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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

怪力令嬢

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「り、リンス嬢、それ魔法使ってませんよね?」
「ええ。それが何か?」

 いや、いやいやいや! 何でそんな平然としてるの!?
 私は三つものテーブルを抱えているリンス嬢の腕を凝視した。
 魔法を使ってないってことは自前の腕力だけで持ってるってことだよね? あの細腕のどこにこんな力があるんだろう?
 まじまじと観察している脇で、ギーシャたちもそれぞれマリス嬢に声をかける。

「リンスは力持ちだったんだな。知らなかった」
「身のこなしから鍛練をしているのではと思ってましたが、見事な筋力です」
「なんていうか、あんたあの時一応手加減してたのね・・・・・・」

 あー、そっか。考えればマリス嬢、このリンス嬢とキャットファイトしたのかぁ。もし、平手打ちじゃなくてグーパンだったら今頃大惨事になってそう。私は自分のことでもないのに、ぶるっと身震いしてしまった。
 対してリンス嬢は、しばらく固まり次の瞬間──

 ガッタン! ドダドダッ!

「うわっ!? あぶなっ!」

 何故か持ってたテーブルが床にごろごろ転がった。危うく、一番近くにいた私の足に落ちるところを間一髪で避ける。

「ミリア、平気か? 怪我は?」
「大丈夫」
「ちょっと、何やってるのよ」
「破損などはないようですが、やはり重かったのでしょうか?」

 心配してくれるギーシャと呆れてるマリス嬢、テーブルの破損を確認しているギルハード様の前でテーブルを落とした張本人であるリンス嬢は青い顔をしてふらふらと壁に歩いて行き、壁に手をついて長い溜め息を溢した。

「はぁ~~~~~~っ」

 なんか、どんより暗いオーラが漂ってるんだけど・・・・・・。

「リンス嬢~?」
「ああ、ごめんなさいね。ちょっと取り乱したわ」
「それは構いませんが、一体何に取り乱したんですか?」

 今までの会話に取り乱す要素なんてあったかな?
 リンス嬢は酷く落ち込んだ声で答えてくれた。

「・・・・・・バレた」
「え?」
「ギーシャ王子に怪力がバレた・・・・・・」
「はぁ・・・・・・まぁ、魔法使ってませんでしたからね」
「ああ~!」

 ずるずるとマリス嬢が壁を撫でながらしゃがみこむ。額を壁につけ、丸まってしまった。
 ギーシャに力持ちなのがバレたのがそんなに嫌なのかな? 確かにいくら成長して力がついたとはいえ、今のギーシャだってあの数のテーブルを持つことは出来ないだろう。好きな人より力持ちというのは女の子としては知られたくないのかもしれない。私はあんまし素の筋力がないからよくわかんないけど。

「でもリンス嬢すっごい力持ちですねぇ。ひょっとして魔法とは違った転生特典とか?」

 前世で読んだ異世界転生ものにはチートみたいな能力を与えられるとかいうのもたくさんあった。ひょっとしたら、リンス嬢はそれに該当するのかもしれないと思い、訊ねるがリンス嬢は若干涙目で言った。

「転生特典? 何それ?」
「ありゃ。リンス嬢は異世界転生ものとかはあまり見なかったんですね。転生したときにチート能力とか与えられる前世の世界の漫画や小説あるあるですよ~」
「よく分かんないけど、私の怪力はつい前世の癖で体を鍛えた結果よ」
「マジで努力の結果の自前なんですね」
「貴族令嬢らしく、女性らしい体型を維持したままムキムキにならないのをキープするために色々トレーニングを改良はしたわ!」

 わー、すっごい良いドヤ顔だ~。
 でも、そもそも貴族令嬢がムキムキになるまで鍛える必要はないのでは・・・・・・。
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