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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

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「あのー・・・・・・今のって私が訊いちゃってよかったんですか?」
「あ」

 おずおずと質問をすると、天幻鳥が不味そうな声を出して一瞬固まった。

「・・・・・・よくない。よくないわね。いや、ミリアちゃんが魔法管理局の内部事情を吹聴するとは思ってないのよ? ただ、貴女にこんな話したってレヴェルが知ったら、私がヤバい。というわけで、私の口からはこれ以上何も言えません! 知りたかったら、ナルク様に訊いて! それなら問題ないから!」
「はぁ」

 王様と聖女様のパワーバランスというか、関係性がよく分からん。確か、今の聖女様ってちっちゃい時から聖女候補に決まっていて、王宮への出入りも多かったから、王様とは付き合いが長いって聞いたけど。

「とりあえず、別の使い魔にバラットを呼ばせてるから、貴女たちは別室に移りなさい。そろそろ、ミリアちゃんの魔力が溶け出す頃でしょう? バラットが来るまでは私が見てるから」
「あ、これならなんとか抜け出せそう」
「いや、ダメだよ!」

 私が作った氷から魔力がだんだん抜けてきた。魔法はずっと発動させてられない。ずっと発動させていても、自然と魔力が大気に溶けて弱ってしまうから。魔力を流し込み続ければ持続させることも可能だけど、三倍魔力で作った氷の維持は正直無理。
 魔力が薄まり、氷の拘束が緩くなってきため、イクスが脱出を試みているが、天幻鳥がイクスの回りを一周した。すると、さっきマリス嬢が作ったものより大きな輪が作られ、イクスの胴を締めた。

「はい。ダメー。貴方はちょーっと厄介だから、逃げられるわけにはいかないの。じっとしててね」
「えー。じっとしてるのって嫌いなんだよねぇ、俺」

 聖女様の拘束にも恐れることもなく、むすくれている。メンタルつよー。

「あ、ちょっと待って下さい!」

 私はうっかり忘れかけていた目的を思い出し、声を上げた。

「ミリアちゃん?」
「あの、今回の件は貴方が黒幕ってことでいいんですよね?」

 私はテロール子爵に問い詰めた。裏にランカータ侯爵とか、聖魔法団とか色々あるみたいだけど、昨日の襲撃を命じたのはテロール子爵の筈だ?

「はい。そうですとも」
「なら──」

 私はスカートのポケットに手を突っ込み、三つ折りにした紙を出す。それをテロール子爵の鼻先に突きつけ、ぱらりと開く。

「こちら、先日の一件で壊れたシーエンス家の修繕費の請求書です。お納めください」

 そう、請求書。そのためにここに来たんだからね。危うく忘れるところだった。

「当然、払って頂けますよねぇ? 子爵?」

 蝙蝠の迎撃でシーエンス家がどうなっているのか知っているマリス嬢も追撃するように言ってくれる。

「請求書・・・・・・ですか・・・・・・」

 テロール子爵はまるで夢から現実に戻ったような顔をして、請求書に記載された額を見た。実際、現実的な話なんだけどね。
 背後の男性がひっと上擦った声を上げる。うん。私も見た時、目玉を落としそうになったからね。この額の責任をこちらに押しつけられちゃ堪んないって。
 室内は一瞬静まり返り、次にはイクスの高笑いが響いた。
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