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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
白花茶
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「ああ、申し訳ありません。自己紹介がまだでしたね。私はロイド・ジルチーと申します。以後、お見知りおきを。おや、メイアーツ様、どうなされましたか? ギーシャ様の背中に隠れて」
「ミリア、あまり上着を強く握らないでくれるか? 繊維が伸びる」
「う~」
私がギーシャの背中に隠れるようにしていると、店員さん改め、ロイドさんがひょこりとギーシャの隣に移動し、私の顔を覗き込んでくる。
「ああ、怪しんでいるんですか? 怪しんでいるんですね? 確かに、私は怪しい奴ですね!」
「自覚あるんですか!?」
「はい! 一緒に働いている仲間にも常に胡散臭いって言われてます。ああ、悲しいですね~」
よよよ、と嘘泣きをするロイドさん。よく分からない人だなぁ。
「ま、立ち話もなんですし、お茶でもしましょう。あちらで」
そう言ってロイドさんが手で差したのは三脚の椅子が備えられた丸いテーブル。
その上には、小さな天象儀が置かれていた。
「え!? あれ!?」
私は思わず、カタログを開いて、ここに来る理由になった商品のページを開き、その商品の写真と天象儀を見比べてみる。全く同じだ。
ここの商品だからあること自体は不思議じゃない。だが、あのテーブルは明らかに商品を並べる用ではなく、お客さん用のセットだ。そこに目的の商品が置かれている。
何だが全部見透かされていそうで怖くなってきた。でも、あの商品は欲しい。
「・・・・・・手ぶらでも帰れないしな。とりあえず座ろう」
ギーシャが顔をしかめつつも、ロイドさんの言葉に従って席に座ったので私もそれに続いた。
ロイドさんがお茶の用意をしている間、私はテーブルの上の天象儀に何度もちらちらと視線を向けていた。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「気になりますか?」
「はい。これを求めに来ましたから」
私はお茶を頷くと出されたお茶を見つめた。透き通った薄い黄緑色の液体の底に小さな白い花がゆらゆらと揺らめいている。
「白花茶ですね」
「ご存じでしたか。レイセンでは珍しいものと訊いて、お客様の興味を引くためにお出ししているのですが」
「はい。大陸の南にあるサレア王国のお茶ですよね。親戚の方が送ってくれて、飲んだことがありす。すっきりとした後味で美味しいです」
サレア王国には婿入りした王弟殿下がいて、時々サレア王国の特産品などを送ってくれる。
ここ数年は予定が合わなくて式典の際も帰郷されてないけど、元気にしてるかなぁ。
叔父のことを思い出しながら白花茶を飲む。あー、ほんのり甘いけど、味は少し緑茶に似てる。ほっとするー。
私の気が緩んでいる間に、ギーシャはロイドさんと話している。
「南から来たのか?」
「レイセンに来る前はサレア王国辺りで商売をしていました。その前も大陸各地を転々としてましたね」
「そうか。では、東に行ったことは?」
剣呑な瞳で訊ねたギーシャに思わず肩が跳ね上がる。
東ってエーデルグラン帝国だよね。大陸の東側は何百年も前にエーデルグラン帝国が席捲している。
「ありません。あちらは魔法を使える方が少ないですし、魔法道具もあまり浸透してませんから」
ロイドさんが笑顔で答える。その間、二人の間に妙な空気が流れたような気がしたけど、なんだったんだろ。
「・・・・・・そうか。まぁいい。本題に入ろう」
様々な疑問を残しつつ、ギーシャは話題を例の天象儀に移した。
「ミリア、あまり上着を強く握らないでくれるか? 繊維が伸びる」
「う~」
私がギーシャの背中に隠れるようにしていると、店員さん改め、ロイドさんがひょこりとギーシャの隣に移動し、私の顔を覗き込んでくる。
「ああ、怪しんでいるんですか? 怪しんでいるんですね? 確かに、私は怪しい奴ですね!」
「自覚あるんですか!?」
「はい! 一緒に働いている仲間にも常に胡散臭いって言われてます。ああ、悲しいですね~」
よよよ、と嘘泣きをするロイドさん。よく分からない人だなぁ。
「ま、立ち話もなんですし、お茶でもしましょう。あちらで」
そう言ってロイドさんが手で差したのは三脚の椅子が備えられた丸いテーブル。
その上には、小さな天象儀が置かれていた。
「え!? あれ!?」
私は思わず、カタログを開いて、ここに来る理由になった商品のページを開き、その商品の写真と天象儀を見比べてみる。全く同じだ。
ここの商品だからあること自体は不思議じゃない。だが、あのテーブルは明らかに商品を並べる用ではなく、お客さん用のセットだ。そこに目的の商品が置かれている。
何だが全部見透かされていそうで怖くなってきた。でも、あの商品は欲しい。
「・・・・・・手ぶらでも帰れないしな。とりあえず座ろう」
ギーシャが顔をしかめつつも、ロイドさんの言葉に従って席に座ったので私もそれに続いた。
ロイドさんがお茶の用意をしている間、私はテーブルの上の天象儀に何度もちらちらと視線を向けていた。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「気になりますか?」
「はい。これを求めに来ましたから」
私はお茶を頷くと出されたお茶を見つめた。透き通った薄い黄緑色の液体の底に小さな白い花がゆらゆらと揺らめいている。
「白花茶ですね」
「ご存じでしたか。レイセンでは珍しいものと訊いて、お客様の興味を引くためにお出ししているのですが」
「はい。大陸の南にあるサレア王国のお茶ですよね。親戚の方が送ってくれて、飲んだことがありす。すっきりとした後味で美味しいです」
サレア王国には婿入りした王弟殿下がいて、時々サレア王国の特産品などを送ってくれる。
ここ数年は予定が合わなくて式典の際も帰郷されてないけど、元気にしてるかなぁ。
叔父のことを思い出しながら白花茶を飲む。あー、ほんのり甘いけど、味は少し緑茶に似てる。ほっとするー。
私の気が緩んでいる間に、ギーシャはロイドさんと話している。
「南から来たのか?」
「レイセンに来る前はサレア王国辺りで商売をしていました。その前も大陸各地を転々としてましたね」
「そうか。では、東に行ったことは?」
剣呑な瞳で訊ねたギーシャに思わず肩が跳ね上がる。
東ってエーデルグラン帝国だよね。大陸の東側は何百年も前にエーデルグラン帝国が席捲している。
「ありません。あちらは魔法を使える方が少ないですし、魔法道具もあまり浸透してませんから」
ロイドさんが笑顔で答える。その間、二人の間に妙な空気が流れたような気がしたけど、なんだったんだろ。
「・・・・・・そうか。まぁいい。本題に入ろう」
様々な疑問を残しつつ、ギーシャは話題を例の天象儀に移した。
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