6 / 12
第六話 ダイヤの配達侍女
しおりを挟む
私が目を白黒させていると、ジーナさんが反論を始めた。
「言葉だけの説明なんて、いくらでも都合いいように言えるじゃないですか! そんなの証拠になりませんよ!!!」
そっちがそれ言うの!?
それを言ったら、そもそも私への疑い自体がジーナさんの自己申告だけで、物的証拠なんて何もないじゃない。本末転倒──いや、この場合は棚上げっていうべき? な言葉に私は心底呆れてしまう。
「そうです。大体、ヒース殿下は屋根にいたんでしょ? そんなところからあくまで西の宮の近くにいたのがロザリーだと断言出来るんですか?」
「えー、俺、目はいいんだよ? それに配達侍女の制服は目立つからねぇ。間違える訳ないよ」
クフレスの追撃も簡単にいなすヒース殿下。
ここに来て心強い助け舟が渡ってきて、私は内心安堵した。
通りすがりに助けて下さるなんて、ヒース殿下ってとってもいい人だなぁ。
「それにさ、俺の証言だけじゃ信じられないって言うなら、普通に自分たちで確認して回ればいいんじゃない? 配達侍女は目立つし、仕事も多いから顔見知りなんて沢山いるし。西の宮でロザリーを見たって人がいて、東の宮でロザリーを見た人がいなかったら、簡単に証明出来ることでしょ? まさか、分身した訳じゃあるまいし」
そんな術が使えたのなら、真っ先にお仕事に利用してますね。
例えば、仕事中に絡まれた時とか、私が二人いれば一人は仕事を続けて、もう一人が対応したりとか出来るし。
何にしろ、ヒース殿下の正論に言い返すのが難しくなってきたのか、ジーナさんが頓珍漢なことを言い出した。
「私は最上級の侍女ですよ!?」
「うん、知ってるけど」
そりゃ、タイの色を見れば誰でも分かります。見た感じ同い年っぽいのに凄いですね。
「王族のお世話も許されているエリート中のエリートですよ!? その私が嘘をついているとおっしゃるんですか!?」
「嘘をついていないことと、階級が関係あるの?」
「あるに決まってるじゃないですか。最上級を与えられているのは、私が信頼されている証です。つまり私が嘘をつくような人間ではないということの証明じゃないですか」
理屈が分かるような、分からないような。けど、仕事の階級が高い人は嘘をつかないって言うなら、汚職官僚なんて言葉はないんですよ。
何て思ってたら、背後からヒース殿下の腕が伸びてきた。
白い指先が服の上から鎖骨辺りを滑ったと思ったら、ヒース殿下が二人に見せつけるように私が丁度トップがネクタイの結び目に重なるところに下げていたネックレスを摘まむ。腕が回っているせいか、また距離が近い! 心臓に悪いから止めて下さい!
言葉にしなければ、そんな私の心情など伝わる筈もない。ヒース殿下は続ける。
「それを言うなら、ロザリーだって配達侍女だよ。それもダイヤの。確か配達侍女の試験もダイヤへの昇進も史上最年少なんだっけ? 凄いねぇ」
ええ、まぁ。侍女の最高階級が、最上級なら、配達侍女の最高階級はダイヤです。
なので、私も配達侍女の括りならジーナさんと同じくらいの立ち位置ですね。まぁ、運が良かったんでしょうねぇ。
「君の理屈で言うなら、最上級の侍女が嘘をつかないなら、ダイヤの配達侍女であるロザリーも嘘をついてないことになると思うよ。何せ、ダイヤは唯一最重要機密文書の配達を任せられる配達侍女だ。それこそ信頼性がないとなれないからね」
「言葉だけの説明なんて、いくらでも都合いいように言えるじゃないですか! そんなの証拠になりませんよ!!!」
そっちがそれ言うの!?
