48 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
レンタル
しおりを挟む
「じゃあ、俺はこれ直すから下に戻るぞ」
「はいは~い」
エリックさんはそう言って、店内の奥の扉を開けて姿を消した。
「下?」
「この店には地下室があって、魔法道具の製造は地下でやってるんですよ」
「そうなんですか」
閉まる際に扉の奥に地下への階段が見えた。
「では、今度はこちらから。こちらにサインをお願いします」
「え? あ、レンタルの契約書ですね。ギーシャ」
「ああ」
ギルハード様が魔力測定を行ってくれたおかげで例の魔法道具を借りられることになったから、そのための契約書をロイドさんに手渡される。
私はそれを受け取り、ギーシャにサインを頼んだ。
ギーシャはいつも仕事でしているのだろう。慣れた動作でさらりとサインをし、用紙をロイドさんに返した。
「確かに。では、運びやすいよう包装するので、しばらくお待ちください」
ロイドさんは契約書をひらひらさせてから魔法道具を抱えて、カウンターの中に入った。
「・・・・・・」
「ギーシャ?」
ギーシャが自分の髪の毛先を摘まみあげ、くるりと指に巻いたり、こよりを作るみたいに捏ね出したので、声をかけた。
「どうしたの?」
「・・・・・いや、同じだと思って」
「同じ?」
「殿下とロイド殿の髪の色のことですね」
「ああ」
ギーシャの足りない言葉にギルハード様が付け足して、私は頷いた。
ギーシャとカウンター内でごそごそやっているロイドさんの頭を交互に見比べる。二人とも似た色合いの銀髪をしている。
「何か気になるの? 別に銀髪自体はそんな珍しくないでしょ」
銀髪紫眼はエーデルグラン帝国の王家独特の色だけど、帝国民はほとんどが銀髪だし、帝国以外にも銀髪の人間は多くいる。そんなに気にすることでもないと思うんだけど。
「・・・・・・そうだな。少し気になっただけだ」
ギーシャは何でもないと言ったように笑った。
「お待たせしましたー!」
ロイドさんが何故かおっきな紫のリボンをかけた袋を掲げ上げる。何故、プレゼント仕様。
「はい、どうぞ! あ、これ領収書です!」
「ありがとうございます。わっ! 重っ!」
「ミリア、俺が持つ」
「うん、お願い。ありがとね」
危うく手が床と魔法道具にプレスされかかったけど、その前にギーシャが代わってくれたから助かった。
「殿下、大丈夫ですか?」
「少し重いが、問題ない。魔法道具だから俺が持った方がいいだろう」
「はい」
主君に重たいものを持たせるのは忍びないが、体質上魔法道具に影響がないとも限らないのでギルハード様はしゅんとしてしまった。
「返却はいつがいいでしょうか? 明後日使用するのですが・・・・・・」
「レンタルは一週間になるので、期限内ならいつでも構いませんよ。あ、宣伝よろしくお願いします。これは宣伝用のチラシと簡要カタログです!」
「ふぉお!」
今度は山ほどのチラシと薄いカタログを手渡され、危うくプレスの危機再びだった。
「ミリア嬢、それは私が持ちます」
「あ、ありがとうございます」
ギルハード様は紙の山を受け取ると、とても生き生きした顔で笑った。わー、嬉しそう。
「ロイドさん、今回はありがとうございます」
私は改めてロイドさんにお礼を言った。
「いえいえ、今後とも猫の爪をご贔屓に」
「はい」
私は頷くと、ギーシャとギルハード様と一緒に猫の爪を出た。
「・・・・・・?」
扉を潜ろうとした時、ギルハード様が一瞬固まった。
「ギルハード?」
ギーシャがギルハード様を呼ぶ。
「今、髪を引っ張られたような・・・・・・気のせいですね」
後ろを振り向いて、何もないことを確認したギルハード様は小首を傾げた。
何かに引っ掛かったわけでもないだろうし、ギルハード様の言う通り気のせいだろう。
「では、お邪魔しました!」
私は特に気に止めず、出入口で会釈をした。
その間もロイドさんはにこやかな笑顔を浮かべ、手を振っていた。
「はいは~い」
エリックさんはそう言って、店内の奥の扉を開けて姿を消した。
「下?」
「この店には地下室があって、魔法道具の製造は地下でやってるんですよ」
「そうなんですか」
閉まる際に扉の奥に地下への階段が見えた。
「では、今度はこちらから。こちらにサインをお願いします」
「え? あ、レンタルの契約書ですね。ギーシャ」
「ああ」
ギルハード様が魔力測定を行ってくれたおかげで例の魔法道具を借りられることになったから、そのための契約書をロイドさんに手渡される。
私はそれを受け取り、ギーシャにサインを頼んだ。
ギーシャはいつも仕事でしているのだろう。慣れた動作でさらりとサインをし、用紙をロイドさんに返した。
「確かに。では、運びやすいよう包装するので、しばらくお待ちください」
ロイドさんは契約書をひらひらさせてから魔法道具を抱えて、カウンターの中に入った。
「・・・・・・」
「ギーシャ?」
ギーシャが自分の髪の毛先を摘まみあげ、くるりと指に巻いたり、こよりを作るみたいに捏ね出したので、声をかけた。
「どうしたの?」
「・・・・・いや、同じだと思って」
「同じ?」
「殿下とロイド殿の髪の色のことですね」
「ああ」
ギーシャの足りない言葉にギルハード様が付け足して、私は頷いた。
ギーシャとカウンター内でごそごそやっているロイドさんの頭を交互に見比べる。二人とも似た色合いの銀髪をしている。
「何か気になるの? 別に銀髪自体はそんな珍しくないでしょ」
銀髪紫眼はエーデルグラン帝国の王家独特の色だけど、帝国民はほとんどが銀髪だし、帝国以外にも銀髪の人間は多くいる。そんなに気にすることでもないと思うんだけど。
「・・・・・・そうだな。少し気になっただけだ」
ギーシャは何でもないと言ったように笑った。
「お待たせしましたー!」
ロイドさんが何故かおっきな紫のリボンをかけた袋を掲げ上げる。何故、プレゼント仕様。
「はい、どうぞ! あ、これ領収書です!」
「ありがとうございます。わっ! 重っ!」
「ミリア、俺が持つ」
「うん、お願い。ありがとね」
危うく手が床と魔法道具にプレスされかかったけど、その前にギーシャが代わってくれたから助かった。
「殿下、大丈夫ですか?」
「少し重いが、問題ない。魔法道具だから俺が持った方がいいだろう」
「はい」
主君に重たいものを持たせるのは忍びないが、体質上魔法道具に影響がないとも限らないのでギルハード様はしゅんとしてしまった。
「返却はいつがいいでしょうか? 明後日使用するのですが・・・・・・」
「レンタルは一週間になるので、期限内ならいつでも構いませんよ。あ、宣伝よろしくお願いします。これは宣伝用のチラシと簡要カタログです!」
「ふぉお!」
今度は山ほどのチラシと薄いカタログを手渡され、危うくプレスの危機再びだった。
「ミリア嬢、それは私が持ちます」
「あ、ありがとうございます」
ギルハード様は紙の山を受け取ると、とても生き生きした顔で笑った。わー、嬉しそう。
「ロイドさん、今回はありがとうございます」
私は改めてロイドさんにお礼を言った。
「いえいえ、今後とも猫の爪をご贔屓に」
「はい」
私は頷くと、ギーシャとギルハード様と一緒に猫の爪を出た。
「・・・・・・?」
扉を潜ろうとした時、ギルハード様が一瞬固まった。
「ギルハード?」
ギーシャがギルハード様を呼ぶ。
「今、髪を引っ張られたような・・・・・・気のせいですね」
後ろを振り向いて、何もないことを確認したギルハード様は小首を傾げた。
何かに引っ掛かったわけでもないだろうし、ギルハード様の言う通り気のせいだろう。
「では、お邪魔しました!」
私は特に気に止めず、出入口で会釈をした。
その間もロイドさんはにこやかな笑顔を浮かべ、手を振っていた。
0
お気に入りに追加
3,268
あなたにおすすめの小説
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる