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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
エリックの美学
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「溶けてますね」
私は、エリックさんが持っているぐにゃぐにゃに変形したネジを見つめて言った。
「透明なネジなんて初めて見ました。けど、どうしてこんな形に? 熱いものの近くになんて置いてないのに──」
魔法道具は昨日、シーエンス家に運び込んで、鍵つきの小部屋に保管させてもらっていた。だから、ネジが歪んでしまうような心当たりはない。
「うーん、どういうことだ?」
エリックさんがネジに光を透かすように掲げ、じーと固めで覗き込んだ。
「エリックさんでも原因は分かりませんか?」
「いや、心当たりはある」
「え!?」
驚く私に、エリックさんがネジを握った手を差し出してくる。
私は釣られて両手を開いて差し出すと、その上にネジがぽとりと落とされた。
「それ、なんだか分かる?」
「え? 何ってネジ──ん? あれ? これ──」
ネジはよく見ると、きらきらと虹色の輝きを放っている。ダイヤモンドのファイアにも似た輝きだけど、これは魔法光だ。
ネジからは魔力を感じる。最初は魔法道具に込められた魔力かと思ったけど、これはネジが元から持っていた魔力のようだ。
魔力を持ったダイヤモンドに似た物質。
「聖光石?」
「正解」
「え!? 本当に!?」
当てずっぽうっで言ったら当たってしまった。てゆーか、聖光石ってすっごい頑丈でスーパーレアな魔法石なんだけど!?
それを魔法道具のネジに加工して使うなんて、聞いたこともない。
普通に魔法道具の核として使えちゃうものなのに!?
「いやいやいや! 何やってるんですか!?」
「は?」
「聖光石ってすっごい貴重なんですよ!? レイセンは当然のこと、他国でだって需要があるSSRアイテムなんですよ!?」
「えすえすれ・・・・・・? なんて?」
聞き慣れない言葉にきょとんとしているエリックさんは、私が聖光石を固着具として使ったことに驚いてることは分かったらしい。ストローでアイスチョコレートを啜ってから、答えた。
「んー、確かに聖光石は貴重だし、入手も難しい。純粋な魔力核として使うのが最適だな。けど、聖光石の強度を考えれば、部品としても普通に有能だ。固くて、丈夫。魔力をよく通すし、波長の乱れも調整してくれる」
「けど、何もネジにしなくても──」
「俺はな、一つの発明に全力を注ぐ質なんだよ。作ると決めたら、それ以外のことは考えられないし、材料は最もいいものを使う。これに聖光石の部品は最適解だった。それだけだ」
どうやら、エリックさんは自身の作る魔法道具に全力を注ぐ人のようだ。それが技師としての矜持なのだろう。
うん、でも分かるかも。私はこれといって趣味はない──強いて言うなら人間観察──し、打ち込んでいるものもない。だから、実感はないけど、身内に自身の好きなことに全力投球な人たちがいるからその情熱は分かる。
「エリックさんは魔法道具を作るのが好きなんですね」
「好きとか、嫌いとかじゃないな。何せ、俺は大天才だから。天が俺に魔法道具を作らせるんだ。それはもう、呼吸をするみたいに、当然に」
胸を張って、得意げな顔をしたエリックさんは、そっと魔法道具を撫でた。それは我が子に触れる父親のように優しい手つきで、慈しむ眼差しは優しかった。
なんだか、余計に申し訳なくなってきた。
「あれ? でも、聖光石のネジならなんでこんなことに?」
改めて聖光石のネジを見る。
うーん、耐久性抜群、耐熱性もある聖光石がこんなことになるなんて、どういうことだろう?
「エリックさんは分かってるんですよね」
「ああ。聖光石がこんなになる可能性が一つある。よっぽど強い闇魔法に当てられれば、聖光石は魔力を受け流しきれずに暴走して溶けるんだが、そんな強い闇魔法を受けるなんて──」
「・・・・・・闇魔法?」
エリックさんが不思議に思うもの無理はない。そんな強い闇魔法を使える人間なんて早々いない。
が、間の悪いことに昨夜はシーエンス家にとびきりヤバい闇魔法の使い手が侵入していた。
って、イクスか──────!!!
