159 / 178
混沌を極める2学期
五十七話
しおりを挟む
当初から柏木と打ち合わせしていた場所に圭介たちは来ていた。
そこは文化祭の喧騒から少し離れていて、人気も全然なかった。
少し遠くから、会場の音楽やアナウンスが聞こえている。
暫く歩いていると、圭介のスマホから短く控えめな音がした。
静かなこの場所ではその音がやけに大きく聞こえ、他の2人の視線も自然と圭介の手元に向いていた。
圭介が素早くスマホを確認すると、
『倉庫前の茂みの中』
と短いメッセージが表示されていた。
圭介たちが周りを見回すと、少し歩いた先に古い倉庫が建っているのが見えた。
その丁度道向かいにある茂みに視線を移すと、圭介たちは顔を見合わせてほくそ笑んだ。
立野が行ってしまった後、瀬戸田は心細そうに、しかし言われた通りに男達の動向を茂みに隠れて窺っていた。
男達はゆっくりとした歩みで目的もなく歩いている様子だったがその直後急に立ち止まった。
そして1人の男がスマホを手に取り操作していた。
他の2人も覗き込むようにして男のスマホを見ている。そして顔を上げた男が瀬戸田が隠れている茂みに迷わず目を向けてきた。
ドキッ!
その瞬間瀬戸田の心臓が大きく跳ねた。
茂みといっても結構背の高い植木で、手入れが行き届いていないのか、その周りにも雑草が生い茂っている。
そんな場所で身を隠している自分が簡単に見つかる筈がないと、更にギュッと身を丸め、うるさい心臓を強くギュッと掴む。
いつまでそうしていたか・・・
瀬戸田にとってはとてつもなく長く感じた時間だったがほんの数分だったかもしれない。瀬戸田は男達の気配がしない事に少し落ち着きを取り戻し強く閉じていた目をゆっくりと開いた。
すると・・・
「こんにちはー。」
頭上から瀬戸田を見下ろす3人の男達と目が合った。男達は至極楽しそうに目を弓なりに細めていた。
ひゅっ
瀬戸田は恐怖のあまり、喉に詰まるような呼吸を一つすると、
「あっ・・・あっ・・・」
と声にならない声をあげた。
「まあまあそんなに怖がらずに、俺たちと楽しいことしようよ。」
「お前の顔が怖いんだろ!こんなに怯えさせて可哀想に。」
「うるせえよ。」
軽快な会話とは反対に男達は瀬戸田の腕を掴むと、強引に茂みから引き摺り出そうとした。
「いっ!嫌!」
そのような状況になっても瀬戸田は恐怖が先行し、あまり抵抗もできないまま茂みから引っ張り出された。
辛うじて出す拒絶の言葉も酷く弱々しいものだった。
どうして自分がここに1人残されたのかも、何故男達にこうもあっさり見つかってしまったのかも何も分からないまま、瀬戸田は3人の男達によって、向かいの倉庫に押し込まれたのだった。
そこは文化祭の喧騒から少し離れていて、人気も全然なかった。
少し遠くから、会場の音楽やアナウンスが聞こえている。
暫く歩いていると、圭介のスマホから短く控えめな音がした。
静かなこの場所ではその音がやけに大きく聞こえ、他の2人の視線も自然と圭介の手元に向いていた。
圭介が素早くスマホを確認すると、
『倉庫前の茂みの中』
と短いメッセージが表示されていた。
圭介たちが周りを見回すと、少し歩いた先に古い倉庫が建っているのが見えた。
その丁度道向かいにある茂みに視線を移すと、圭介たちは顔を見合わせてほくそ笑んだ。
立野が行ってしまった後、瀬戸田は心細そうに、しかし言われた通りに男達の動向を茂みに隠れて窺っていた。
男達はゆっくりとした歩みで目的もなく歩いている様子だったがその直後急に立ち止まった。
そして1人の男がスマホを手に取り操作していた。
他の2人も覗き込むようにして男のスマホを見ている。そして顔を上げた男が瀬戸田が隠れている茂みに迷わず目を向けてきた。
ドキッ!
その瞬間瀬戸田の心臓が大きく跳ねた。
茂みといっても結構背の高い植木で、手入れが行き届いていないのか、その周りにも雑草が生い茂っている。
そんな場所で身を隠している自分が簡単に見つかる筈がないと、更にギュッと身を丸め、うるさい心臓を強くギュッと掴む。
いつまでそうしていたか・・・
瀬戸田にとってはとてつもなく長く感じた時間だったがほんの数分だったかもしれない。瀬戸田は男達の気配がしない事に少し落ち着きを取り戻し強く閉じていた目をゆっくりと開いた。
すると・・・
「こんにちはー。」
頭上から瀬戸田を見下ろす3人の男達と目が合った。男達は至極楽しそうに目を弓なりに細めていた。
ひゅっ
瀬戸田は恐怖のあまり、喉に詰まるような呼吸を一つすると、
「あっ・・・あっ・・・」
と声にならない声をあげた。
「まあまあそんなに怖がらずに、俺たちと楽しいことしようよ。」
「お前の顔が怖いんだろ!こんなに怯えさせて可哀想に。」
「うるせえよ。」
軽快な会話とは反対に男達は瀬戸田の腕を掴むと、強引に茂みから引き摺り出そうとした。
「いっ!嫌!」
そのような状況になっても瀬戸田は恐怖が先行し、あまり抵抗もできないまま茂みから引っ張り出された。
辛うじて出す拒絶の言葉も酷く弱々しいものだった。
どうして自分がここに1人残されたのかも、何故男達にこうもあっさり見つかってしまったのかも何も分からないまま、瀬戸田は3人の男達によって、向かいの倉庫に押し込まれたのだった。
62
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
残業リーマンの異世界休暇
はちのす
BL
【完結】
残業疲れが祟り、不慮の事故(ドジともいう)に遭ってしまった幸薄主人公。
彼の細やかな願いが叶い、15歳まで若返り異世界トリップ?!
そこは誰もが一度は憧れる魔法の世界。
しかし主人公は魔力0、魔法にも掛からない体質だった。
◯普通の人間の主人公(鈍感)が、魔法学校で奇人変人個性強めな登場人物を無自覚にたらしこみます。
【attention】
・Tueee系ではないです
・主人公総攻め(?)
・勘違い要素多分にあり
・R15保険で入れてます。ただ動物をモフッてるだけです。
★初投稿作品
神様ぁ(泣)こんなんやだよ
ヨモギ丸
BL
突然、上から瓦礫が倒れ込んだ。雪羽は友達が自分の名前を呼ぶ声を最期に真っ白な空間へ飛ばされた。
『やぁ。殺してしまってごめんね。僕はアダム、突然だけど......エバの子孫を助けて』
「??あっ!獣人の世界ですか?!」
『あぁ。何でも願いを叶えてあげるよ』
「じゃ!可愛い猫耳」
『うん、それじゃぁ神の御加護があらんことを』
白い光に包まれ雪羽はあるあるの森ではなく滝の中に落とされた
「さ、、((クシュ))っむい」
『誰だ』
俺はふと思った。え、ほもほもワールド系なのか?
ん?エバ(イブ)って女じゃねーの?
その場で自分の体をよーく見ると猫耳と尻尾
え?ん?ぴ、ピエん?
修正
(2020/08/20)11ページ(ミス) 、17ページ(方弁)
ある意味王道ですが何か?
ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。
さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。
だって庶民は逞しいので。
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる