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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

レイセンの掟

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「えー。そんなのが王太子って帝国大丈夫なの?」
「というか、帝国の人間はそれがデフォっぽいんですよねぇ。今の皇帝が変わり種っていうか。それに現皇帝もなんだかんだで先帝から帝位簒奪してますし」

 簒奪って言っても、先帝がクレイジー過ぎてめちゃくちゃやったからそれを止めるための簒奪だったという話だけど。

「それは知ってる。先帝の暴走っぷりは酷かったらしいな。一部では呪術師の呪いを受けて精神を病んでたって話も訊くけど」
「そうなんですか?」
「ああ。風の噂で訊いた」

 ふぅん。呪術師かぁ。
 呪術師って聞くと、メア様の顔が浮かぶなぁ。あと、ルイアンさん。
 帝国にも呪術師がいるのかな?
 呪術が生まれた国はもうないし、呪術を継ぐ者も散り散りになったらしいからどこにいても不思議じゃないけど。

「真偽はわかんないけどな」
「デマっぽいですけどね。帝国の人間って心身ともに強靭ですから」

 エーデルグランの人々は精神力の強ければ、体も強い。
 レイセンが魔法で自衛してきた国なら、エーデルグランは普通の人間が持つ力だけで覇者となった国だ。特に王家の人間の胆力は半端ないらしい。
 とはいえ、無敗というわけではない。かつて、帝国も敗北という辛酸を味あわされたことがある。
 竜という存在に。
 逆に言えば、竜クラスの強さじゃないとどうにも出来ないくらい強い。
 生身で岩を叩き割り、滝を上り、大地を穿つという帝国民。魔法なしでこれとか、ヤバすぎる。

「そんなに強い?」
「強いですよ。きっと、魔法や呪術という存在がなければ大陸はとっくに征服されてたでしょう」
「ふぅん。じゃあさ、魔法を使えば勝てる?」
「・・・・・・」

 その問いに私は黙った。
 エリックさんは深い意味で言ったわけではないんだろうけど、その言葉を聞き流すことは出来なかった。

「エリックさん。今の言葉は訊かなかったことにします。なので、エリックさんももう口にしないで下さいね」

 自分でもびっくりするほど、機械的な声が出た。
 顔から表情が消える感覚がする。実際、今の私は真顔だと思う。エリックさんもびっくりしてるし。

「今の不味かった?」
「不味いですね。場合によっては王都から追い出されかねませんよ。魔法を戦争に使用するのはレイセンではご法度ですから」

 魔法の国・レイセン王国。
 魔法のご意見番。そんなこの国の役目の一つは、魔法を戦争に使わせないこと。
 それは決して破ってはいけない掟であり、レイセン王国の存在理由でもある。
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