風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

五十九話

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「お前達は何をしている。」
地を這うような姫川の声が倉庫に響いた。
それを聞いて3人の男が弾かれたように姫川に視線を向けた。瀬戸田は男達に拘束されたまま、涙でぐちゃぐちゃになった顔で姫川を見た。その顔に姫川の胸がズキンと痛んだ。そして同時に、目の前の男達に感じたことのないような強烈な怒りが湧いた。
3人の男達は一瞬驚いたような顔を見せたが、直ぐに顔を見合わせると嫌な笑みを浮かべた。
「おいおい、またお前かよ。何?混ざりに来たの?」
「さっきは偉そうに俺たちに説教たれてくれたよな。ちょうど良かったよ。お前には直接礼が言いたくて堪らなかったからよ。」
まるで姫川がここに来るのを知っていたかのように、冷静に振る舞う男達を姫川も静かに見つめる。しかしその瞳には激しいほどの怒りが見てとれた。
その怒りをも楽しむように瀬戸田を囲むように座っていた男のうち2人がヘラっと笑って立ち上がった。
残る1人は相変わらず瀬戸田を拘束している。そして、
「おい、不容易に近づきすぎるなよ。」
と姫川と徐々に距離を詰める男達に忠告した。
「圭介、心配しなくても大丈夫だって。」
「そうそう、こんなお坊ちゃん学校に通うような貧弱な奴に、俺たちがやられるわけないだろ。」
圭介と呼ばれた男の言葉にフンッと鼻を鳴らして、2人は余裕たっぷりにそう返すと、姫川の左右に立ち、足を止めた。
圭介は何を言っても無駄だと呆れたようにそんな2人を見つめた。
「本当はあの子のような可愛いのがタイプなんだけどな。」
「俺も。でもまぁ、そこそこ顔も整ってるようだし、仕方ないから相手してやるよ。」
下卑た笑いを浮かべる男達に姫川は青筋を立てる。そして、完全に油断している男の懐に躊躇いなく入ると、その鳩尾に容赦なく拳を叩き込んだ。
「ぐふぅ!ッ・・・」
口からくぐもった声を発して男はそのまま崩れるように膝を折った。
鳩尾への一発で上手く息が吸えないのか
「ハッ・・・ハッ・・・」
と苦しそうな息を繰り返している。その姿を表情も変えず冷たい眼差しで姫川が見下ろしていた。
「くそっ、この野郎!」
一瞬で床に沈んだ仲間を見て、もう1人の男が激情する。そして拳を振り上げると、そのまま姫川に向かって突進し始めた。
「よせっ!一旦落ち着いて冷静になれ!」
瀬戸田を押さえたまま圭介がそう叫ぶが、必死で姫川に殴り掛かる男にその声は届いていなかった。
チッ!
圭介が忌々しそうに舌打ちをする。
そんな様子を無表情で見つめる姫川は、突進してきた男が殴り掛かる寸前で屈むとその拳を避けた。そして伸ばされた腕と男の首根っこを掴むと、背負い投げの要領で男を地面に叩きつけた。
男の突進の勢いも相まって物凄い速さで床に背中を打ちつけた男は、
「グッ!ガハァ!」
と獣の様に吠えてそのまま意識を飛ばした。
そんな男を軽く一瞥すると姫川は直ぐに瀬戸田を押さえている圭介へと真っ直ぐ視線を向けた。
瀬戸田は泣き腫らした顔で小刻みに震えながら、そんな姫川を見つめていた。
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