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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
奉仕活動部の活動内容
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「それは俺も気になった」
ギーシャがギルハード様の意見に賛同を示す。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ミリアは奉仕活動部として学園の皆の役に絶って貰うとだけ言っていた」
「ありゃりゃ」
つまり、私は具体的な話を何一つしてなかったってわけかー。こりゃうっかりだ。
「奉仕活動部という名からして、奉仕活動を行うのは分かりますが、学内での奉仕活動とは一般のそれとはまた違ったものなのですか?」
「そうですね。基本的な活動は学内の清掃だったり、先生のお手伝いだったり、生徒が過ごしやすい環境作りって感じですが、それとは別に人助けなども考えています」
「人助け?」
二人に奉仕活動部の予定している活動内容を話すと、ギーシャは最後の人助けという言葉が気になったようで、私は更に説明を加えた。
「そう。新学期が始まってから学内の様子を見て考えるけど、生徒から相談事や依頼を受け付ける仕組みを作ろうと思うの。言わば学内限定の便利屋みたいなものね今やっているパーティー準備はその予行練習も兼ねてるわ」
「この場合ですと、ミリア嬢が依頼人ということですか?」
「はい」
私が頷くと、ギルハード様は何かを考えるような仕草をし、そのまま黙り込んだ。もしかしたら、活動内容に潜ませた私の思惑に気づいたのかもしれない。バレて困るものでもないし、ギルハード様がそれを妨害することもないだろうけど、ギルハード様には折を見て話しておいた方がいいかな?
「人助け・・・・・・」
「ギーシャ?」
「いや、なんでもない」
ギーシャが少しぼーっとしているようだったから、声をかけてみる。ギーシャは何かを誤魔化すように微かに笑って、窓の外を眺め始めた。
馬車も大分進んでいて、今走っているところは平民と呼ばれる人々が暮らしている区域。
八百屋、書店、大衆食堂、骨董屋、様々な店が軒を並べている。
春期休暇だからか、いつも以上に賑わっているように感じた。いや、普段内部から出ないからよく分からないんだけどね。
王都は東西南北以外に、中心から内部、中部、外部と区域が分かれている。内部は王宮を中心に貴族の家が多く、中部は平民階級の生活区域になっており、外部はそれぞれ、港やら畑やら生活産業に使われる土地になっている。
過ぎていく景色を眺めていると、馬車の進む先に赤い猫の絵が描かれた看板が見えた。恐らく、あれが猫の爪なんだろう。
馬車が停止すると、ギルハード様が最初に下り、次にギーシャ、私の順に下りた。
「では、私は外で待ってますので、何かあったらすぐにお呼びください」
「中に入らないんですか?」
「私がいると店の者を威圧してしまうでしょうから」
ギルハード様は苦笑しながら言った。確かに初対面の人にギルハード様のお顔は怖く見えてしまうだろうし、首筋の茨の模様も『茨の魔王』だとは気づかれなくても、カタギじゃないと勘違いされてしまうかもしれない。というか、以前そういうことがあったらしい。怖い人が刺青をするのはこの世界でも一緒のようだ。ギルハード様のは刺青じゃないけど。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ギルハード様を背に、私とギーシャは猫の爪に足を踏み入れた。
店内は少し暗く、静かだった。
OPENのプレートがかかってたから、営業中ではあるのだろうけど、カウンターに店員らしき影は見えない。
「ごめんくださーい!」
店の奥に向かって呼び掛けると、しばらくして奥の扉から誰かが出てきた。
暗くてよく見えないけど、近づいてくるとその姿が見えてきた。
流れるような長い銀の髪を束ねた男性だ。若々しい芽のような明るい黄緑色の双眼の片方にモノクルをかけている。
男性は私たちの前に立つと、両腕を広げ、芝居がかった素振りをして言った。
「ようこそ! 猫の爪へ!」
ギーシャがギルハード様の意見に賛同を示す。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ミリアは奉仕活動部として学園の皆の役に絶って貰うとだけ言っていた」
「ありゃりゃ」
つまり、私は具体的な話を何一つしてなかったってわけかー。こりゃうっかりだ。
「奉仕活動部という名からして、奉仕活動を行うのは分かりますが、学内での奉仕活動とは一般のそれとはまた違ったものなのですか?」
「そうですね。基本的な活動は学内の清掃だったり、先生のお手伝いだったり、生徒が過ごしやすい環境作りって感じですが、それとは別に人助けなども考えています」
「人助け?」
二人に奉仕活動部の予定している活動内容を話すと、ギーシャは最後の人助けという言葉が気になったようで、私は更に説明を加えた。
「そう。新学期が始まってから学内の様子を見て考えるけど、生徒から相談事や依頼を受け付ける仕組みを作ろうと思うの。言わば学内限定の便利屋みたいなものね今やっているパーティー準備はその予行練習も兼ねてるわ」
「この場合ですと、ミリア嬢が依頼人ということですか?」
「はい」
私が頷くと、ギルハード様は何かを考えるような仕草をし、そのまま黙り込んだ。もしかしたら、活動内容に潜ませた私の思惑に気づいたのかもしれない。バレて困るものでもないし、ギルハード様がそれを妨害することもないだろうけど、ギルハード様には折を見て話しておいた方がいいかな?
「人助け・・・・・・」
「ギーシャ?」
「いや、なんでもない」
ギーシャが少しぼーっとしているようだったから、声をかけてみる。ギーシャは何かを誤魔化すように微かに笑って、窓の外を眺め始めた。
馬車も大分進んでいて、今走っているところは平民と呼ばれる人々が暮らしている区域。
八百屋、書店、大衆食堂、骨董屋、様々な店が軒を並べている。
春期休暇だからか、いつも以上に賑わっているように感じた。いや、普段内部から出ないからよく分からないんだけどね。
王都は東西南北以外に、中心から内部、中部、外部と区域が分かれている。内部は王宮を中心に貴族の家が多く、中部は平民階級の生活区域になっており、外部はそれぞれ、港やら畑やら生活産業に使われる土地になっている。
過ぎていく景色を眺めていると、馬車の進む先に赤い猫の絵が描かれた看板が見えた。恐らく、あれが猫の爪なんだろう。
馬車が停止すると、ギルハード様が最初に下り、次にギーシャ、私の順に下りた。
「では、私は外で待ってますので、何かあったらすぐにお呼びください」
「中に入らないんですか?」
「私がいると店の者を威圧してしまうでしょうから」
ギルハード様は苦笑しながら言った。確かに初対面の人にギルハード様のお顔は怖く見えてしまうだろうし、首筋の茨の模様も『茨の魔王』だとは気づかれなくても、カタギじゃないと勘違いされてしまうかもしれない。というか、以前そういうことがあったらしい。怖い人が刺青をするのはこの世界でも一緒のようだ。ギルハード様のは刺青じゃないけど。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ギルハード様を背に、私とギーシャは猫の爪に足を踏み入れた。
店内は少し暗く、静かだった。
OPENのプレートがかかってたから、営業中ではあるのだろうけど、カウンターに店員らしき影は見えない。
「ごめんくださーい!」
店の奥に向かって呼び掛けると、しばらくして奥の扉から誰かが出てきた。
暗くてよく見えないけど、近づいてくるとその姿が見えてきた。
流れるような長い銀の髪を束ねた男性だ。若々しい芽のような明るい黄緑色の双眼の片方にモノクルをかけている。
男性は私たちの前に立つと、両腕を広げ、芝居がかった素振りをして言った。
「ようこそ! 猫の爪へ!」
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