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Another Side:外での異変

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 これは、カリンが地下書庫へ向かった後の話。

「じゃ、ちょっとグラム殿下と話して来まーす!」

 そう言って手を振りながら奥へと入っていったカリンを見送ったリーナとカイルは、受付近くの壁際に避けてカリンとグラムの戻りを待っていた。

「一体全体、何がどうなってるんですか?」

「だーかーらー、俺も知らねぇって!」

 行儀よく背筋を伸ばして立っているリーナが横目に、隣で壁に凭れかかっているカイルに訊ねると、カイルは頭を掻きながら頭を振った。

「飯済ませていつも通り図書館に行くかと思ったら、「婚約を破棄する旨をカリン君に伝えるから、カリン君を探しに行くぞ!」っていきなり言い出して、そのままワケわからんうちにああなったからな。頭、基本的に人の話聞かねぇし」

「ああ、だから貴方も頭を抱えていたんですね」

 はぁ~、と二人のため息が重なる。

「なぁ、どーなると思う?」

「お嬢様とグラム殿下の話し合いですか? 正直、まず話し合いになるかどうか・・・・・・」

「だよなぁ」

 二人の目蓋の裏には本に熱中するグラムと、グラムに完全スルーされてキレ散らかしているカリンの姿が鮮明に映っていた。

「とは言え、お嬢様がおっしゃっていたように、このタイミングでのご婚約の破棄はお嬢様にとっても本意ではありませんから、何としてでも説得されるでしょうね」

「いやいや、頭は手強いぞ~? 賭けてみるか?」

「カイル様?」

 互いの主で賭けなど、とリーナにじとっと目で窘められたカイルは、ははっと笑ってしゃがみ込み、膝で頬杖をついてぼんやりと出入口の方を眺め始めた。

「ん? 何だあいつら?」

 出入口が開き、ぞろぞろと入ってきた深緑のローブ集団に、カイルは怪訝そうな顔をして見せた。

「どこかの研究者団か何かではありませんか?」

「そーかぁ?」

 リーナはローブのフードがやけに目深なのは気になったが、貴族学院に入館してきた以上、身元は保証されているだろうと特に気にしなかった。
 しかし、カイルの眉間の皺はほどけない。
 この時点で、カイルは明確にローブの集団に不信感を感じていた。

「あ、受付に行ったぞ」

「外部の人間なら、まずは入館証の提示義務がありますから当然でしょう」

「今度は奥の方に行った。ひょっとして、あいつらも地下書庫に用があるのか?」

「・・・・・・」

 さっきカリンを案内した女性教員に通されて、奥へとぞろぞろ入って行くローブの集団に、リーナも何か引っ掛かるものを感じ、その動作を細かに観察する。

「ひー、ふー、みー・・・・・・」

「リーナ?」

 いきなり数字を数え始めたリーナに、カイルはどうしたのかと訊ねたそうな顔を浮かべた。
 数える声が止むと、リーナは剣呑な目つきで言った。

「おかしいですね・・・・・・」

「何が?」

 カイルの問いに、リーナは固い声で答える。

「人数です。地下書庫に・・・・・一度に・・・入れる定員は・・・・・・十名までです・・・・・・なのに・・・彼らは十二人います・・・・・・・・・。」

「!」

 リーナの指摘にカイルは立ち上がり、じっとローブの集団の動きを警戒した。

「頭やカリンみたいな特例ってことは?」

「そうぽんぽん例外があっては、何のための規則かわからなくなるでしょう」

 片や、第四王子の付き人。片や、侯爵令嬢の侍女。
 それぞれ守るべき対象を持つ二人は洞察力に優れ、危機察知能力が高かった。
 そんな二人の本能が警鐘を鳴らす。
 彼らは危険だと。

 リーナとカイルは目配せをして頷くと、受付の方へと向かっていった。
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