婚約破棄は承るので、後はもう巻き込まないでください。

夢草 蝶

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第九話 草じゃありません。ミントです。

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 いやー、大発見だった。
 私は満たされたお腹をぽんぽん叩いて、園芸庭に向かいながら、今日のランチでの大発見にしみじみしていた。
 今日はガーリックステーキとパンを食べたんだけど、新たなる発見があったのだ。
 うちの食堂では、パンにつけるジャムを二種類選べる。組み合わせはたっくさん。
 そんな中、私が選んだのは林檎のジャムと、新種類の玉葱のジャム。この玉葱のジャムがよかったー。
 果物とはまた違った風味だけれど、一度加熱した玉葱だから、ちゃんと甘さもあって。パンに付けてもかなり美味しかったけど、ふと気づいてしまったのだ!
 お肉に玉葱のソースって合うよね・・・・・・と。
 我ながら、恐るべきひらめきだったわー。ジャムとはいえ、玉葱のジャムには砂糖が入ってなかったから、玉葱の風味が存分に出ている。それをお肉に掛けて食べた時の美味しさと来たら!
 あれはまたやろうっと!

 ガーリックステーキ玉葱のジャムかけの味を思い出していると、目的地に辿り着く。
 着いた着いた~。さて、と。じゃあ、あれを~、あったあった! いっただき~。

「・・・・・・さま」

 にしても、コンラッド殿下に呼ばれるなんて、びっくりしたなぁ~。

「・・・・・・シカ様」

 なぁんか、色々考えてたっぽいけれど、王族って大変なんだなぁ。つくづく、婚約破棄して良かった~。

「・・・・・・ルシカ様!」

「むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ」

 ん? 何か声がするような?

「エルシカ・ガルルファング様!」

 呼ばれてると気づいて、私はそのまま振り返った。

「ふぁんのひょうへふか(なんの用ですか)?」

 おっと、口が塞がっていたから、言葉がふぁんふぁんしてしまったわ。
 って、何でいつの間に、私こんな沢山の令嬢に囲まれてんの? 何事? 何この令嬢包囲網?
 私が事態に困惑していると、私の名前を呼んだとおぼしき令嬢が、目を丸くして叫んだ。

「へ? は? 草!? あ、貴女何故、草なんて食べてますの!?」

 そう訊かれ、私は今口の中にある草と言われたそれを飲み込み、答えた。

「ゴクン。口臭ケアです」

「こ、こうしゅうけあ・・・・・・?」

 令嬢たちがぽかんとしている。

 だって、お昼ガーリックステーキ食べたからさ、やっぱりお口の匂いが気になるじゃん。
 あと、これは草じゃなくて園芸庭で育てられてるミントです。
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