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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

信用

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「おや、ダメですか。悪い話ではないと思うのですがねぇ」
「ミリア、悪いがこの話には乗れない」
「ギーシャがそう決めたなら私は別に構わないけど・・・・・・」

 申し訳なさそうにしているギーシャに私は気にしないでと言った。
 個人的に三割引きは魅力的だし、魔物の魔力測定も今後の魔物対策の役に立つように思えるけど、ギルハード様の主君はギーシャ。そのギーシャがダメだというなら、反対はしない。

「一応、理由をお聞かせ頂いても?」
「まず、一つはそれが本当に魔力測定器という保証がないからだ」
「え! 違うの!?」

 私は思わず魔力測定器を見直した。
 と言っても、魔力測定器の形なんて制作元で疎らだし、魔法道具の仕組みについてはてんで知識がないから本物かどうかなんて見分けはつかない。

「やだなぁ。本物ですよ~」

 ロイドさんが魔力測定器をばんばん叩いて笑う。
 あわわ・・・・・・魔力測定器って繊細なのに!

「そんな風に乱暴に扱っていいんですか?」
「大丈夫ですよ。これ頑丈に作ってますからね!」
「はぁ・・・・・・」

 私がはらはらしている間にもギーシャは話を進める。

「魔力測定器と騙って『茨の魔王』の魔力を利用するための道具という可能性もある。『茨の魔王』の魔力に興味を示すものは表社会にも裏社会にも多くいる。その魔力を採取したがる人間にも何度か会った。俺はギルハードもギルハードの魔力も利用させる気も、実験に使わせる気もない」

 その言葉にギーシャの憂慮が分かった。
『茨の魔王』の魔力が利用されるのは不味い。魔力は魔法兵器のエネルギー源になる。
 レイセン王国では魔法兵器は国の認可を受けた『炎魔の御手』と呼ばれる一握りの職人の集いしか製造することが出来ない。魔法武器も製造前に必ず事前報告が必須だ。密造なんてしようものなら、最悪終身刑だってあり得るほどレイセン王国は攻撃性のある魔法道具の製造に厳しい。
 とはいえ、その厳しい監視の目を掻い潜ってこの国で魔法武器の製造を行う馬鹿な人たちも存在する。
 そういうのは大抵は国外の人間だ。レイセン王国は土地柄、魔法道具に必要な上質な資材も集めやすいし、製造もしやすい。故に、魔法犯罪に最も厳しい国でありながらも、魔法を悪用しようとする人間はレイセン王国を目指す。
 それに、あまり考えたくはないけど、魔力保有者の宝庫であるレイセン王国の国民に対してよからぬことを考える人も中にはいるだろう。徹底した対策と国民自身の自衛力で今まで最悪な展開になったことはないけど。
『茨の魔王』を欲しがる人はどこにでもいる。実験体にし、利用したがる人も。
 もし、ロイドさんがギルハード様を利用しようと目論んでいるのなら、ギーシャはそれを許さないだろう。
 ギーシャだって、ギルハード様の過去は知っている。奴隷商の下で利用されるためだけに、商品としてだけ扱われた過去を。その中で商品として損なわれない程度の実験が行われたことも──。

「なるほど。要は信用問題ですか」
「ああ。初対面の人間を頭から信じることは出来ない」
「ふぅむ? では、信用を勝ち得るために私が試して見ましょうか」

 ロイドさんは不敵に微笑んで、導線に繋がれた輪っかを手に取った。
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