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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

更なる訪問者

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「──という訳です」
「うん。まず、最初に言っておくと、反帝国主義者の可能性は極めて低いね」

 シーエンス家での一部始終を説明し終えると、お父様はさっくりと答えた。

「レヴェルが王位に就く前に穏便に粛清したからね。現状、そんな真似を出来る反帝国主義者は国内にはいないよ。それも、闇魔法を使う者はね」
「はい。それで、闇魔法のことでも気になることがあって」
「白の魔力かな?」

 私は頷いた。

「今日、シーエンス家に行くのは事前に予定していた訳ではないですし、あの場には闇魔法に対抗出来るマリス嬢もいました。なのに、何故あのタイミングで仕掛けて来たのかが気になって」

 予め仕込まれていた可能性は低いし、あの場である必要はない。マリス嬢が白の魔力の持ち主だと知らなかった? 確かに大々的に公表はされてないけど、隠されてもいない。ギーシャを狙うなら少しは調査しているはず。闇魔法を使用するのにずっと側にいたマリス嬢のことを警戒しないのは不自然だ。

「それに、あの蝙蝠。闇魔法とはいえ、弱かったです。ギルハード様とリンス嬢が止めなくてもギーシャが魔法壁を発動すれば簡単に防げたはずです」

 これも気になる。王家の人間の魔力は強い。そんなことは誰でも知っていることだ。なのに、あの程度というのはどういうことだろう?
 本気でギーシャを害する気はなかった。でも、悪ふざけで王子に危害を加えるような真似をするとは思えない。
 うーん。
 こめかみを押さえて考えていると、扉がノックされた。防音魔法をかけてるけど、外からの音は拾うことが出来る。

「おや、やっぱりあの子も来たか」

 お父様はその訪問者を予想していたらしく、私に目で扉を開けるよう促した。一旦防音魔法を解いて入室を促すのも面倒だしね。
 私が扉を開けると、そこには。

「ミリアもやっぱりここだったか」
「兄騎士様~、稽古~!」
「わかったから、もう少し待て」

 部屋の前に立っていたギーシャとキリくんに腰に引っ付かれそうになり、それを必死に避けているギルハード様の三人がいた。

「ギーシャ、蕾宮に行かなかったの?」
「ああ。叔父上に話があって」
「いらっしゃい、ギーシャ。騎士さんと小さな見習いさんも。どうぞ、入って」

 ベッドの上でお父様は穏やかに微笑み、三人を歓迎した。

「いえ。私は王子の護衛ですので、部屋の外で待っています。今日はキリもいますし」
「そう?」
「はい。お話が済んだらお呼びください」
「わかった」
「兄騎士様ー!」

 キリくんをかわしながらお辞儀をしたギルハード様はそのまま扉を閉めた。

「あはは・・・・・・」

 恐らく、私たちの話が終わるまで続けられるであろうギルハード様とキリくんの攻防を想像し、私は苦笑いを溢した。
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