4 / 6
第三話 回想、そして危機
しおりを挟む
乙女ゲーム。乙女向けのゲーム──つまり、恋愛シミュレーションゲームのことだ。
乙女ゲームが好きだったのは妹の方だったけど、あたしたち姉妹は互いに布教活動をしていたから、妹がハマっていたゲームを何度かプレイしたことがある。
この世界そっくりのシナリオの『花冠の祈り』もその一つだった。
攻略対象は隠しキャラを合わせて計六人。
最初のプレイで攻略出来るのは三人までで、三人を攻略し終えると残り二人のルートが解放され、それもコンプしたら隠しキャラのルートへ入れるという作りのゲームだった。
ただ、あたしは『花冠の祈り』をプレイしたことはあるものの、あまりあたしには合わなくて一人目を攻略しただけで止めてしまった。
その後は、どハマりしていた妹の感想やらネタバレを他のゲームをやりながら聞き流していただけ。
つまり、あまり詳しくはない。
そしてあたしは『花冠の祈り』で最初に攻略出来る三人のうちの一人、第一王子ルキア・アイゼンベルンルートに登場するクローザ・ティアライズに生まれ変わってしまったようだ。
クローザの役割は、ルキアルートの中盤で殺される悪役令嬢。
序盤でヒロインとルキアの微笑ましいエピソードをやって、そのまま恋愛要素の濃くなってくる分岐ルートに入ると婚約者のいるルキアが浮気をする最低男になってしまうため、クローザは中盤で死なせるしかないのだ。
元より、王子の婚約者という地位に固執していたクローザは、突然現れてルキアと意気投合したヒロインを快く思わず、何とかして排除しようとあらゆる策を講じた。それは『千呪印』の件でも分かるように、時には命を脅かすものもあった。
そして、さっきのがクローザ退場の断罪劇。
ヒロインに行っていたギリギリどころかフツーにアウトな嫌がらせが露見し、取り調べのために呼び出されたフールラウンド(まだ公になっていない貴族絡みの事件の取り調べを行う円形の建物)で、クローザは最後の悪あがきと服にナイフを仕込ませ、体には『千呪印』をかけて事に及んだ。
そして、取り調べを受ける前にヒロインを殺そうとしてルキアの返り討ちに合い、命を落とす──はずなんだよなぁ。
「ばっちり生きてるし。しかも、多分それがきっかけで前世思い出したし──むおぉぉぉ! めっちゃ詰んでるじゃん! 何で!? 普通、こういう死亡ルート有りキャラクターへの転生って生まれた時からすでにとか、子供の時に何かショックを受けてとか、最低でもシナリオ開始時に前世を思い出すものじゃん!? 何でよりにもよって死んで生き返ってから思い出すのぉっ!? 死亡フラグ回避どころか回収してからスタートとかバグってんでしょ!!? パッチはないのパッチは! どーしろってのよ!!?」
断罪されてあの世に退場の筈が、余罪増やして復活とかどうしろって言うの!?
今日は帰っていいって言われても、どうせ後日また呼び出されて取り調べ受けて罰を受けるんだよな・・・・・・。
『千呪印』とか使ったら一発アウトものだし、普通に極刑じゃない? 二度死ねっての!?
