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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

アリスの加入理由

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「猫の爪に入った理由?」
「はい。少し気になって。猫の爪は各地を転々としているようですし、どんな経緯があったのかなって」

 さっきのエリックさんの帝国式の数え方の件もあるし、ここから探りを入れてみよう。とはいえ、ちょっと踏み込み過ぎたかな? アリスさんに至っては今日が初対面だし。

「私は猫の爪が彩葉国を訪れた際に、ロイドに私が魔力を持っていると教えていただいて。それで、猫の爪で魔力の扱いを教えて貰おうと加入しました」

 アリスさんは急な質問にも嫌な顔一つせずに答えてくれた。

「ああ、海の向こうは魔力が伝わりにくいですからね」

 魔力の中心は源泉。それはこの大陸にあるレイセン王国にから広がっている。大陸には濃度に差があれど、全土に魔力はある。
 しかし、海の向こうの国は別だ。
 大陸から漏れた魔力は天の力と海の力に混ざり合ってしまうから。だから外の国では魔力はほとんど変質してしまい、純然な魔力はなかなか届かない。
 そんな場所で魔力を持って生まれるというのはなかなかのレアケースだ。
 だけど、魔力を持っているから大陸に? 生まれた国を離れて寂しくないのかな?

「はい。大陸に来てびっくりしました。特にレイセンは魔力が大気に満ちているので、なんと言いますか、とても馴染んでいる感じがします」
「そうなんですね」

 魔力持ちが大陸の外の大地に行くと、すごい違和感を感じるっていうけど、その逆バージョンみたいな感じ?

「へー、そうだったのか」
「・・・・・・」
「? なんだよ」

 アリスさんが何とも言えない表情でエリックさんを見て、はぁとため息を吐いた。

「貴方、その時ロイドの隣にいましたよね?」
「そだっけ?」
「というか、私を猫の爪に連れてったのが貴方なんですけど」
「あー? うんうん、そうだったー」
「エリックさん、棒読み」

 完全に忘れているようだった。そりゃ、アリスさんも複雑な顔をするわ。

「ま、いいですけどね」
「怒るなって」
「怒ってません」

 そう言いつつも、アリスさんはそっぽを向いてしまった。
 これはフォローを入れた方がいいのでは?
 って、エリックさん興味無くしたみたいに作業に戻っちゃってるし・・・・・・。

 けど、猫の爪が彩葉国にか。つまり、海を渡れる足を持っているということか。

「あ!」
「わっ! びっくりした。エリックさん、どうしました? 何か問題でも?」
「いや、ちょっと訊きたいことあったの思い出した。ダメだな。すぐ忘れる」
「ということは、そこまで重要なことではないのでは?」
「まあ、そうだけど」

 認めるんかい。
 まぁ、いいや。

「何でしょうか?」
「今のレイセンとエーデルグランってどんな感じなの?」

 んん?

「鴨がネギ背負ってきた」
「カモ? どういう意味だ?」
「こほん。いえ、何でも」

 好都合という意味です。
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