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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

伝言ゲームあるある

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「ていうかロイドさん、店主さんだったんですね」
「はい。これでも一から猫の爪をここまでにした敏腕店主なんですよ!」
「自分でいうか・・・・・・」
「ロイドは経営者として優秀ですが、ここまで来れたのは運がよかったというのも大きいですね」

 えっへんと胸を張っているロイドさんに、エリックさんとアリスさんが淡白な視線を向ける。
 ロイドさん、このお店のご主人なのか~。色んなところ言ってるっぽいし、実は結構大人? エリックさんも外見年齢より実年齢が上だったし、ロイドさんも私が想像しているより大人なのかもしれない。

「店主? 店主が自分の店をワカメに・・・・・・?」

 警邏隊の人たちは、状況を掴めずに首を傾げている。そもそも、なんで強盗疑惑が出てきたんだろう?

「あの~、その強盗って話はどこから?」
「猫の爪という店がワカメ強盗に合っているという駆け込みの通報があったんです。確か、通りがかりのご婦人が見かけて我々のところに来ようとしたそうですが、新品の靴だったため靴擦れを起こし、転んでしまい、通りがかりの郵便配達員に言伝てを頼み、その配達員が腹を壊して駆け込んだ雑貨屋の主人に伝言を頼むも、主人がぎっくり腰だったため息子を代わりに使いに出したと。その雑貨屋の息子が通報者の少年です」
「伝言ゲームでよくある脚色だ!」

 私は思わず声を上げた。
 あるある。伝言ゲームで途中から聞き間違いや微妙に言い回しを変えたせいで内容が変わったり、変な設定追加しちゃったり。
 というか、伝言ゲームの過程はきっちり覚えてるのに、肝心の内容が支離滅裂になっちゃってるよ。その過程を覚える方が大変だと思うけど。

「? 強盗ではないのですか? 何か、その店主胡散臭いですが」
「怪しい者という自覚はありますが、正面から胡散臭い言われると割りと傷つきますね」
「事実だろ」
「仕方ありませんね」

 どうやら、猫の爪の店員は店主に対して辛辣なのがデフォルトのようであった。

「では、ワカメは?」
「あれはただの手違いでミソスープに増殖する薬品が混入しただけ」

 エリックさんが警邏隊に経緯を簡潔に説明する。

「ワカメの増殖は収まったので、ご安心下さい。お騒がせしました。ほら、ロイドも」
「いや~、面目ない」

 アリスさんがロイドさんの頭を押さえて一緒に頭を下げる。なんか、うっかり人の家にボール投げ込んじゃって盆栽の鉢植えを割って親に連れられて謝罪に来た子供みたいな絵面だ。
 ワカメ増殖の犯人であるロイドさんは眉を下げてている。

「つまり、事件ではなく、不意の事故ということですか?」
「はい」
「そうですか。それは失礼しました。非礼をお詫びします。ですが、店から溢れるほどのワカメは危険です。薬品の管理はきちんとしていただきたい」
「返す言葉もございません」

 うん。とりあえず薬品は高いところにしまわない方がいいね。なんか、心配になってきたから、帰ったら下のお兄様の実験室を確認しておこう。

「ところで」
「はい?」

 警邏隊の小隊長と呼ばれていた人は、ロイドさんに注意をし終えると、真剣な表情で訊ねた。

「出汁はニボシですか? それともコンブ? カツオブシ?」

 真剣な表情で味噌汁の出汁の材料について訊ねていた。何故なにゆえ
 しかし、その質問にロイドさんはワカメを両手に持ったまま、こう答えた。

「だし・・・・・・?」

 あ、これ出汁取らずに味噌入れちゃう人の反応だ。
 ロイドさんの反応に、小隊長さんは信じられないものを見たという顔を向ける。

「なん・・・・・・だと・・・・・・!?」
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