使い手も同じくらい少ない。だとしたら、その二人が揃ってるってかなりのレアアースだ。呪術と闇魔法。二つを揃えるなんて、恐るべし。ランカータ。

「それに御身に何かあったら、中枢が揺らぎかねません」
「そんな大袈裟なー」
「大袈裟なものですか。小石爆発事件のようなとんでもない事態になりかねませんよ」
「う!?」

 それを想像して、真っ青になった。
 小石爆発事件とは、王様がまだ王子様だった頃に起こした事件。端的に言えば、王様がキレて、拳サイズにも満たない小石を思いっきり爆発したから。つまり、まんまな事件名。その動機は──お父様がその小石で転けたから。

「いや、でもそれは陛下が青年期の頃のお話ですし、一応、陛下も私の一人歩きは容認してますよ」

 だって、王様「ミリアは好きにしていなさい。全てはこちらで取り計らうから」って。ん? あれ? 取り計らうってなんだ? え!? まさか監視とかされてないよね!?
 あの王様ならやりかねないと、思わずキョロキョロと挙動不審になってしまった。
 でも、あの人なら普通に遠見の魔法とかで覗かれかねないしな。いや、そこまで暇じゃないか。

 と思いつつも、不安は疑惑を拭いきれない私であった。
 しかし、小石爆発事件。それを考えると、ますます一昨日の件が王様の耳に入るのがヤバい気がしてきた。

 どうか、お父様と聖女様が上手くやってくれますように。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか

鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。 王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、 大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。 「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」 乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン── 手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

幽霊夫人の心残り~夫の専属侍女に憑依して、娘の恋を応援します~

完菜
恋愛
伯爵夫人のフランシールは、気が付いたら実体のない体で空中に浮いていた。さっきまで、段々と呼吸が浅くなって自分の体温が下がるのを感じながら、泣きじゃくる娘の顔を見ていたのに……。娘の顔がぼんやりとしだして、ああもう見えない……そう思ったら魂だけの存在になっていた。神様の使いだと言う男性に連れられて、天界へ足を踏み入れる。そこで見たのは、夫の愛人から虐げられたフランシールの娘の姿だった。フランシールは、今まで味わったことがない憤りを覚える。このまま、生まれ変わることなんてできない。もう一度、現世に戻して欲しいと神様に訴えた。神様は、生まれ変わることと引き換えに、三カ月間だけ誰かに憑依することで時間をくれる。彼女は、決意する。自分の大切な唯一の宝である娘を、幸せへと導くのだと。娘を幸せにするための計画が、今始まる――――。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

処理中です...