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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

落下人物

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 ぱっと光が消え、辺りは静かになる。
 蝙蝠が全滅したことを確認し、私はほっと息を吐いた。
 それと同時に、脱力感が訪れ、ぐらりとしてその場にしゃがみこんだ。

「は~ぁ。疲れた・・・・・・」

 魔力を大量に使うと、疲労感に見舞われる。私は訓練は受けてるけど、そもそも膨大な魔力を使う機会なんて日常でそうそう起こる筈もない。
 安心感よりも疲労感が濃いが、ここで蹲ってる場合でもないと顔を上げた。
 ギーシャもマリス嬢も涼しい顔をしている。流石だなぁ。ギーシャは王子として戦闘訓練も受けてるし、マリス嬢も魔法管理局で白の魔力を扱うための指導を受けてるから、私よりこういう事態に対処出切るというのは納得だ。
 私は魔力は強いけど、王様からしても、両親からしても、お兄様たちからしても庇護対象として見られているからまず、戦うということを考えてなかった。でも、もうちょっと訓練した方がいいかなぁ。今度、お兄様に相談してみよう。
 密かに決意を固めてる間、ギーシャは屋上を見つめていた。

 屋上ではまだ戦闘が行われているようだ。術師はかなり身軽なようで、身に纏っているローブを翻しながらふわふわと三人の攻撃をかわしている。

「今から屋上に向かいますか?」
「いや、ここから攻撃してみる。不意を突けるかもしれない」

 ギーシャが人差し指を術者に向けるが、指先が揺れている。ターゲットを捕捉出来ないのだ。

「ギルハード様たちと連携が取れれば──でも、呼んだら気づかれちゃうし」
「いや、大丈夫だ。ギルハード」

 ギーシャがギルハード様を呼んだ。今の声では屋上にいるギルハード様に届かない──そう思ったが、ギルハード様は呼ばれたのと同時にぱっとこちらに視線を向けた。何で気づいたんだろう?
 術者を狙っているギーシャの思惑を察したのだろう。キリくんとリンス嬢に向かって何か言っている。
 ギルハード様たちは術者から後退り、それを不思議に思ったのか、術者の動きが一瞬鈍った。
 それを見逃すことなく、ギーシャは魔法を放つ。直撃は避けたようだが、バランスを崩す術者。そこへすかさずギルハード様が畳み掛ける。

「ギルハード、そのまま捕縛しろ」
「はっ!」

 ギルハード様が頷き、術者に狙いを定める。分が悪いと判断したのか、術者は逃げようと屋上の転落防止ようの柵に足をかけたようだ。

「させるか! 敵には問答無用ぅうう────!!」

 リンス嬢が槍を思い切り叩きつけ、術者は落下。

 ひゅるるる。べしゃんっ!

 うっわ! 落ちてきた! 魔法光が見えたから、防御はしたんだろうけど、音的に絶対痛そう・・・・・・。

「いってぇ・・・・・・何、あの槍お嬢。訳分かんない」

 うん。私もリンス嬢はよく分からない。
 は! 思わず同意しちゃった!

 私は術者に駆け寄り、その姿を確認した。

「──え!?」

 その姿に私は少し驚いた。

「げぇ、これちょっと不味い状況?」

 そう言い、半眼で眉間に皺を寄せてるのは、私たちとそう変わらない年頃の男の子に見えた。

 夜空に溶け込みそうな群青の髪と暗い赤い瞳の青年。
 この青年は一体、何のために私たちにこんなことをしたのだろうか?
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