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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

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「んー」
「ミリア?」
「なんかお腹空いちゃった」

 猫の爪を出てすぐに馬車に魔法道具を積み込むと、ふと空腹を感じた。

「そういえば、もう昼時だな。このあと、シーエンス家に行く予定だが、昼食はどこで済ます?」
「せっかく普段来ない場所に来たわけだし、屋台で買うのもいいよね」

 見渡すと、美味しそうな匂いがあちらこちらから漂ってくる。

「ですが、殿下が町中を歩くのは」
「あー、バレるかもね。どうしよ」
「問題ない。これをつける」
「これって・・・・・・んん!?」
「で、殿下?」

 ギーシャの突然の行動に私もギルハード様も思わず声を裏返した。何故なら、ギーシャは何故か鼻眼鏡を装着したから。度無しの眼鏡にブリッジの下にくっついた大きな鼻と前衛的な形の髭。てゆーか、どっから出した!

「エミアに貰った。人混みではこれをつけるとバレないらしい」
「確かに王族が鼻眼鏡つけてるとは思わないけど!」

 てゆーか、エミア! あの子はもう!
 エミアとは王家の末っ子にして第一王女。
 腹違いだが一番年の近い兄妹であるギーシャによく懐いている。そして、人をからかうのが好きという困った性格の子だ。

「なるほど。魔法道具の一種でしょうか?」
「いや、明らかにただの鼻眼鏡ですからね、ギルハード様! 別の意味ですっごく目立ちますよ!」

 ああ、もう! 天然ばっかか!?
 ギーシャとギルハード様のやり取りにいつもより勢いよく突っ込んでしまった。

「とにかく、それ外して。がっつりかけるとレイセン王国民には逆に違和感を感じさせるから、認識阻害の魔法を軽くかけとけばいいと思うよ」
「後は光魔法で目の色を変えてみるといいかもしれません」
「そうか」

 ギーシャは光魔法と認識阻害の魔法を同時に展開し、紫の瞳が青へと変わった。

「これでいいか?」
「うん。大丈夫! じゃあ、お昼ご飯を探しにレッツゴー!」

 私は拳を突き上げて、意気揚々と露店の並んだ道に向かって歩き出した。
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