「うぁあああっ・・・・・・何でこんなことにぃ。あたし生まれ変わって二回死ぬような目に合うようなことした覚えないのにっ! いや、初出勤前に死んだりとか方々に迷惑かけたけどっ!?」
どうしようもない八方塞がり状況に頭を抱えて唸っていると、いつの間にか時間が経っていたらしく、医官が帰りの準備が整ったと知らせに来た。
あたしはどんよりお通夜モードでふらふらと立ち上がり、あることに気づいた。
「あ、しまった・・・・・・」
血塗れのまま寝っ転がったから、ベッドのシーツが真っ赤になってしまったのだ。
医官に素直に話して謝ると、「お気になさらず」と言われた。
最後まで気まずいまま、あたしは馬車に乗り込み、帰路へとついたのだった。
乙女ゲームが好きだったのは妹の方だったけど、あたしたち姉妹は互いに布教活動をしていたから、妹がハマっていたゲームを何度かプレイしたことがある。
この世界そっくりのシナリオの『花冠の祈り』もその一つだった。
攻略対象は隠しキャラを合わせて計六人。
最初のプレイで攻略出来るのは三人までで、三人を攻略し終えると残り二人のルートが解放され、それもコンプしたら隠しキャラのルートへ入れるという作りのゲームだった。
ただ、あたしは『花冠の祈り』をプレイしたことはあるものの、あまりあたしには合わなくて一人目を攻略しただけで止めてしまった。
その後は、どハマりしていた妹の感想やらネタバレを他のゲームをやりながら聞き流していただけ。
つまり、あまり詳しくはない。
そしてあたしは『花冠の祈り』で最初に攻略出来る三人のうちの一人、第一王子ルキア・アイゼンベルンルートに登場するクローザ・ティアライズに生まれ変わってしまったようだ。
クローザの役割は、ルキアルートの中盤で殺される悪役令嬢。
序盤でヒロインとルキアの微笑ましいエピソードをやって、そのまま恋愛要素の濃くなってくる分岐ルートに入ると婚約者のいるルキアが浮気をする最低男になってしまうため、クローザは中盤で死なせるしかないのだ。
元より、王子の婚約者という地位に固執していたクローザは、突然現れてルキアと意気投合したヒロインを快く思わず、何とかして排除しようとあらゆる策を講じた。それは『千呪印』の件でも分かるように、時には命を脅かすものもあった。
そして、さっきのがクローザ退場の断罪劇。
ヒロインに行っていたギリギリどころかフツーにアウトな嫌がらせが露見し、取り調べのために呼び出されたフールラウンド(まだ公になっていない貴族絡みの事件の取り調べを行う円形の建物)で、クローザは最後の悪あがきと服にナイフを仕込ませ、体には『千呪印』をかけて事に及んだ。
そして、取り調べを受ける前にヒロインを殺そうとしてルキアの返り討ちに合い、命を落とす──はずなんだよなぁ。
「ばっちり生きてるし。しかも、多分それがきっかけで前世思い出したし──むおぉぉぉ! めっちゃ詰んでるじゃん! 何で!? 普通、こういう死亡ルート有りキャラクターへの転生って生まれた時からすでにとか、子供の時に何かショックを受けてとか、最低でもシナリオ開始時に前世を思い出すものじゃん!? 何でよりにもよって死んで生き返ってから思い出すのぉっ!? 死亡フラグ回避どころか回収してからスタートとかバグってんでしょ!!? パッチはないのパッチは! どーしろってのよ!!?」
断罪されてあの世に退場の筈が、余罪増やして復活とかどうしろって言うの!?
今日は帰っていいって言われても、どうせ後日また呼び出されて取り調べ受けて罰を受けるんだよな・・・・・・。
『千呪印』とか使ったら一発アウトものだし、普通に極刑じゃない? 二度死ねっての!?
「うぁあああっ・・・・・・何でこんなことにぃ。あたし生まれ変わって二回死ぬような目に合うようなことした覚えないのにっ! いや、初出勤前に死んだりとか方々に迷惑かけたけどっ!?」
どうしようもない八方塞がり状況に頭を抱えて唸っていると、いつの間にか時間が経っていたらしく、医官が帰りの準備が整ったと知らせに来た。
あたしはどんよりお通夜モードでふらふらと立ち上がり、あることに気づいた。
「あ、しまった・・・・・・」
血塗れのまま寝っ転がったから、ベッドのシーツが真っ赤になってしまったのだ。
医官に素直に話して謝ると、「お気になさらず」と言われた。
最後まで気まずいまま、あたしは馬車に乗り込み、帰路へとついたのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
もう二度とあなたの妃にはならない
葉菜子
恋愛
8歳の時に出会った婚約者である第一王子に一目惚れしたミーア。それからミーアの中心は常に彼だった。
しかし、王子は学園で男爵令嬢を好きになり、相思相愛に。
男爵令嬢を正妃に置けないため、ミーアを正妃にし、男爵令嬢を側妃とした。
ミーアの元を王子が訪れることもなく、妃として仕事をこなすミーアの横で、王子と側妃は愛を育み、妊娠した。その側妃が襲われ、犯人はミーアだと疑われてしまい、自害する。
ふと目が覚めるとなんとミーアは8歳に戻っていた。
なぜか分からないけど、せっかくのチャンス。次は幸せになってやると意気込むミーアは気づく。
あれ……、彼女と立場が入れ替わってる!?
公爵令嬢が男爵令嬢になり、人生をやり直します。
ざまぁは無いとは言い切れないですが、無いと思って頂ければと思います。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる