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第二十八話 それぞれの言うことは

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 ・・・・・・もう色々ありすぎて、容量オーバーしたのか、疲れてどうでも良くなったのか、さっきのヴィクト・オーヴェンみたいに斬りかかられるよりはマシだと思ってしまったのか、はたまた元婚約者だからか、胸ぐら掴み上げられるという暴挙に出られた割には怒りが沸いて来ない。・・・・・・多分、最後の一個除いた全部だな、うん。
 一人で勝手に納得しているが、その間にも目の前の兄弟の言い合いは白熱していく。

「毒入りクッキーの件も、この火事の件も、ろくに調べもせずに犯人を決めつけるのは止めろ! お前は自分の立場というものを自覚しているのか? 王族が一言何かを言えば、たとえそれが間違いであったとしても、多くの人間は信じるんだ。それを考えてから発言をしろ」

 まぁ、なんてごもっともな意見でしょう。

「兄上こそ、ご自分の立場をお考えになっては如何ですか! 罪人を庇うなどと、王族としてあるまじき行為ですよ!」

 まぁ、なんて事実無根の言い掛かりでしょう。

 コンラッド殿下の手を振り払ったレスド殿下は、尚も私が犯人だと信じ切っているようで、全くこっちの言い分を信じて貰えない。

「はぁ、話にならないな・・・・・・とにかく、だ! これ以上、勝手な憶測でエルシカ嬢の名誉を傷つけるようなことをすれば、お前にもヴィクト・オーヴェンと同じように迎えが来るまで独房へ入ってもらうことになるぞ」

「なっ! まさか、兄上──ヴィクトを独房へ入れたのですか!!?」

「学内で剣を振り回していたんだ。そうする他にあるまい」

「そんなっ、酷い! レスド殿下のお兄様、ヴィクト君を独房から出してあげて下さい! ヴィクト君は何も悪いことなんてしてません!」

「・・・・・・・・・・・・はぁ?」

 今まで見たことないような表情で、聞いたこともない声色で、コンラッド殿下は声を上げた。
 その目はただただ理解不能な生き物と遭遇した時の、どの感情にも当てはまらない色を滲ませている。

「──いや、剣を振り回すのはどう考えても悪いだろ」

 コンラッド殿下と同じ顔をしていたヴァルト先輩が、ぽろりと溢すように言った。
 その隣では、二人のように表情に変化は見られないが、心なしか通常より目を丸くしたクラウズム先輩が、深く深~く頷いた。
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