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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

謝罪と反省

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「うっわ! 額えげつなっ! 流石、シーエンス。子爵家とはいえ、財力的には貴族トップクラスなだけあるわねぇ」

 天幻鳥が請求書を見て、驚いたように後ろに下がった。
 窓吹き飛ばしたり、庭の地面を焦がしたりしちゃったからね。せめて、もっと蝙蝠の数が少なければ被害も少なくて済んだんだろうけど。

「言っときますけど、こちらに非はありませんからね。あの数を一体一体対処してたら、明け方になっても終わらなかったでしょうし、早めに片をつけないと魔力切れになってましたから」
「分かってるって。現状、闇魔法の魔法生物を簡単に消せるのは、貴女くらいだものね。正しい判断だったと思うわ。そもそも、この件に関しては被害者だし。ただし、卒業パーティーについてはいただけないわ」

 聖女様は蝙蝠でのマリス嬢の対処の正当性を認めつつ、卒業パーティーでの行いを責めた。マリス嬢は真顔で天幻鳥を見つめている。

「貴女の個人的な事情に踏み込む気はさらさらないけど、これでも一応、貴女のフレイズ学園、及び魔法管理局での保護責任者ですから。まぁ、基本部屋から出られない人間がするもんでもないとは思うけどね。これはお説教というより、忠告よ。自分が白の魔力保有者という自覚をしっかりしなさい。貴女の振る舞いは魔法管理局の人間全員が見ているものと思いなさい」
「はい。今回の件は完全に私の暴走でした。反省しています。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 そして、マリス嬢は頭を下げた。

「・・・・・・?」

 俯くマリス嬢の瞳が一瞬、翳ったような気がしたのは気のせいだろうか?

「はい、よろしくない! 私に謝ってもしょうがないでしょ! ちゃあんと仕切り直しのパーティー準備に励んで、迷惑かけちゃった人にも謝るのよ。あと、ミリアちゃんにも!」
「へ? 私?」
「そういえば、謝罪がまだだったわね。流石にやり過ぎだったわ。ごめんなさい」
「いえいえ。私は全然平気ですから!」

 怪我のことに関してはマリス嬢も吹っ飛ばされた側だし、リンス嬢も私目掛けてマリス嬢投げた訳じゃないし。
 うん、単に運がなかっただけ! 好奇心でちょっと前に出てた私もあれだったしね! にしても、改めて考えると、女の子が女の子を吹っ飛ばして、女の子にぶつかるって文にすると意味不明だね。

「とにかく、喧嘩はダメよ。それとミリアちゃん」
「はい?」
「貴女にもお説教しなくちゃいけないわ」
「へ? 私も?」
「そう。一人で闇魔法使いを追いかけるなんて危険な真似しちゃダメじゃない!」
「・・・・・・あ」
「それは私も同意見だわ」

 どうやら、一人でイクスを追いかけてきたことを怒られているようだった。マリス嬢に至っては、じっとしててっていう言いつけを無視されたってことになるから、かなり怒ってるだろう。眉がつり上がってる。

「いくら魔力が強いからって、まだ本格的な訓練も受けてない子が単独で闇魔法相手にするなんて無謀よ!」
「そうよ。あいつがふざけた性格してたから、大事にならずに済んだけど、もしもっと危険な奴だったら、今頃どうなってたと思うの? 魔法管理局の中だからって昨日の今日なのよ? 迂闊だわ」

 ド正論。
 ぐぅの音も出ないので、私は大人しくマリス嬢と聖女様のお説教を聞く。

「あはは。ミッちゃん怒られてるの? 悪いことしちゃダメだよ~」
「貴方が言える台詞じゃないでしょ!」

 他の誰が言っても、イクスがそれゆーな! というか、ほぼほぼ元凶貴方だからね!?

「全く、十分もじっとしてられないなんて、ミカとシュドと同じね」
「シュド? どなたですか?」
「近所の肉屋の柴犬」
「しばいぬ・・・・・・」
「そう。待てが出来ないのよ。ミカとそっくり」

 マリス嬢、それ友達を犬扱いしてません? 確かに、ミカさんって動物に例えるなら犬っぽいですけど。
 ・・・・・・ん? というか、そのシュドちゃんとミカさんそっくりってことは私も・・・・・・?

「とにかく! 危ないことしちゃダメ! ナルク様たちが心配するし、レヴェルが面倒くさいし、何より、ギーシャくんが傷つくわ。せっかく仲直りしたんでしょう?」
「・・・・・・! はい。ごめんなさい」

 聖女様の言うことは間違ってないし、ギーシャの名前を出されては何も言えない。確かに、マリス嬢の言う通り、イクスが陽気な性格をしていたおかげで無傷だけど、下手したら魔力を食べられていた可能性だってある。
 頭より先に体が動いてしまうのは前世からの質だから、直し様もないけど、気をつけなくちゃ。

「うんうん。よろしい。あ、そろそろバラットが到着するわ」

 そう言いながら、天幻鳥がすいーっと扉の方へ飛んでいった。
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