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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

火種は知らぬ間に

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「はい、これ。頼まれていたものよ」
「ありがと、クロエ」

 クロエが提げていた紙袋を受け取り、中を覗く。中には中身がぎっちり詰まってぱんぱんになっている封筒がたくさん入っていた。

「わー、いっぱいあるね。想像以上だわ・・・・・・」
「ええ。一応、紙袋は二重にしてあるけど、重いから気をつけてね」
「うん」

 私は頷いて紙袋をぎゅっと胸に抱えた。

「準備はどう? 順調?」
「順調順調。今は飾りつけとかしてるよ」

 昨日は色々あったけど、準備は順調に進んでいる。シーエンス家の人たちが手伝ってくれているというのも大きいけど、リンス嬢のおかげで重いものの運搬とかすっごい短縮できたから。ほんと、あれ魔法使わないでよくできたなぁ。

「そう。楽しみにしてるわね」
「あ、そうだ。他の皆はどう?」

 それが気になってたんだよね。あのキャットファイトの後、私は途中退場して、その後も忙しかったから今、皆がどうしてるか分からない。

「楽しみにしてると思うわよ。パーティーを嫌いな人間なんていないでしょう」
「でも、あんなことあったし。ね、クロエ。結局皆はあのキャットファイトについてどう思ってると思う?」

 うっかり巻き添え食らった私より、皆と同じ立場だったクロエの方が的確な意見を言ってくれるだろう。

「んー、そうねぇ。皆、普通に驚いていたわよ。なんせ、まさかフレイズ学園の卒業パーティーで女同士の熾烈な喧嘩が始まるとは思ってなかったから。大体の人は面白いもの見たって感じの他人事ね。ただ、あの後話題があの三人についてで持ちきりになったけど」
「そうなんだ」

 あんなことがあれば、そうなるよね。
 その上での今回の仕切り直しパーティー。注目はギーシャたちに向くだろう。謝罪も大事だけど、パーティーを楽しんでもらうのが優先! そして私も楽しむ!
 楽しんで貰うにはやっぱ、流れを掴むのが大事よね。最初に謝罪。その後は一気にパーティームードに持ち込むつもりだけど、何事も段取りが肝心。もう一回スケジュール見直しておこう。

「ただ・・・・・・」
「ただ?」

 クロエが思案顔で俯く。何か心配事があるようだ。

「極少数だけど、平民のリアルビーさんを快く思っていない人たちもいるし、シュナイザー家と対立関係にある家の子息とかもいるから」
「あ~」

 皆で仲良しこよしって年齢でもないもんね。
 貴族の場合、家同士の問題とかもあるし、極一部のプライドの高い貴族は平民を見下してるからなぁ。ここは人それぞれだし、どうしようもない。かと言って、そういう人たちをわざと呼ばないわけにもいかないし。
 仕切り直しのパーティーで更なるトラブルは絶対に避けるべきだし、そこも注意しなきゃ。

「それからね」
「まだあるの?」
「ええ。その、ね・・・・・・」

 クロエは歯切れ悪そうに言い淀んでいたが、私にあることを教えてくれた。何故か目が現実逃避をしているように遠くを見ている。

「これはギーシャ様たちは全く関係ないんだけど、パーティーでもしものことがあったらあれだから言っておくわ。今、別のところで同級生の修羅場が起こっているの」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
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