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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

前提条件

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「そうか。人の夢に口を挟むものではなかったな。すまない」
「別に気にしてないですよ」

 ギーシャは特に詮索することなく、キリくんの言葉を聞き入れた。

「だが、大変だな。武器を持つと武器が絶対にどこかに飛んでいくという体質というのは、騎士になるには克服しないとだろう」
「ですねぇ。兄騎士様にも体術中心に鍛えて貰ってますけど、なかなか筋力つかないし、魔法との相性も良くないので、騎士になる道のりは長いです」
「そういえば、キリくんは魔法得意じゃないんだっけ?」
「全く出来ない訳じゃないですけどね。これも資質の問題ですから」

 キリくんは魔法の適性が低い。恐らくだが、レイセン出身ではないだろうし、そもそも生まれが特殊な影響かもしれないけど。
 魔力が全くないというわけではないから。魔法は使えるけどそれじゃ騎士は厳しい。
 魔法の悪用はご法度だけど、悪用する人はいるし、そういう人と騎士が相対する場面もあるだろう。そうなると、騎士の方も魔法が使えないと不利だ。キリくんの場合は魔法道具を用いた方がいいんだろうけど、体質的に騎士向けの魔法道具が例の如く飛んでいく可能性が高いからね。
 武器を使わないで体術で戦う騎士もいないことはないから全く無理とも言えないけど。

「それに、兄騎士様に騎士と認められて、兄騎士様に剣を戴いたら、その剣を使いたいですから」
「やっぱり。だから何度も武器を手にしてたんだね」

 持てば飛んでいくと分かっていても、キリくんはよく武器を手にしていた。
 それは、いつかギルハード様に認められて、剣を貰った時に、その剣を振るえるように。

「なので、騎士として認めてもらうためにも、武器を持てるようになります!」
「キリくん、ファイト!」
「はい! あ、僕あっち手伝ってきます!」

 そう言い、キリくんはぱたぱたと走り去っていった。

「キリくん、騎士になれるといいね」
「体質を治さない限りは無理だろう。とは言え、前例のない体質だからな」
「んー。確かに体質は厄介だけど、治らなくても体術方面でならいけるんじゃない? キリくんの意に沿わないし、難しいかもだけど」
「いや、それ以前の問題だろう」
「へ?」

 じゃあ、何が問題なんだろう?
 私は目をぱちくりさせ、次のギーシャの言葉に鱗が落ちた。

「そもそも手にした武器が飛んでいくなら、騎士剣の授与の儀式を行えないだろう」
「・・・・・・あ」
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