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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

魔力測定器

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「ギルハードに? 何を?」

 ギーシャが厳しい声でロイドさんに訊ねる。
 やっぱり、ロイドさんが言ってるのって外で待機してるギルハード様のことだよね。

「そう警戒しないでください。ただ、これの限界値を測りたいだけなので!」

 そう言ってロイドさんが重そうな魔法道具を取り出した。透明な硝子っぽい管と歯車がたくさんあって、それらが上の丸いレンズの嵌められた胴体に繋がってて少し映写機に似た形をしている。
 魔法道具の下からは導線が垂れてて、その先に腕輪っぽい輪っかがぶら下がっている。

「これは?」
「猫の爪で開発中の魔力測定器です!」

 魔力測定器とはその名の通り、魔力の保有量測定するための魔法道具だ。
 騎士団や学園でも使われている。魔法関連の職業が多いレイセン王国では魔力は色々なものの基準や基礎になるから、溶くに珍しいものない。

「魔力測定器? レイセン王国ではもう色んな店のものが普及してますから、あまり需要ないのでは?」
「存じております。しかし、これは今の魔力ですでは測定不能な魔物の魔力も測定できるよう改良中心なのです」
「魔物の!?」

 魔物は言わば黒の魔力の塊であり、その魔力保有量は人間を凌駕する。まぁ、例外的な人間もいるけど。

「はい。魔物の魔力が分かれば、各国の討伐隊やギルドも欲しがると思いますし、それに現状測定不能な方も自身の魔力を把握することが出来ます」

 確かに。魔力の差はゲームでいうところのレベルの差。レベル5のモンスターがレベル99のモンスターに勝てないのと同じように差がありすぎれば最悪命を落とすことになる。

「お二人にも必要なものと思いますが」
「私はぎりぎり測れたけど、ギーシャは?」
「一昨年から計測不能になった」
「ありゃー」

 レイセンの最初の王様は最も強い魔力を持っていたと言れている。その為、遺伝的に王家の血筋の人間は総じて魔力が強いそうだ。私も幼い頃から魔力が強く、本人の素養などもあるが魔力はある程度は成長するにつれて勝手に増えていく。それこそ身長が伸びるように。

「限界値を調べたいと言っていたな。だからギルハードか」
「はい。『茨の魔王』はその呼び名通りにどのような魔物すら凌ぐ魔力を持っていると訊きます。ならば、『茨の魔王』の魔力を測ることが出来れば、魔物の測定も可能ということになりますから」

 それは事実だ。『祝愛のマナ』でも様々なキャラクターが魔法を使っていたけど、ギルハード様の魔力についてのヒロインの独白は他のものとは異質だった。
 ギーシャを含め、魔力の強いキャラクターは珍しくない。ヒロインだって白の魔力の保有者であり、王族に匹敵する魔力の持ち主という設定だった。
 だけど、ギルハード様は、『茨の魔王』は──「その眼前に魔物はか弱き小獣と大差なく」「古き魔法も、新しき魔法も児戯に過ぎず」「触れれば何もかもが消え去る」──そんな言葉で飾り立てられた魔の落し胤。それがゲームでのギルハード様。そして、この世界でのギルハード様の噂などを聞いても、相違ないようだ。
 ロイドさんの要求は私が答えるべきものではないから、ギーシャの答えを待つ。
 ギーシャは迷いなく、はっきりと答えた。

「断る」
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