11 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
物置部屋の二人
しおりを挟む
謹慎生活をエンジョイしている人を初めて見た。
ギーシャ王子はくしくしとハムスターみたいに顔を擦って足を床に下ろした。
「それで用件はなんだ」
「単刀直入に言いますけど、ギーシャ王子達の処罰を私が決めることになりまして、まぁ、事情聴取しに来ました」
「ふーん」
ギーシャ王子はまるで他人事のように私の話を聞いている。
「ギーシャ王子、真面目に聞いて下さい! マリス嬢とリンス嬢の私闘は王子がいきなり婚約破棄を宣言したことにあるんですよ」
私が語気を強めてそう言うと、ギーシャ王子はきょとんとした。
「何故、それがマリスとリンスがあんなことをすることに繋がるんだ?」
「・・・・・・は?」
この人、今なんて言った?
ギーシャ王子は心底不思議そうな顔をしている。その表情は演技でもなんでもない。
「なんでって、本当に分かってないのですか?」
「だから何がだ」
ああ、ダメだ。この人は何も分かっていない。
う~、頭が痛い。でも、うん。ギーシャ王子はこういう人だったよなぁ。
ギーシャ王子は何も変わっていない。
久しぶりに話してそれを実感した。
「リンス嬢は貴女の婚約者なんですよ」
「知っている。リンスも可哀想だな。侯爵令嬢というだけで俺なんかと婚約させられて。けど、俺はマリスと出会えて、あの子を好きになることが出来たから、もう大丈夫だ」
「な──」
何も大丈夫じゃない!
そう怒鳴りそうになって、限界ギリギリのところで留まる。
あー! なんでそうなる!?
ギーシャ王子の頭の中どうなってんの!?
なんで婚約破棄することがリンス嬢のためみたいに言ってんの!?
え? ひょっとしてリンス嬢からの好意に気づいてない? あんだけ秋波送られてたのに?
ぐあーっ、でもギーシャ王子なら絶対あり得るー!
「はぁー」
「どうしたんだ?」
「いえ、ちょっと精神統一を」
深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
冷静に、冷静に。
何事も順を追って解決しなくては。
「ギーシャ王子はマリス嬢が好きなのですよね?」
「ああ」
「だからリンス嬢との婚約を破棄しようとしたんですよね?」
「その通りだ」
うーん。まあ、そうなんだよなぁ。
あの時ギーシャ王子がしたのは婚約破棄宣言だけ。
あとはキャットファイトに注目も話題もかっ拐われてたし。
他に何を訊けば──。
あ。
私はふと、一つの疑問を思い出した。
それは前世から、ずっとギーシャ王子に抱いていた疑問。
私はそれをギーシャ王子に訊ねてみることにした。
「ギーシャ王子は何故、マリス嬢を好きになったんですか?」
ずっと不思議に思っていた。
ゲーム内でマリス嬢──というか、ヒロインと初めて出会った時、ギーシャ王子はヒロインに対して全く興味を示していないように見えた。
といっても、立ち絵だったし、表情とかが読めたわけじゃないけど。
でも、初対面の時は結局ギーシャ王子は一言も喋らなかった。
なのに次の登場時には普通に話してくれてた。
その間にギーシャ王子の心情に一体どんな変化があったのだろうとプレイしてた時に首を傾げたものだ。
そして、ゲーム同様にギーシャ王子はヒロイン──マリス嬢に好意を抱いた。
何故、マリス嬢なのか。
それを訊くことはある意味、婚約破棄の根底に触れることだと思う。
ギーシャ王子は私の問いに迷いも淀みもなく答えてくれた。
私は内心、顔やヒロイン補正的な理由だったらどうしようと思ってたけど、ギーシャ王子から返ってきた言葉は私の想像の斜め上をいくものだった。
「マリスは──ギルハードに笑いかけてたんだ」
ギーシャ王子はくしくしとハムスターみたいに顔を擦って足を床に下ろした。
「それで用件はなんだ」
「単刀直入に言いますけど、ギーシャ王子達の処罰を私が決めることになりまして、まぁ、事情聴取しに来ました」
「ふーん」
ギーシャ王子はまるで他人事のように私の話を聞いている。
「ギーシャ王子、真面目に聞いて下さい! マリス嬢とリンス嬢の私闘は王子がいきなり婚約破棄を宣言したことにあるんですよ」
私が語気を強めてそう言うと、ギーシャ王子はきょとんとした。
「何故、それがマリスとリンスがあんなことをすることに繋がるんだ?」
「・・・・・・は?」
この人、今なんて言った?
ギーシャ王子は心底不思議そうな顔をしている。その表情は演技でもなんでもない。
「なんでって、本当に分かってないのですか?」
「だから何がだ」
ああ、ダメだ。この人は何も分かっていない。
う~、頭が痛い。でも、うん。ギーシャ王子はこういう人だったよなぁ。
ギーシャ王子は何も変わっていない。
久しぶりに話してそれを実感した。
「リンス嬢は貴女の婚約者なんですよ」
「知っている。リンスも可哀想だな。侯爵令嬢というだけで俺なんかと婚約させられて。けど、俺はマリスと出会えて、あの子を好きになることが出来たから、もう大丈夫だ」
「な──」
何も大丈夫じゃない!
そう怒鳴りそうになって、限界ギリギリのところで留まる。
あー! なんでそうなる!?
ギーシャ王子の頭の中どうなってんの!?
なんで婚約破棄することがリンス嬢のためみたいに言ってんの!?
え? ひょっとしてリンス嬢からの好意に気づいてない? あんだけ秋波送られてたのに?
ぐあーっ、でもギーシャ王子なら絶対あり得るー!
「はぁー」
「どうしたんだ?」
「いえ、ちょっと精神統一を」
深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
冷静に、冷静に。
何事も順を追って解決しなくては。
「ギーシャ王子はマリス嬢が好きなのですよね?」
「ああ」
「だからリンス嬢との婚約を破棄しようとしたんですよね?」
「その通りだ」
うーん。まあ、そうなんだよなぁ。
あの時ギーシャ王子がしたのは婚約破棄宣言だけ。
あとはキャットファイトに注目も話題もかっ拐われてたし。
他に何を訊けば──。
あ。
私はふと、一つの疑問を思い出した。
それは前世から、ずっとギーシャ王子に抱いていた疑問。
私はそれをギーシャ王子に訊ねてみることにした。
「ギーシャ王子は何故、マリス嬢を好きになったんですか?」
ずっと不思議に思っていた。
ゲーム内でマリス嬢──というか、ヒロインと初めて出会った時、ギーシャ王子はヒロインに対して全く興味を示していないように見えた。
といっても、立ち絵だったし、表情とかが読めたわけじゃないけど。
でも、初対面の時は結局ギーシャ王子は一言も喋らなかった。
なのに次の登場時には普通に話してくれてた。
その間にギーシャ王子の心情に一体どんな変化があったのだろうとプレイしてた時に首を傾げたものだ。
そして、ゲーム同様にギーシャ王子はヒロイン──マリス嬢に好意を抱いた。
何故、マリス嬢なのか。
それを訊くことはある意味、婚約破棄の根底に触れることだと思う。
ギーシャ王子は私の問いに迷いも淀みもなく答えてくれた。
私は内心、顔やヒロイン補正的な理由だったらどうしようと思ってたけど、ギーシャ王子から返ってきた言葉は私の想像の斜め上をいくものだった。
「マリスは──ギルハードに笑いかけてたんだ」
10
お気に入りに追加
3,264
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
転生したら乙ゲーのモブでした
おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。
登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。
主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です
本作はなろう様でも公開しています
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる