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第五話 ヒースの証言
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「ひ、ひ、ひ、ヒース殿下・・・・・・!」
驚き過ぎて何度も吃りながらお名前を呼ぶと、ヒース殿下はその顔に微笑みを浮かべて頷かれた。
「はーい。ヒース殿下ですよー」
返ってきたのはのんびりとした声だった。
亜麻色の絹のような髪に、蜂蜜色の瞳。肌は抜けるように白く、一見体の線は細く見えるのに、長身で私を支えてくださっている手も大きい。儚さと力強さを両方感じられる不思議な魅力のある方だ。
王子殿下、王女殿下方は皆、美貌で知られているし、宮廷勤めの人たちは皆、殿下方を一目見るだけで目の保養と言っていたっけ。
私は仕事柄、殿下方の元へお手紙などをお届けすることもあるから、殿下方を拝見することも多い。とは言え、お手紙を渡すのはグリーフ様のように側付きの方だから、こんな近くでお顔を見るのは初めてだ。
お顔綺麗だし、近いし、というか王子様だし!
緊張でドキドキどころか心臓止まりそうだし、お腹が痛くなってきた。そもそも登場がほんとに胃に悪い・・・・・・。
「今、上から降って来ませんでしたか!?」
「うん」
あっさりと認められた! クフレスとジーナさんも登場の仕方に驚いて固まってるし。そもそも、西の宮の屋根でお昼寝されてたヒース様が何故、ここに? ここはどちらかと言えば、南の宮寄りの渡り廊下なんですけれど。
「どうして?」
「んー、西の宮で昼寝してたら、何かグリーフが来る予感がして。だから場所を変えようと思って、屋根づたいに移動してたの。それでこの上歩いてたら、君らの話し声がしたから」
「普通に通路をご使用下さい」
屋根は廊下じゃないんですよ。
にしても、先程グリーフ様が西の宮に向かわれたことを考えると、恐るべき勘の良さです。
宰相様はヒース殿下が屋根でお昼寝されることを獣の習性と例えていらっしゃいましたけど、本当に野生動物のような方です。
「だって、廊下使うよりこっちの方が見つかっても追いつかれにくいし」
そりゃ、あんなすいすいと半球型や三角型の斜面になっている屋根の上を動き回れるのはヒース殿下くらいのものだ。地面に対してほぼ垂直の崖を登る山羊ですか。
「グリーフ様が探しておられましたよ」
「だから逃げてるの。それはそれとして」
戻る気はさらさらない様子のヒース殿下は、クフレスとジーナさんの方を向いて言った。
「話を聞いていたけれど、確かにロザリーは九短針半頃は東の宮じゃなくて、西の宮の近くにいたよ。西の宮の屋根の上で見てたから、間違いない」
待って!? ヒース殿下、あの時起きていらっしゃったんですか!? じゃあ、私は王族の前を挨拶も無しに素通りしたことに? それってとんでもない不敬じゃ・・・・・・。 それにヒース殿下、私の名前ご存知だったんですね──じゃなくて、なんでファーストネーム呼び!?
驚き過ぎて何度も吃りながらお名前を呼ぶと、ヒース殿下はその顔に微笑みを浮かべて頷かれた。
「はーい。ヒース殿下ですよー」
返ってきたのはのんびりとした声だった。
亜麻色の絹のような髪に、蜂蜜色の瞳。肌は抜けるように白く、一見体の線は細く見えるのに、長身で私を支えてくださっている手も大きい。儚さと力強さを両方感じられる不思議な魅力のある方だ。
王子殿下、王女殿下方は皆、美貌で知られているし、宮廷勤めの人たちは皆、殿下方を一目見るだけで目の保養と言っていたっけ。
私は仕事柄、殿下方の元へお手紙などをお届けすることもあるから、殿下方を拝見することも多い。とは言え、お手紙を渡すのはグリーフ様のように側付きの方だから、こんな近くでお顔を見るのは初めてだ。
お顔綺麗だし、近いし、というか王子様だし!
緊張でドキドキどころか心臓止まりそうだし、お腹が痛くなってきた。そもそも登場がほんとに胃に悪い・・・・・・。
「今、上から降って来ませんでしたか!?」
「うん」
あっさりと認められた! クフレスとジーナさんも登場の仕方に驚いて固まってるし。そもそも、西の宮の屋根でお昼寝されてたヒース様が何故、ここに? ここはどちらかと言えば、南の宮寄りの渡り廊下なんですけれど。
「どうして?」
「んー、西の宮で昼寝してたら、何かグリーフが来る予感がして。だから場所を変えようと思って、屋根づたいに移動してたの。それでこの上歩いてたら、君らの話し声がしたから」
「普通に通路をご使用下さい」
屋根は廊下じゃないんですよ。
にしても、先程グリーフ様が西の宮に向かわれたことを考えると、恐るべき勘の良さです。
宰相様はヒース殿下が屋根でお昼寝されることを獣の習性と例えていらっしゃいましたけど、本当に野生動物のような方です。
「だって、廊下使うよりこっちの方が見つかっても追いつかれにくいし」
そりゃ、あんなすいすいと半球型や三角型の斜面になっている屋根の上を動き回れるのはヒース殿下くらいのものだ。地面に対してほぼ垂直の崖を登る山羊ですか。
「グリーフ様が探しておられましたよ」
「だから逃げてるの。それはそれとして」
戻る気はさらさらない様子のヒース殿下は、クフレスとジーナさんの方を向いて言った。
「話を聞いていたけれど、確かにロザリーは九短針半頃は東の宮じゃなくて、西の宮の近くにいたよ。西の宮の屋根の上で見てたから、間違いない」
待って!? ヒース殿下、あの時起きていらっしゃったんですか!? じゃあ、私は王族の前を挨拶も無しに素通りしたことに? それってとんでもない不敬じゃ・・・・・・。 それにヒース殿下、私の名前ご存知だったんですね──じゃなくて、なんでファーストネーム呼び!?
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