私は、エリックさんが持っているぐにゃぐにゃに変形したネジを見つめて言った。
「透明なネジなんて初めて見ました。けど、どうしてこんな形に? 熱いものの近くになんて置いてないのに──」
魔法道具は昨日、シーエンス家に運び込んで、鍵つきの小部屋に保管させてもらっていた。だから、ネジが歪んでしまうような心当たりはない。
「うーん、どういうことだ?」
エリックさんがネジに光を透かすように掲げ、じーと固めで覗き込んだ。
「エリックさんでも原因は分かりませんか?」
「いや、心当たりはある」
「え!?」
驚く私に、エリックさんがネジを握った手を差し出してくる。
私は釣られて両手を開いて差し出すと、その上にネジがぽとりと落とされた。
「それ、なんだか分かる?」
「え? 何ってネジ──ん? あれ? これ──」
ネジはよく見ると、きらきらと虹色の輝きを放っている。ダイヤモンドのファイアにも似た輝きだけど、これは魔法光だ。
ネジからは魔力を感じる。最初は魔法道具に込められた魔力かと思ったけど、これはネジが元から持っていた魔力のようだ。
魔力を持ったダイヤモンドに似た物質。
「聖光石?」
「正解」
「え!? 本当に!?」
当てずっぽうっで言ったら当たってしまった。てゆーか、聖光石ってすっごい頑丈でスーパーレアな魔法石なんだけど!?
それを魔法道具のネジに加工して使うなんて、聞いたこともない。
普通に魔法道具の核として使えちゃうものなのに!?
「いやいやいや! 何やってるんですか!?」
「は?」
「聖光石ってすっごい貴重なんですよ!? レイセンは当然のこと、他国でだって需要があるSSRアイテムなんですよ!?」
「えすえすれ・・・・・・? なんて?」
聞き慣れない言葉にきょとんとしているエリックさんは、私が聖光石を固着具として使ったことに驚いてることは分かったらしい。ストローでアイスチョコレートを啜ってから、答えた。
「んー、確かに聖光石は貴重だし、入手も難しい。純粋な魔力核として使うのが最適だな。けど、聖光石の強度を考えれば、部品としても普通に有能だ。固くて、丈夫。魔力をよく通すし、波長の乱れも調整してくれる」
「けど、何もネジにしなくても──」
「俺はな、一つの発明に全力を注ぐ質なんだよ。作ると決めたら、それ以外のことは考えられないし、材料は最もいいものを使う。これに聖光石の部品は最適解だった。それだけだ」
どうやら、エリックさんは自身の作る魔法道具に全力を注ぐ人のようだ。それが技師としての矜持なのだろう。
うん、でも分かるかも。私はこれといって趣味はない──強いて言うなら人間観察──し、打ち込んでいるものもない。だから、実感はないけど、身内に自身の好きなことに全力投球な人たちがいるからその情熱は分かる。
「エリックさんは魔法道具を作るのが好きなんですね」
「好きとか、嫌いとかじゃないな。何せ、俺は大天才だから。天が俺に魔法道具を作らせるんだ。それはもう、呼吸をするみたいに、当然に」
胸を張って、得意げな顔をしたエリックさんは、そっと魔法道具を撫でた。それは我が子に触れる父親のように優しい手つきで、慈しむ眼差しは優しかった。
なんだか、余計に申し訳なくなってきた。
「あれ? でも、聖光石のネジならなんでこんなことに?」
改めて聖光石のネジを見る。
うーん、耐久性抜群、耐熱性もある聖光石がこんなことになるなんて、どういうことだろう?
「エリックさんは分かってるんですよね」
「ああ。聖光石がこんなになる可能性が一つある。よっぽど強い闇魔法に当てられれば、聖光石は魔力を受け流しきれずに暴走して溶けるんだが、そんな強い闇魔法を受けるなんて──」
「・・・・・・闇魔法?」
エリックさんが不思議に思うもの無理はない。そんな強い闇魔法を使える人間なんて早々いない。
が、間の悪いことに昨夜はシーエンス家にとびきりヤバい闇魔法の使い手が侵入していた。
って、イクスか──────!!!
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