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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

花屋にいたのは?

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「こんにちはー!」
「はい、いらっしゃい」

 店に入ると、なんだか優しくて頼りになりそうな雰囲気のおばさんがにこやかに歓迎してくれた。
 店内は真っ白な壁や床を埋め尽くすように色鮮やかな花々がそこかしこに刺されている。
 軒先には人目を引く大きくて目立つ花や大きな植木鉢に入った花。中には小さな植木鉢や花の香りの香水、ポプリ、花の種、花の本、花をモチーフにした雑貨など、花以外のものも広く扱っているようだった。

「奥のサクラを見てもいいですか?」
「どうぞどうぞ。これは今朝入ってきたばかりでね。東の王都を出て東にあるレイバー伯爵家の領地はもう咲いてたみたいで行者が貰ってきたんだよ」
「へー、東はもう咲いてるんですね。だったら、今年は王都もいつもより早く咲くかな?」
「どうだろうな。王宮にあるサクラはまだ蕾が固かったが」
「レイセンの人間は花見が好きですからね。花見行事の日程に変更がでるかもしれません」

 綺麗で可愛い薄紅の花を三人で眺め、談笑する。
 ついついサクラに目が行っちゃうけど、その隣にあるモモも見事だ。
 サクラもモモもすぐに散らないように魔法がかかっているのだろう。お店の棚には花が散るのを送らせる魔法薬の入った霧吹きも売ってたし。
 ちなみに、この世界のサクラは前世の桜そっくりというか、多分同じ桜だろう。品種はソメイヨシノかな? ゲームには前世の世界に存在する植物や動物、食べ物も出てきたが、オリジナルと思われるものも多く登場した。それに、ファンタジー世界っぽさを出すためか、桜などの花の名前はカタカナ表記になっていた。

「あっちのモモもいいなぁ。サクラは入学式ってイメージだけど、モモは卒業式頃に咲くんだよね。枝振りもいいし。飾りに良さそう。うぅ、ラスイチっぽいし、買っちゃおうかな」

 拳をぎゅっと握り締め、モモの花を買う決心をする。お祝いシーズンだからか、春っぽい花は売れてしまってあまり残ってないようだった。

「ああ、悪いねぇ。その花はもう買い手がいるんだ」
「そうなんですか・・・・・・」

 どうやらモモは取り置きされてるものらしく、私はがっくりと肩を落とした。まぁ、これだけ立派なモモなら売れ残ってる方がおかしいか。でも、取り置きって、誰が買ったんだろ?

「マダムー。花の種と香水のストックとラッピング用のリボンとか持って来たわよー・・・・・・って、え?」
「あ」

 店の裏から出てきた人物を見て、最初に反応したのはギーシャ。続いて、私とギルハード様も彼女を見た。
 はて? なんで彼女はエプロン姿で花屋にいるのだろうか?

「ぎぎ、ギーシャ王子!?」
「マリス」

 そう、私たちの前に現れたのは、雑貨の詰まった小箱を抱えた少女は王宮で食事のメニューを考えてるか、或いは町で飾りの調達にでているはずのマリス嬢であった。
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