それを言ったら、そもそも私への疑い自体がジーナさんの自己申告だけで、物的証拠なんて何もないじゃない。本末転倒──いや、この場合は棚上げっていうべき? な言葉に私は心底呆れてしまう。
「そうです。大体、ヒース殿下は屋根にいたんでしょ? そんなところからあくまで西の宮の近くにいたのがロザリーだと断言出来るんですか?」
「えー、俺、目はいいんだよ? それに配達侍女の制服は目立つからねぇ。間違える訳ないよ」
クフレスの追撃も簡単にいなすヒース殿下。
ここに来て心強い助け舟が渡ってきて、私は内心安堵した。
通りすがりに助けて下さるなんて、ヒース殿下ってとってもいい人だなぁ。
「それにさ、俺の証言だけじゃ信じられないって言うなら、普通に自分たちで確認して回ればいいんじゃない? 配達侍女は目立つし、仕事も多いから顔見知りなんて沢山いるし。西の宮でロザリーを見たって人がいて、東の宮でロザリーを見た人がいなかったら、簡単に証明出来ることでしょ? まさか、分身した訳じゃあるまいし」
そんな術が使えたのなら、真っ先にお仕事に利用してますね。
例えば、仕事中に絡まれた時とか、私が二人いれば一人は仕事を続けて、もう一人が対応したりとか出来るし。
何にしろ、ヒース殿下の正論に言い返すのが難しくなってきたのか、ジーナさんが頓珍漢なことを言い出した。
「私は最上級の侍女ですよ!?」
「うん、知ってるけど」
そりゃ、タイの色を見れば誰でも分かります。見た感じ同い年っぽいのに凄いですね。
「王族のお世話も許されているエリート中のエリートですよ!? その私が嘘をついているとおっしゃるんですか!?」
「嘘をついていないことと、階級が関係あるの?」
「あるに決まってるじゃないですか。最上級を与えられているのは、私が信頼されている証です。つまり私が嘘をつくような人間ではないということの証明じゃないですか」
理屈が分かるような、分からないような。けど、仕事の階級が高い人は嘘をつかないって言うなら、汚職官僚なんて言葉はないんですよ。
何て思ってたら、背後からヒース殿下の腕が伸びてきた。
白い指先が服の上から鎖骨辺りを滑ったと思ったら、ヒース殿下が二人に見せつけるように私が丁度トップがネクタイの結び目に重なるところに下げていたネックレスを摘まむ。腕が回っているせいか、また距離が近い! 心臓に悪いから止めて下さい!
言葉にしなければ、そんな私の心情など伝わる筈もない。ヒース殿下は続ける。
「それを言うなら、ロザリーだって配達侍女だよ。それもダイヤの。確か配達侍女の試験もダイヤへの昇進も史上最年少なんだっけ? 凄いねぇ」
ええ、まぁ。侍女の最高階級が、最上級なら、配達侍女の最高階級はダイヤです。
なので、私も配達侍女の括りならジーナさんと同じくらいの立ち位置ですね。まぁ、運が良かったんでしょうねぇ。
「君の理屈で言うなら、最上級の侍女が嘘をつかないなら、ダイヤの配達侍女であるロザリーも嘘をついてないことになると思うよ。何せ、ダイヤは唯一最重要機密文書の配達を任せられる配達侍女だ。それこそ信頼性がないとなれないからね」
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
一族が揃ったら婚約者の不貞が発覚して新年早々、宴が家族会議になりました。
夢草 蝶
恋愛
ティティアは新年の宴に参加するために、公爵邸を訪れていた。
宴会場へ向かう途中、従兄妹たちを見つけるが、ティティアは声を掛けることが出来なかった。
何故なら、恋人同士の距離感で向き合っている二人のうちの一方は、ティティアの婚約者であるパーゼスだったからだ。
ティティアはこれから新年の宴ということもあり、後で両親に相談しようとその場を去ろうとしたが、そこへとある人物がやって来て、事態は一族を巻き込んだ家族会議へと発展!
「う、宴は・・・・・・?」
楽しい宴が家族会議に潰され、愕然とするティティアの肩を従兄のレノルドがポンと叩く。
「諦めろ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄された令嬢の父親は最強?
岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
神様、来世では雑草に生まれたいのです
春先 あみ
恋愛
公爵令嬢クリスティーナは、婚約者のディスラン王子に婚約破棄を言い渡された。
これは愚かな王子が勝手に破滅する身勝手な物語。
…………
リハビリに書きました。一話完結です
誰も幸せにならない話なのでご注意ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
侍女から第2夫人、そして……
しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。
翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。
ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。
一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。
正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。
セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~
sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。
ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。
そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】待ち望んでいた婚約破棄のおかげで、ついに報復することができます。
みかみかん
恋愛
メリッサの婚約者だったルーザ王子はどうしようもないクズであり、彼が婚約破棄を宣言したことにより、メリッサの復讐計画が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる