14 / 37
第十三話 何故か感じた親近感
しおりを挟む
「マルクは学内での僕の護衛もしてくれてるんだ。だから、厳つい大人たちを後ろに学生生活を送らずに済んで助かってるよ」
「へー、優秀な方なんですね!」
「いえ、そんな! 光栄です!」
校内とはいえ、王族だもんねぇ。
このマルク先輩という方、同じ学生の方が目立たないという理由もあるんだろうけれど、学生の時分から王子殿下の護衛を任されるなんて、よっぽど優秀なのね。
コンラッド殿下に褒められて、ヴァルト先輩も嬉しそうだ。
あれ? けど──
「ヴァルト先輩、後からいらっしゃいましたよね? コンラッド殿下の護衛なのに、一緒にいなくてよろしかったんですか?」
「う゛!」
ヴァルト先輩が図星を突かれたように固まる。
私が疑問に首を傾げていると、コンラッド殿下が説明してくれた。
「うん。マルクは確かに私の護衛なんだけれどね、とても人が良くて、困っている人を放っとけない性分でね。今もさっき擦れ違った生徒の荷物を半分持って運んであげてたんだよ」
「お待ち頂きありがとうございます。コンラッド殿下!」
「ううん。本当は私も手伝った方が楽だっただろうけどね、私が申し出ると皆、恐縮してしまうから」
「そのお気持ちだけで十分です!」
それはそう。王子殿下に荷物運びを手伝わせたなんて、家族揃って卒倒ものだろう。
学園内では生徒は皆、平等なんて言ってるけれど、それはあくまで最低限のルールに関してであって、やっぱり王族は聖域なところがある。
「ところで、こちらの女子生徒は──って、確かにレイズ殿下の」
「はい。元婚約者です」
私は元を強調した。これ、大事。
どうやら、ヴァルト先輩は私のことを知ってたみたい。まぁ、これでも公爵令嬢だし、王子の婚約者だったし、名前だけは広く知られてんのよね。
「エルシカ・ガルルファングと申します。以後、お見知りおきを」
私は名前と社交辞令を述べてから、ヴァルト先輩へ会釈した。ヴァルト先輩も慌てて会釈を返してくれる。
「こちらこそ・・・・・・えーっと、どういう風に呼べばいいか──ですか?」
「普通に後輩として扱って下さって問題ありませんよ」
向こうは先輩。こっちは王子の元婚約者。今の私の立場が微妙だから、どういう接し方をしたらいいか迷っていたようなので、私は普通でいいと伝えた。
「そうか──わかった。じゃあ、よろしく。ガルルファング──でいいか?」
「はい。よろしくお願い致します。ヴァルト先輩」
あら? 姓で呼び捨てにされるなんて、何か新鮮。
「先輩・・・・・・!」
ヴァルト先輩、なんでそんなじーんっと感動してるの?
「マルクは一年の平均よりも小柄だから、なかなか先輩だと思われないから嬉しいみたいだね」
なるほど。私も最初は後輩かな? って思ったしなぁ。
「そういえば、マルク」
「はい?」
「荷物運びだけにしては、やけに遅かったね。何かあったのか?」
コンラッド殿下の問いに、ヴァルト先輩はギクリとなって、すぐに白状した。
「申し訳ありません! 荷物運びはすぐに終わったのですが、 ここへ来る道中、怪我した生徒を保健室へ運んだり、喧嘩をしていた生徒たちの仲裁に入って思ったより遅くなりました」
「相変わらずだねぇ。いいよ、そんなに気にしないで」
「そんなに厄介ごとに出くわすなんて、ヴァルト先輩は不幸体質なんですか?」
「そんなことはないと思うぞ!」
「目の前の困った人や諍いを放っておけないんだよね」
「そんなの見なかったことにすればいいのに」
今の話なら、怪我人以外は私だったら絶対に通りすぎている。不幸体質──というより、お人好しっぽいな。
「俺の目の前で困ってて、俺にも何か出来るかもしれないのに、素通りするなんて出来るわけないだろう!」
ほら、やっぱりお人好しだ。
なんか親近感湧いちゃうなぁ。私とは似ても似つかないのに、なんでだろ? あ、そっか!
「ヴァルト先輩って、私の弟に似てますね。人生棒に振ってそうなところがそっくり!」
「それ、褒めてんの!? というか、お前の弟どういう人生歩んでんの!?」
ツッコミきキレがありますねぇ。そういうところは似てないや。
「へー、優秀な方なんですね!」
「いえ、そんな! 光栄です!」
校内とはいえ、王族だもんねぇ。
このマルク先輩という方、同じ学生の方が目立たないという理由もあるんだろうけれど、学生の時分から王子殿下の護衛を任されるなんて、よっぽど優秀なのね。
コンラッド殿下に褒められて、ヴァルト先輩も嬉しそうだ。
あれ? けど──
「ヴァルト先輩、後からいらっしゃいましたよね? コンラッド殿下の護衛なのに、一緒にいなくてよろしかったんですか?」
「う゛!」
ヴァルト先輩が図星を突かれたように固まる。
私が疑問に首を傾げていると、コンラッド殿下が説明してくれた。
「うん。マルクは確かに私の護衛なんだけれどね、とても人が良くて、困っている人を放っとけない性分でね。今もさっき擦れ違った生徒の荷物を半分持って運んであげてたんだよ」
「お待ち頂きありがとうございます。コンラッド殿下!」
「ううん。本当は私も手伝った方が楽だっただろうけどね、私が申し出ると皆、恐縮してしまうから」
「そのお気持ちだけで十分です!」
それはそう。王子殿下に荷物運びを手伝わせたなんて、家族揃って卒倒ものだろう。
学園内では生徒は皆、平等なんて言ってるけれど、それはあくまで最低限のルールに関してであって、やっぱり王族は聖域なところがある。
「ところで、こちらの女子生徒は──って、確かにレイズ殿下の」
「はい。元婚約者です」
私は元を強調した。これ、大事。
どうやら、ヴァルト先輩は私のことを知ってたみたい。まぁ、これでも公爵令嬢だし、王子の婚約者だったし、名前だけは広く知られてんのよね。
「エルシカ・ガルルファングと申します。以後、お見知りおきを」
私は名前と社交辞令を述べてから、ヴァルト先輩へ会釈した。ヴァルト先輩も慌てて会釈を返してくれる。
「こちらこそ・・・・・・えーっと、どういう風に呼べばいいか──ですか?」
「普通に後輩として扱って下さって問題ありませんよ」
向こうは先輩。こっちは王子の元婚約者。今の私の立場が微妙だから、どういう接し方をしたらいいか迷っていたようなので、私は普通でいいと伝えた。
「そうか──わかった。じゃあ、よろしく。ガルルファング──でいいか?」
「はい。よろしくお願い致します。ヴァルト先輩」
あら? 姓で呼び捨てにされるなんて、何か新鮮。
「先輩・・・・・・!」
ヴァルト先輩、なんでそんなじーんっと感動してるの?
「マルクは一年の平均よりも小柄だから、なかなか先輩だと思われないから嬉しいみたいだね」
なるほど。私も最初は後輩かな? って思ったしなぁ。
「そういえば、マルク」
「はい?」
「荷物運びだけにしては、やけに遅かったね。何かあったのか?」
コンラッド殿下の問いに、ヴァルト先輩はギクリとなって、すぐに白状した。
「申し訳ありません! 荷物運びはすぐに終わったのですが、 ここへ来る道中、怪我した生徒を保健室へ運んだり、喧嘩をしていた生徒たちの仲裁に入って思ったより遅くなりました」
「相変わらずだねぇ。いいよ、そんなに気にしないで」
「そんなに厄介ごとに出くわすなんて、ヴァルト先輩は不幸体質なんですか?」
「そんなことはないと思うぞ!」
「目の前の困った人や諍いを放っておけないんだよね」
「そんなの見なかったことにすればいいのに」
今の話なら、怪我人以外は私だったら絶対に通りすぎている。不幸体質──というより、お人好しっぽいな。
「俺の目の前で困ってて、俺にも何か出来るかもしれないのに、素通りするなんて出来るわけないだろう!」
ほら、やっぱりお人好しだ。
なんか親近感湧いちゃうなぁ。私とは似ても似つかないのに、なんでだろ? あ、そっか!
「ヴァルト先輩って、私の弟に似てますね。人生棒に振ってそうなところがそっくり!」
「それ、褒めてんの!? というか、お前の弟どういう人生歩んでんの!?」
ツッコミきキレがありますねぇ。そういうところは似てないや。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。
わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。
ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。
「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」
元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。
貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。
なにがあったのでしょうか……?
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
(完)愛人を作るのは当たり前でしょう?僕は家庭を壊したいわけじゃない。
青空一夏
恋愛
私は、デラックス公爵の次男だ。隣国の王家の血筋もこの国の王家の血筋も、入ったサラブレッドだ。
今は豪商の娘と結婚し、とても大事にされていた。
妻がめでたく懐妊したので、私は妻に言った。
「夜伽女を3人でいいから、用意してくれ!」妻は驚いて言った。「離婚したいのですね・・・・・・わかりました・・・」
え? なぜ、そうなる? そんな重い話じゃないよね?
「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。
水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。
ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。
それからナタリーはずっと地味に生きてきた。
全てはノーランの為だった。
しかし、ある日それは突然裏切られた。
ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。
理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。
ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。
しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?)
そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。
わたし、何度も忠告しましたよね?
柚木ゆず
恋愛
ザユテイワ侯爵令嬢ミシェル様と、その取り巻きのおふたりへ。わたしはこれまで何をされてもやり返すことはなく、その代わりに何度も苦言を呈してきましたよね?
……残念です。
貴方がたに優しくする時間は、もうお仕舞です。
※申し訳ございません。体調不良によりお返事をできる余裕がなくなっておりまして、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じさせていただきます。
屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。
夜桜
恋愛
【正式タイトル】
屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。
~婚約破棄ですか? 構いません!
田舎令嬢は後に憧れの公爵様に拾われ、幸せに生きるようです~
無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――
卒業記念パーティーに参加していた伯爵家の嫡男です。
剣伎 竜星
恋愛
「私、ルカス・アバロンはソフィア・アルビオン公爵令嬢との婚約を破棄するとともに、このカレン・バーバリアス男爵令嬢を新たな婚約者とすることをここに宣言する!」
本日はアバロン王立学園の卒業式で、式はつつがなく終了し、今は式後の記念パーティーが開催されていた。しかし、突然、学園で評判の悪いルカス第一王子とその取り巻き、そして男爵令嬢が乱入。第一王子が前述の婚約破棄宣言を行った。
※投稿リハビリ作品です。
※R15は保険です。
※本編は前編中編後編の3部構成予定で、後編は後日談です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる