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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
テロール子爵、ぶっちん
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「さっき、管理室を見てきたました。以前、フロン公国で魔法犯罪組織から押収したという闇属性の魔法生物製造機の生成石が抜き取られていました。ご存知ですよね?」
えっと、生成石って人工の魔法生物を生み出すために必要な魔法石の一種だよね? 他にも、魔法道具の製造とかでも重宝されている。魔法石にも属性があって、属性と同じ色をした見た目は水晶のような石だ。
「ああ。蝙蝠を用意するために拝借した」
テロール子爵は本当に観念しているらしく、あっさりと認めた。
「やはり、そうでしたか。で、それは貴方が持ってるのよね?」
「ん? ああ、なんか渡されたこの黒い石ころのこと?」
マリス嬢に訊かれたイクスは、拘束された手を首に回すとつけていたチェーンを引っ張り、服の下に忍ばせていたトップを出す。微かなチェーンの擦れる金属音がして、ブラックホールみたいに黒い小さな丸い石がイクスの胸の前で揺れる。
「やっぱり。まだ持ってたのね」
「ひょっとして、昨日の蝙蝠って全部イクスがその場で造ってたの!?」
「そうだけど?」
闇魔法だったから、イクスが操ってるのは確定だろうと思ってたけど、あの場で造ってたのは予想外だった。
「えー・・・・・・製造機もなしで? 生成石と自前の魔力オンリーで?」
「うん」
「予め、造っといて召喚魔法で仕舞ったりじゃなくて?」
「あ、その手があったか!」
ぽんっと手を打つイクス。まじか。
この人も大概、デタラメだな。魔力ならテルファ様やお兄様たちに匹敵するかも。
もし、アルクお兄様とエンカウントしたら──あ、止めよう。想像したら胃が痛くなってきた。
兄の楽しそうな顔を思い浮かべ、私はぶんぶん頭を振った。
「にしても、ミッちゃん意外と強かったんだね。正直、そっちの白の魔力の使い手さんしか警戒してなかったからびっくりした」
「道具ありきだけどね」
「それでも魔力は強いでしょ? あー、こんな強いなら魔力食べてみたかったかも? てゆーか、魔力って美味しいの?」
「怖いこと言わないでよ。こっちは危うく命の危機だったんだからね」
うん。魔力食べられそうになるとか、普通に危なかったなぁ。冷静に頭が回るようになって、今更だけど、かなりピンチだったと気づく。
逆に、イクスは何か疑問を見つけたように「ん?」と呟いた。
「えー? 別に俺、ミッちゃんの魔力食べようとしただけで殺そうとはしてないよ?」
「は? いやいや、魔力食べようとしたじゃない」
「え?」
「ん?」
明らかに会話に齟齬がある。
私はこの齟齬の原因は何かと考え、一つだけ思い当たったから、それをイクスに問い掛けた。
「えーっと、イクスって魔力が何か知らない?」
「知ってるよ。魔法を使うために必要な不思議パワーだろ?」
「不思議パワー言っちゃってる時点で知ってるって言い難いよ!」
イクス、あんなに強いのに魔力について知らないのか。いや、まぁ魔力がどういうものか知らなくても感覚さえ掴めば魔法は使えるからなぁ。でも、レイセンの子なら誰でも知ってる──いや、イクスってレイセン出身? 魔力の高さからその可能性が高いけど、絶対レイセンってわけではないだろうし。
色々思案していると、何やら、かちかちという音が聞こえた。
「な・・・・・・な・・・・・・な・・・・・・」
それはわななくテロール子爵の口内で歯がぶつかる音の様だった。
「え? テロール子爵?」
「なんだとぉおおおおおおっ!!!?」
ブッチィィィイイイイ──!!!?
「ぎゃああああ!? テロール子爵が右縦ロールを引き抜いた────!?!? なんで!? すっごい音した! 痛い痛い!」
いや、実際痛いのはテロール子爵だろうけど、視覚的に痛い────!!!
えっと、生成石って人工の魔法生物を生み出すために必要な魔法石の一種だよね? 他にも、魔法道具の製造とかでも重宝されている。魔法石にも属性があって、属性と同じ色をした見た目は水晶のような石だ。
「ああ。蝙蝠を用意するために拝借した」
テロール子爵は本当に観念しているらしく、あっさりと認めた。
「やはり、そうでしたか。で、それは貴方が持ってるのよね?」
「ん? ああ、なんか渡されたこの黒い石ころのこと?」
マリス嬢に訊かれたイクスは、拘束された手を首に回すとつけていたチェーンを引っ張り、服の下に忍ばせていたトップを出す。微かなチェーンの擦れる金属音がして、ブラックホールみたいに黒い小さな丸い石がイクスの胸の前で揺れる。
「やっぱり。まだ持ってたのね」
「ひょっとして、昨日の蝙蝠って全部イクスがその場で造ってたの!?」
「そうだけど?」
闇魔法だったから、イクスが操ってるのは確定だろうと思ってたけど、あの場で造ってたのは予想外だった。
「えー・・・・・・製造機もなしで? 生成石と自前の魔力オンリーで?」
「うん」
「予め、造っといて召喚魔法で仕舞ったりじゃなくて?」
「あ、その手があったか!」
ぽんっと手を打つイクス。まじか。
この人も大概、デタラメだな。魔力ならテルファ様やお兄様たちに匹敵するかも。
もし、アルクお兄様とエンカウントしたら──あ、止めよう。想像したら胃が痛くなってきた。
兄の楽しそうな顔を思い浮かべ、私はぶんぶん頭を振った。
「にしても、ミッちゃん意外と強かったんだね。正直、そっちの白の魔力の使い手さんしか警戒してなかったからびっくりした」
「道具ありきだけどね」
「それでも魔力は強いでしょ? あー、こんな強いなら魔力食べてみたかったかも? てゆーか、魔力って美味しいの?」
「怖いこと言わないでよ。こっちは危うく命の危機だったんだからね」
うん。魔力食べられそうになるとか、普通に危なかったなぁ。冷静に頭が回るようになって、今更だけど、かなりピンチだったと気づく。
逆に、イクスは何か疑問を見つけたように「ん?」と呟いた。
「えー? 別に俺、ミッちゃんの魔力食べようとしただけで殺そうとはしてないよ?」
「は? いやいや、魔力食べようとしたじゃない」
「え?」
「ん?」
明らかに会話に齟齬がある。
私はこの齟齬の原因は何かと考え、一つだけ思い当たったから、それをイクスに問い掛けた。
「えーっと、イクスって魔力が何か知らない?」
「知ってるよ。魔法を使うために必要な不思議パワーだろ?」
「不思議パワー言っちゃってる時点で知ってるって言い難いよ!」
イクス、あんなに強いのに魔力について知らないのか。いや、まぁ魔力がどういうものか知らなくても感覚さえ掴めば魔法は使えるからなぁ。でも、レイセンの子なら誰でも知ってる──いや、イクスってレイセン出身? 魔力の高さからその可能性が高いけど、絶対レイセンってわけではないだろうし。
色々思案していると、何やら、かちかちという音が聞こえた。
「な・・・・・・な・・・・・・な・・・・・・」
それはわななくテロール子爵の口内で歯がぶつかる音の様だった。
「え? テロール子爵?」
「なんだとぉおおおおおおっ!!!?」
ブッチィィィイイイイ──!!!?
「ぎゃああああ!? テロール子爵が右縦ロールを引き抜いた────!?!? なんで!? すっごい音した! 痛い痛い!」
いや、実際痛いのはテロール子爵だろうけど、視覚的に痛い────!!!
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