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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
交際禁止令
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「あ、ところでマリス嬢とリンス嬢。ちょっとこちらへ来ていただけますか?」
「ええ」
「何よ」
私が二人をちょいちょいと手招きすると、二人はそれに従ってこちらへ来たのでそのまま部屋の角に移動する。
「ミリア?」
「二人と少し話したいから、ギーシャは気にせずお茶飲んでて!」
一人ソファに取り残されたギーシャにそう言うと、私は二人に向き合う。
「実は、二人にはもう一つ罰があります」
「「え?」」
急な話に二人は驚いているが、私は構わず続けた。
「今回の件でリンス嬢はギーシャと婚約保留になりましたよね」
「え、ええ。お母様に「淑女が大衆の面前で人を放り投げるなんて、言語道断!」ってお叱りを受けて、一から鍛え直すから婚約の件は事実上流れたわ」
「ふん。いい気味」
「ん?」
しゅんとしていたリンス嬢だが、マリス嬢に鼻で笑われ、じとりと睨みつける。
「お二人共! ダメですよ!」
私が強めに注意すると、二人は大人しくなった。
「それで、婚約の件が何か?」
「婚約の件と言いますか、お二人には奉仕活動期間中の禁止事項がありまして」
「禁止事項って何よ?」
「ギーシャとの交際禁止です」
「「え」」
私がそう伝えると、二人は思わず固まった。
「ああ。もちろん、この交際は男女交際という意味での交際ですよ?」
同じ部活をしていく以上、交流は避けられないから当たり前だけど、一応つけ加えておく。
「交際禁止って──」
「そもそも、お二人のギーシャの取り合いが事の発端ですから。今のところ、ギーシャの気持ちはマリス嬢に傾いているようですが、リンス嬢が事実上の婚約破棄をして、マリス嬢がハッピーエンド、じゃ不公平でしょう?」
二人共互いに思うところがあるのか、ピクリと身じろいだ。
「奉仕活動期間中ということは、期間が明けたら」
「もちろん、お好きにしていただいて結構ですよ。ギーシャの意思は尊重していただきますけど。アプローチならご自由に──って、訊いてます?」
わー、また火花が散ってる。背後に炎と虎と龍が見えるんですけど。
ま、いいや。
「貴女たちには期待していますよ。頑張ってギーシャを落としてくださいね」
小さな声で呟く。まぁ、声を潜めなくても今の二人には聞こえないだろうけど。
三人を一緒にするこの処罰には私にも利がある。
──私はギーシャと一緒にいたいから。
そのための懸念事項を潰さなくてはならない。
その方法はギーシャが恋をすること以外ないから。
そのために二人を利用させてもらう。
現状、ギーシャが心を傾けているのはマリス嬢だから私としてはそれでも構わないのだけど、リンス嬢が婚約破棄でそのままマリス嬢がギーシャと交際というのは不平等だし、外聞も良くない。シュナイザー家の体面もあるし。
だから、あくまで三年間は交際を禁止することで周囲が落ち着くのを待つ。いわゆる、ほとぼりが冷めるまで──って奴だ。
とにかく、マリス嬢だろうが、リンス嬢だろうが、第三者だろうが、ギーシャに恋をしてもらう。
私はギーシャと一緒にいたくて、ギーシャも同じ気持ちなら、そのためにもそれが必須だ。じゃないと、また同じことの繰り返しになってしまうかもしれない。
「ま、今度は離れないけどね」
大人しく紅茶を啜りながらソファで待っているギーシャを見て、私は心の中で大丈夫だと呟いた。
「ええ」
「何よ」
私が二人をちょいちょいと手招きすると、二人はそれに従ってこちらへ来たのでそのまま部屋の角に移動する。
「ミリア?」
「二人と少し話したいから、ギーシャは気にせずお茶飲んでて!」
一人ソファに取り残されたギーシャにそう言うと、私は二人に向き合う。
「実は、二人にはもう一つ罰があります」
「「え?」」
急な話に二人は驚いているが、私は構わず続けた。
「今回の件でリンス嬢はギーシャと婚約保留になりましたよね」
「え、ええ。お母様に「淑女が大衆の面前で人を放り投げるなんて、言語道断!」ってお叱りを受けて、一から鍛え直すから婚約の件は事実上流れたわ」
「ふん。いい気味」
「ん?」
しゅんとしていたリンス嬢だが、マリス嬢に鼻で笑われ、じとりと睨みつける。
「お二人共! ダメですよ!」
私が強めに注意すると、二人は大人しくなった。
「それで、婚約の件が何か?」
「婚約の件と言いますか、お二人には奉仕活動期間中の禁止事項がありまして」
「禁止事項って何よ?」
「ギーシャとの交際禁止です」
「「え」」
私がそう伝えると、二人は思わず固まった。
「ああ。もちろん、この交際は男女交際という意味での交際ですよ?」
同じ部活をしていく以上、交流は避けられないから当たり前だけど、一応つけ加えておく。
「交際禁止って──」
「そもそも、お二人のギーシャの取り合いが事の発端ですから。今のところ、ギーシャの気持ちはマリス嬢に傾いているようですが、リンス嬢が事実上の婚約破棄をして、マリス嬢がハッピーエンド、じゃ不公平でしょう?」
二人共互いに思うところがあるのか、ピクリと身じろいだ。
「奉仕活動期間中ということは、期間が明けたら」
「もちろん、お好きにしていただいて結構ですよ。ギーシャの意思は尊重していただきますけど。アプローチならご自由に──って、訊いてます?」
わー、また火花が散ってる。背後に炎と虎と龍が見えるんですけど。
ま、いいや。
「貴女たちには期待していますよ。頑張ってギーシャを落としてくださいね」
小さな声で呟く。まぁ、声を潜めなくても今の二人には聞こえないだろうけど。
三人を一緒にするこの処罰には私にも利がある。
──私はギーシャと一緒にいたいから。
そのための懸念事項を潰さなくてはならない。
その方法はギーシャが恋をすること以外ないから。
そのために二人を利用させてもらう。
現状、ギーシャが心を傾けているのはマリス嬢だから私としてはそれでも構わないのだけど、リンス嬢が婚約破棄でそのままマリス嬢がギーシャと交際というのは不平等だし、外聞も良くない。シュナイザー家の体面もあるし。
だから、あくまで三年間は交際を禁止することで周囲が落ち着くのを待つ。いわゆる、ほとぼりが冷めるまで──って奴だ。
とにかく、マリス嬢だろうが、リンス嬢だろうが、第三者だろうが、ギーシャに恋をしてもらう。
私はギーシャと一緒にいたくて、ギーシャも同じ気持ちなら、そのためにもそれが必須だ。じゃないと、また同じことの繰り返しになってしまうかもしれない。
「ま、今度は離れないけどね」
大人しく紅茶を啜りながらソファで待っているギーシャを見て、私は心の中で大丈夫だと呟いた。
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