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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

パーティー準備

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「・・・・・・腕が痛い。腱鞘炎になりそう」

 私は机に向かいながら、休息を訴える手首をぷらぷらと振った。

「ミリア、とりあえず、こっちのリストは終わった。次は?」
「ああ、じゃあこっちお願い。仕事早いね、ギーシャ。腕痛くならない?」
「デスクワークは慣れてるから問題ない」

 新しいリストを受け取ったギーシャはペンを手に黙々と仕事をこなしていく。
 今、私たちがやっているのは招待状を書く作業だ。
 私の計画した再卒業パーティーはギーシャたちの処罰も含んでいるため、作業はほとんど私たちがする。流石に料理の調理とか警備は専門の人に頼むけどね。
 私たちは第二談話室でそれぞれの役割を決め、それぞれが振り分けられた役割を遂行するべく、手分けした。
 リンス嬢は会場の設営や警備の手配でシーエンス子爵家にマリス嬢は料理のメニューなどを当日来てもらう料理人さんたちと相談するために別室へ。そのあとは飾り付けの花やらなんやらを仕入れるために町に行ってもらう。そして、残された私とギーシャは招待状や進行表の作成、その他諸々の雑務担当だ。
 もう、かれこれ小一時間ほど招待状を書く作業を続けているが、招待客の名前以外は書く内容が同じなので、若干ゲシュタルト崩壊を起こしてきた。私は今、何を書いてるんだろう?

「あと、二クラス分かぁ。これが終わったら、当日使うテーブルクロスとか食器類とかの用意しなくちゃ。この人数分揃うかなぁ?」
「王宮の物を使えばいいんじゃないか? ミリアが申請すれば、今からでも間に合うだろう。運搬は多少面倒だろうが。それから、パーティーのこの内容だと予算が足りない。これを削るか、どこか節約しないと」
「え? あっ! そっかぁ。う~ん・・・・・・これは削りたくないんだけど、だからって他も割りとギリギリだし・・・・・・これ以上借金は増やしたくないし~。あー! どうしようっ」

 頭をかきむしって床を蹴る。椅子ガタリと揺れたけど、直ぐに椅子の足は床についた。
 こういうの考えるのは苦手。予算とかー、スタッフとかー、備品とかー。吐いた唾飲むわけにゃいかんから、やるけどね!
 今回のパーティーの経費はお父様に頼んでメイアーツ家から半分、それからシーエンス家から借りて、シュナイザー家からの援助もあるが、当事者の保護者であるシュナイザー家はともかく、メイアーツ家とシーエンス家からはあくまで借りるという形を取っているからあまり大きな額を貰うわけにはいかない。諸々条件込みで無利子無担保という無茶な要求を通したわけだし。てゆーか、パーティーってホントお金かかるのね。

「節約するとしたら人件費か・・・・・・一部を魔法具で補填するのはどうだ?」
「えー? 魔法具のレンタル料も馬鹿にならないよ?」
「庶民向けの安価な魔法具を取り扱うところもあるだろう」
「それだと品質が落ちるしー。いや、探せば高品質のところもあるにはあるか?」

 王侯貴族は大抵昔ながらの老舗を利用しているが、レイセン王国では魔法具を取り扱う店なんで五万とある。なら、探せば安くて品質のいい商品を扱っているところもあるはず。

「フレイズ学園の生徒が集まるパーティーで使用するなら宣伝にもなるし、それを条件に値下げ交渉も出来るかもしれない。総務塔で魔法具を扱う店やギルドをリストアップして貰ってくる」

 ギーシャが立ち上がり、ドアへと向かう。
 ホント、王子としては優秀なんだよなー。この計画、絶対ギーシャがいなかったら成立してない。
 一つ困ったら、その解決策だけじゃなく、全体をよくする案を出してくれるから大助かりだ。

「時間はないから、今日中に決まらなかったら、さっきのところを削ることになるが──いいか?」
「わかった。どうか、いい店が見つかますように。いい店が見つかりますように」
「人件費以外を削れそうな魔法具もあるかもしれないし、総務塔には確か最新の魔法具のカタログも保管されているからそれも借りてくる」

 手を組んで祈っている私にそう言って、ギーシャは部屋を出ていった。
 一人でぶつぶつ言ってるのもあれかなと思い、祈るのを止めると、ふとギーシャの机を見た。

「ホント、仕事早いな」

 机の上にはさっき渡したばかりのリスト分の招待状が全て書き終わった状態で積み重なっていた。
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