93 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
目的達成
しおりを挟む
「あのー・・・・・・今のって私が訊いちゃってよかったんですか?」
「あ」
おずおずと質問をすると、天幻鳥が不味そうな声を出して一瞬固まった。
「・・・・・・よくない。よくないわね。いや、ミリアちゃんが魔法管理局の内部事情を吹聴するとは思ってないのよ? ただ、貴女にこんな話したってレヴェルが知ったら、私がヤバい。というわけで、私の口からはこれ以上何も言えません! 知りたかったら、ナルク様に訊いて! それなら問題ないから!」
「はぁ」
王様と聖女様のパワーバランスというか、関係性がよく分からん。確か、今の聖女様ってちっちゃい時から聖女候補に決まっていて、王宮への出入りも多かったから、王様とは付き合いが長いって聞いたけど。
「とりあえず、別の使い魔にバラットを呼ばせてるから、貴女たちは別室に移りなさい。そろそろ、ミリアちゃんの魔力が溶け出す頃でしょう? バラットが来るまでは私が見てるから」
「あ、これならなんとか抜け出せそう」
「いや、ダメだよ!」
私が作った氷から魔力がだんだん抜けてきた。魔法はずっと発動させてられない。ずっと発動させていても、自然と魔力が大気に溶けて弱ってしまうから。魔力を流し込み続ければ持続させることも可能だけど、三倍魔力で作った氷の維持は正直無理。
魔力が薄まり、氷の拘束が緩くなってきため、イクスが脱出を試みているが、天幻鳥がイクスの回りを一周した。すると、さっきマリス嬢が作ったものより大きな輪が作られ、イクスの胴を締めた。
「はい。ダメー。貴方はちょーっと厄介だから、逃げられるわけにはいかないの。じっとしててね」
「えー。じっとしてるのって嫌いなんだよねぇ、俺」
聖女様の拘束にも恐れることもなく、むすくれている。メンタルつよー。
「あ、ちょっと待って下さい!」
私はうっかり忘れかけていた目的を思い出し、声を上げた。
「ミリアちゃん?」
「あの、今回の件は貴方が黒幕ってことでいいんですよね?」
私はテロール子爵に問い詰めた。裏にランカータ侯爵とか、聖魔法団とか色々あるみたいだけど、昨日の襲撃を命じたのはテロール子爵の筈だ?
「はい。そうですとも」
「なら──」
私はスカートのポケットに手を突っ込み、三つ折りにした紙を出す。それをテロール子爵の鼻先に突きつけ、ぱらりと開く。
「こちら、先日の一件で壊れたシーエンス家の修繕費の請求書です。お納めください」
そう、請求書。そのためにここに来たんだからね。危うく忘れるところだった。
「当然、払って頂けますよねぇ? 子爵?」
蝙蝠の迎撃でシーエンス家がどうなっているのか知っているマリス嬢も追撃するように言ってくれる。
「請求書・・・・・・ですか・・・・・・」
テロール子爵はまるで夢から現実に戻ったような顔をして、請求書に記載された額を見た。実際、現実的な話なんだけどね。
背後の男性がひっと上擦った声を上げる。うん。私も見た時、目玉を落としそうになったからね。この額の責任をこちらに押しつけられちゃ堪んないって。
室内は一瞬静まり返り、次にはイクスの高笑いが響いた。
「あ」
おずおずと質問をすると、天幻鳥が不味そうな声を出して一瞬固まった。
「・・・・・・よくない。よくないわね。いや、ミリアちゃんが魔法管理局の内部事情を吹聴するとは思ってないのよ? ただ、貴女にこんな話したってレヴェルが知ったら、私がヤバい。というわけで、私の口からはこれ以上何も言えません! 知りたかったら、ナルク様に訊いて! それなら問題ないから!」
「はぁ」
王様と聖女様のパワーバランスというか、関係性がよく分からん。確か、今の聖女様ってちっちゃい時から聖女候補に決まっていて、王宮への出入りも多かったから、王様とは付き合いが長いって聞いたけど。
「とりあえず、別の使い魔にバラットを呼ばせてるから、貴女たちは別室に移りなさい。そろそろ、ミリアちゃんの魔力が溶け出す頃でしょう? バラットが来るまでは私が見てるから」
「あ、これならなんとか抜け出せそう」
「いや、ダメだよ!」
私が作った氷から魔力がだんだん抜けてきた。魔法はずっと発動させてられない。ずっと発動させていても、自然と魔力が大気に溶けて弱ってしまうから。魔力を流し込み続ければ持続させることも可能だけど、三倍魔力で作った氷の維持は正直無理。
魔力が薄まり、氷の拘束が緩くなってきため、イクスが脱出を試みているが、天幻鳥がイクスの回りを一周した。すると、さっきマリス嬢が作ったものより大きな輪が作られ、イクスの胴を締めた。
「はい。ダメー。貴方はちょーっと厄介だから、逃げられるわけにはいかないの。じっとしててね」
「えー。じっとしてるのって嫌いなんだよねぇ、俺」
聖女様の拘束にも恐れることもなく、むすくれている。メンタルつよー。
「あ、ちょっと待って下さい!」
私はうっかり忘れかけていた目的を思い出し、声を上げた。
「ミリアちゃん?」
「あの、今回の件は貴方が黒幕ってことでいいんですよね?」
私はテロール子爵に問い詰めた。裏にランカータ侯爵とか、聖魔法団とか色々あるみたいだけど、昨日の襲撃を命じたのはテロール子爵の筈だ?
「はい。そうですとも」
「なら──」
私はスカートのポケットに手を突っ込み、三つ折りにした紙を出す。それをテロール子爵の鼻先に突きつけ、ぱらりと開く。
「こちら、先日の一件で壊れたシーエンス家の修繕費の請求書です。お納めください」
そう、請求書。そのためにここに来たんだからね。危うく忘れるところだった。
「当然、払って頂けますよねぇ? 子爵?」
蝙蝠の迎撃でシーエンス家がどうなっているのか知っているマリス嬢も追撃するように言ってくれる。
「請求書・・・・・・ですか・・・・・・」
テロール子爵はまるで夢から現実に戻ったような顔をして、請求書に記載された額を見た。実際、現実的な話なんだけどね。
背後の男性がひっと上擦った声を上げる。うん。私も見た時、目玉を落としそうになったからね。この額の責任をこちらに押しつけられちゃ堪んないって。
室内は一瞬静まり返り、次にはイクスの高笑いが響いた。
0
お気に入りに追加
3,268
あなたにおすすめの小説
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
王命を忘れた恋
水夏(すいか)
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる