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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
ミリアの魔力
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「魔力三倍?」
「ちょっ、これ囚人みたいでヤなんだけどー」
マリス嬢が光る輪を作り、手錠のようにイクスの手首にかけながら訊いてくる。
「はい。科学は苦手なんで、よくわかりませんが、この魔法道具に魔力を注ぐと、中で高速回転して、その時に発生したエネルギーをどうたらこうたらして三倍になるみたいです」
「うん、アバウト過ぎるけど、なんとなくは分かったわ」
「あはは。まぁ、見ての通り、魔法を発動した時のMAXで解放した魔力に耐えられなくて、私の場合は一回使用したら壊れちゃうんですけどね」
私が魔法道具を胸くらいに掲げると、またぱらぱらと音を立てて、破片が凍った床に落ちた。
「魔力炎上の時もそうだけど、やっぱ魔力高いわね」
「ギーシャやお兄様たちほどじゃないですけどね」
魔力は高いけど、それでもお兄様たちやギーシャには及ばない。別に特別鍛えてるってわけでもないしね。魔力そのものは高いけど、扱い方は上手いとは言い難いから、お兄様に渡された魔法道具がなかったら本当に危なかっただろう。高等部に上がったら、本格的な魔法の授業もあるし、もう少し個人的に練習した方がいいかな?
「でも、氷って意外ね。メイアーツって炎魔法の大家じゃなかったっけ?」
「家系的にはそうなんですけど、私個人は氷属性も強いっぽいんですよね」
遺伝的に炎魔法は出来るけど、持って生まれた個人的に良い相性は氷。メイアーツの娘だからか、氷属性の魔法がそれなりに得意って言うとすっごい驚かれるんだよねぇ。後、なんか似合わないって言われる。
一応、第一属性なんだけどなぁ。
第一属性とは一番相性の良い魔法だ。私の場合、氷が第一、炎が第二属性ってこと。
そういえば、偶然だけど第一属性ギーシャと同じなんだよね。だから、昔ちょっとだけギーシャの訓練に混ぜてもらって、氷魔法の使い方習ったなぁ。先生、苦笑いしてたけど。あの時の教えのおかげで魔法道具ありとは言え、上手くいったとも言えるかな? ありがとう、先生! ちっちゃい時過ぎて、お名前忘れちゃったけど!
「ふぅん。似合わないわね」
「なんで、皆それ言うんですか」
「ま、いいわ。さ、て、と」
マリス嬢が踵を返し、凍りついて滑りやすくなっているのに危なげなくテロール子爵に歩み寄った。そして──
「んん!?」
「詳しい話を訊きましょうか? 子爵」
「マ、マリス嬢!?」
マリス嬢がいきなり、子爵のあの縦ロールをがしっと掴み、カールを伸ばすように引っ張る。なんか、今にも引っこ抜きそうな雰囲気なんですけど!
「貴方が黒幕とはねぇ? どうしようかしら? 引っこ抜こうかしら?」
何を──なんて、訊かなくても分かる。
「マリス嬢、流石にその量を一気に抜いたらヤバいですよ! 死にますよ!」
「死にはしないでしょ。死ぬほど痛いだろうけど。それに──」
「それに?」
「私、縦ロール大っっっ嫌いなの」
「え」
「見てるだけでムカムカするわ。この世の縦ロールを全部ちょん切りたい」
「でも、レイセンはテロール子爵のおかげで縦ロールの方が少ないですよ?」
「・・・・・・そうね。そのことには感謝してるような? ──いや何の話よ、これ。とにかく、昨日のことよ。大体予想つくけど、連行する前に少しお話しましょうか」
そう言ったマリス嬢が縦ロールを掴む手に力を込め、黒い笑みを浮かべた。
「ちょっ、これ囚人みたいでヤなんだけどー」
マリス嬢が光る輪を作り、手錠のようにイクスの手首にかけながら訊いてくる。
「はい。科学は苦手なんで、よくわかりませんが、この魔法道具に魔力を注ぐと、中で高速回転して、その時に発生したエネルギーをどうたらこうたらして三倍になるみたいです」
「うん、アバウト過ぎるけど、なんとなくは分かったわ」
「あはは。まぁ、見ての通り、魔法を発動した時のMAXで解放した魔力に耐えられなくて、私の場合は一回使用したら壊れちゃうんですけどね」
私が魔法道具を胸くらいに掲げると、またぱらぱらと音を立てて、破片が凍った床に落ちた。
「魔力炎上の時もそうだけど、やっぱ魔力高いわね」
「ギーシャやお兄様たちほどじゃないですけどね」
魔力は高いけど、それでもお兄様たちやギーシャには及ばない。別に特別鍛えてるってわけでもないしね。魔力そのものは高いけど、扱い方は上手いとは言い難いから、お兄様に渡された魔法道具がなかったら本当に危なかっただろう。高等部に上がったら、本格的な魔法の授業もあるし、もう少し個人的に練習した方がいいかな?
「でも、氷って意外ね。メイアーツって炎魔法の大家じゃなかったっけ?」
「家系的にはそうなんですけど、私個人は氷属性も強いっぽいんですよね」
遺伝的に炎魔法は出来るけど、持って生まれた個人的に良い相性は氷。メイアーツの娘だからか、氷属性の魔法がそれなりに得意って言うとすっごい驚かれるんだよねぇ。後、なんか似合わないって言われる。
一応、第一属性なんだけどなぁ。
第一属性とは一番相性の良い魔法だ。私の場合、氷が第一、炎が第二属性ってこと。
そういえば、偶然だけど第一属性ギーシャと同じなんだよね。だから、昔ちょっとだけギーシャの訓練に混ぜてもらって、氷魔法の使い方習ったなぁ。先生、苦笑いしてたけど。あの時の教えのおかげで魔法道具ありとは言え、上手くいったとも言えるかな? ありがとう、先生! ちっちゃい時過ぎて、お名前忘れちゃったけど!
「ふぅん。似合わないわね」
「なんで、皆それ言うんですか」
「ま、いいわ。さ、て、と」
マリス嬢が踵を返し、凍りついて滑りやすくなっているのに危なげなくテロール子爵に歩み寄った。そして──
「んん!?」
「詳しい話を訊きましょうか? 子爵」
「マ、マリス嬢!?」
マリス嬢がいきなり、子爵のあの縦ロールをがしっと掴み、カールを伸ばすように引っ張る。なんか、今にも引っこ抜きそうな雰囲気なんですけど!
「貴方が黒幕とはねぇ? どうしようかしら? 引っこ抜こうかしら?」
何を──なんて、訊かなくても分かる。
「マリス嬢、流石にその量を一気に抜いたらヤバいですよ! 死にますよ!」
「死にはしないでしょ。死ぬほど痛いだろうけど。それに──」
「それに?」
「私、縦ロール大っっっ嫌いなの」
「え」
「見てるだけでムカムカするわ。この世の縦ロールを全部ちょん切りたい」
「でも、レイセンはテロール子爵のおかげで縦ロールの方が少ないですよ?」
「・・・・・・そうね。そのことには感謝してるような? ──いや何の話よ、これ。とにかく、昨日のことよ。大体予想つくけど、連行する前に少しお話しましょうか」
そう言ったマリス嬢が縦ロールを掴む手に力を込め、黒い笑みを浮かべた。
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