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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
ギーシャの恐怖
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あの後、その場にいた人たちに箝口令を敷き、私たちは別室に移動した。
円卓には奥のギーシャから時計回りで私、リンス嬢、マリス嬢、ギルハード様という順で座っている。
マリス嬢が何かを挟むように手を胸元に掲げると、手の間に淡い白い光が現れ、その中にまるでウイルスのような黒い点々が揺蕩っている。
「マリス、それが?」
「はい。さっきの闇魔法の断片です」
「動物を象った魔力・・・・・・偵察とかで使われると訊くけど、どうしてここに・・・・・・」
あの蝙蝠はギーシャの背後にいた。ギーシャを狙って・・・・・・? 可能性があるとしたら──。
「反帝国主義者」
ギーシャがそう呟いた。私たちも顔を上げる。
「俺を狙ったのなら、その可能性が高い」
「ギーシャ、でもそれは」
「ああ、ここ数十年は何の動きもなかった」
反帝国主義者とは、帝国との関係に不満を持っている者のことだ。侵略国家、エーデルグラン帝国との現状を快く思っていない者たちは、帝国王女をレイセン王国の正妃にするという制度に不満を抱いている。両国の血を引くギーシャも不満の対象だろう。とはいえ、今の国王──王様のお母様だって正妃、つまりは帝国王女だった方だ。かなり前に病で亡くなられたそうだけど。
だから、私たちが生まれた頃には反帝国主義者は鳴りを潜めていた──というか、王様が王位に就く際に王様とお父様が色々やったらしい──そうだ。
まぁ、ギーシャが帝国の方の色を引き継いじゃったからちょっと話題になったっぽいけど。
今更、このタイミングで?
「う~ん、このタイミングで反帝国主義者が動く理由がわかんない。継承権については問題ないし、帝国との関係も変化なし」
「反帝国主義者を装った別の勢力ということも考えられるのでは?」
「ですが、ギーシャ王子が誰かに恨まれるということは──」
リンス嬢の発言に私は反射的に叫んだ。
「あ──────!!!」
「「「!?」」」
ギルハード様、マリス嬢、リンス嬢の三人が私の大声に驚いて肩を跳ね上げる。私はというと、
「ミリア? 急に何だ?」
ギーシャの戸惑う声がすぐ近くでする。私はギーシャに抱きついていた。首に手を回し、ぎゅーっとした。
ギーシャの肩越しに逆隣に座っているギルハード様と目が合う。
「ミリア嬢、我々は少し席を外します。もう少し調べたいので、マリス嬢、リンス嬢、一緒に来て頂けますか?」
どうやら、察したギルハード様がマリス嬢とリンス嬢を連れて退室した。
ぱたんとドアの閉まる音がし、私はそっとギーシャから離れた。
「ミリア?」
不思議そうに私を見るギーシャの手を取り、握られた拳をそっと開かせた。
「あ」
その時、ギーシャは初めてそのことに気がついたように小さな声を上げた。
微かに震えていたギーシャの掌には、爪が食い込み、血が滲んでいた──。
円卓には奥のギーシャから時計回りで私、リンス嬢、マリス嬢、ギルハード様という順で座っている。
マリス嬢が何かを挟むように手を胸元に掲げると、手の間に淡い白い光が現れ、その中にまるでウイルスのような黒い点々が揺蕩っている。
「マリス、それが?」
「はい。さっきの闇魔法の断片です」
「動物を象った魔力・・・・・・偵察とかで使われると訊くけど、どうしてここに・・・・・・」
あの蝙蝠はギーシャの背後にいた。ギーシャを狙って・・・・・・? 可能性があるとしたら──。
「反帝国主義者」
ギーシャがそう呟いた。私たちも顔を上げる。
「俺を狙ったのなら、その可能性が高い」
「ギーシャ、でもそれは」
「ああ、ここ数十年は何の動きもなかった」
反帝国主義者とは、帝国との関係に不満を持っている者のことだ。侵略国家、エーデルグラン帝国との現状を快く思っていない者たちは、帝国王女をレイセン王国の正妃にするという制度に不満を抱いている。両国の血を引くギーシャも不満の対象だろう。とはいえ、今の国王──王様のお母様だって正妃、つまりは帝国王女だった方だ。かなり前に病で亡くなられたそうだけど。
だから、私たちが生まれた頃には反帝国主義者は鳴りを潜めていた──というか、王様が王位に就く際に王様とお父様が色々やったらしい──そうだ。
まぁ、ギーシャが帝国の方の色を引き継いじゃったからちょっと話題になったっぽいけど。
今更、このタイミングで?
「う~ん、このタイミングで反帝国主義者が動く理由がわかんない。継承権については問題ないし、帝国との関係も変化なし」
「反帝国主義者を装った別の勢力ということも考えられるのでは?」
「ですが、ギーシャ王子が誰かに恨まれるということは──」
リンス嬢の発言に私は反射的に叫んだ。
「あ──────!!!」
「「「!?」」」
ギルハード様、マリス嬢、リンス嬢の三人が私の大声に驚いて肩を跳ね上げる。私はというと、
「ミリア? 急に何だ?」
ギーシャの戸惑う声がすぐ近くでする。私はギーシャに抱きついていた。首に手を回し、ぎゅーっとした。
ギーシャの肩越しに逆隣に座っているギルハード様と目が合う。
「ミリア嬢、我々は少し席を外します。もう少し調べたいので、マリス嬢、リンス嬢、一緒に来て頂けますか?」
どうやら、察したギルハード様がマリス嬢とリンス嬢を連れて退室した。
ぱたんとドアの閉まる音がし、私はそっとギーシャから離れた。
「ミリア?」
不思議そうに私を見るギーシャの手を取り、握られた拳をそっと開かせた。
「あ」
その時、ギーシャは初めてそのことに気がついたように小さな声を上げた。
微かに震えていたギーシャの掌には、爪が食い込み、血が滲んでいた──。
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