お城の中の配達人~婚約者が仕事の邪魔をしてくるので、婚約破棄をしようかと思います~

夢草 蝶

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第十一話 クフレスの人物像

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 私の婚約者。クフレス・ケナビン。
 私の実家であるガーネット侯爵家とは古い付き合いのあるケナビン伯爵家の令息。
 その人柄を一言で表すなら、尊大、といったところだろうか?
 勉強や努力など、何かをコツコツ積み重ねることが大嫌いで、なのに何故か自分は何にでもなれるし、何でも出来ると思い込んでいる。
 少し前までは、子供の頃から思春期辺りまである謎の万能感のようなものかと思っていたけど、十代後半に入っても考えに変化の兆しも見られないとなると、いい加減その理由付けも苦しくなってきた。
 大抵、その場の勢いで何かをやらかすので、私は婚約者というより保護者的視線でクフレスに接していたが、クフレスから見れば口喧しく見えたのだろう。元からあまり折り合いは良くない。
 とはいえ、今までのそれは我慢出来る範疇のものだったし、親同士は仲が良かったから、わざわざ相談するのも気が引けた。扱いづらいというだけで、ある程度扱い方を覚えれば、いなすことも割りと簡単だし。それに、クフレスと一緒に過ごす時は大抵、兄さんもいるから言い争いになりかけても、兄さんが間に入ってくれて、大事になることはなかった。
 だから今まで私の中のクフレスの人物像は、少し面倒臭い婚約者、くらいのものだったんだけど、仕事中にまでちょっかいを掛けてくるとなれば話は別だ。

「うーん、聞けば聞くほどのろくでなし・・・・・・」

「俺も流石にロザリーの仕事の邪魔までするとは思ってなかったけど、やっぱ色々溜まってたのかね?」

「兄さん、溜まるって?」

「ロザリーに対する不満?」

「私!?」

 思わず、自分を指差して声を上げる。

「ほら、クフレス、また落ちただろう?」

「──ああ」

 そういえば、クフレス本人は絶対に言わないでしょうけれど、ケナビンのおば様が言ってたっけ。

「いや、それで私に不満溜められても困るんだけど」

「まぁな。自業自得だし」

「何々? 落ちたって」

 小首を傾げているアイヴィス様の問いに、どちらが答えるかを目で押しつけ合う。
 ほら、私は一応、婚約者なので~。婚約者のそういうことを口にするのは、ね? 兄さん、任せた!
 無言の見つめ合いの末、私の眼力が凄かったのか、兄さんが根負けしたのか。
 兄さんが大きなため息をついて、クフレスの例のあれをアイヴィス様に教える。

「クフレス、毎年官吏登用試験を受験してるんだけど、今年も落ちたんだよ」
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