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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

ギーシャとキリ

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「ふんふふふーん♪」

 鼻歌混じりにノリノリで筆を走らせる。
 書道って好きなんだよねー。前世の影響かな?
 この世界でも書道道具があってよかったー。

「わー、ミリア先輩って字、綺麗なんですねぇ。けど、何だか女の人っぽくないような?」

 ん? 少年のような可愛らしい声に顔を上げると、キリくんが屈んで私の手元をじっと見ていた。

「キリくん! 来てたの?」
「はい。兄騎士様に同伴して来ました~。ちゃあんとお手伝いもしてますよ~」
「そうなんだ。ありがとう」
「いえいえ」
「どうしたんだ?」

 私たちの話し声に誘われたように近くで作業をしていたギーシャが戻ってきた。

「あ、王子様。ミリア先輩の字が綺麗だけど、女の人っぽくないなって話してたんです」
「んん? どういう意味かな?」
「ミリアの書く字は力強く、猛々しいからな」
「いや、普通に男らしいでいいよ」

 じーっと自分の字を見る。我ながら男らしい書体だ。
 とは言え、これはあくまで筆で書いた時。普段使ってるペンとかで書く字はもうちょっとは女らしいよ。

「これって、しょどーってやつですか?」
「そうだよー」
「ミリアは昔から東方の方の文化を好んでいたな」
「うん」

 何せ、前世がそっち出身なので。

「ところで、ギルハード様は? 一緒に来てるのに別行動なの?」

 キリくんの性格からして、ギルハード様と一緒なら何がなんでも離れないと思うんだけど。
 訊ねると、キリくんはぷくーっと頬を膨らませた。なんだか、頬袋がぱんぱんのリスみたい。

「それがですねー、警備用のトラップを仕掛けるから、僕は大広間で手伝って来なさいって」
「あー、キリくんの体質ってトラップ系もダメなんだっけ?」
「トラップ系はものによりますねぇ。どっちかって言うと、殺傷能力の高いものの方が飛びやすいみたいで・・・・・・今回は基本、探知系とか中心で攻撃性のあるものは仕掛けないそうですけど、なにがなんでも吹っ飛ぶがわからないので」
「それは・・・・・・本当にたち悪い体質だね・・・・・・」

 ずーんと落ち込んでしまったキリくんに釣られて、私も落ち込んでしまった。

「体質? ああ、そう言えば、キリは不思議な体質をしていたんだな」
「えー、王子様の耳に入るくらいやらかしてます?」
「いや、ギルハードから訊いた」
「兄騎士様が・・・・・・えへへ~」

 自分の知らないところで、ギルハード様が自分の話をしていたのが嬉しいそうでキリくんはふにゃふにゃと頬を緩ませていた。ほんっと、ギルハード様大好きだなぁ、この子。ギルハード様の弟騎士になった経緯からすれば自然なことだけど。

「あ、そうだ。僕、王子様とお喋りできたら訊きたいことがあったんです!」
「なんだ?」

 キリくんは無邪気に言った。

「王子様って、どんな人なんですか?」
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