風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

五十七話

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当初から柏木と打ち合わせしていた場所に圭介たちは来ていた。
そこは文化祭の喧騒から少し離れていて、人気も全然なかった。
少し遠くから、会場の音楽やアナウンスが聞こえている。
暫く歩いていると、圭介のスマホから短く控えめな音がした。
静かなこの場所ではその音がやけに大きく聞こえ、他の2人の視線も自然と圭介の手元に向いていた。
圭介が素早くスマホを確認すると、
『倉庫前の茂みの中』
と短いメッセージが表示されていた。
圭介たちが周りを見回すと、少し歩いた先に古い倉庫が建っているのが見えた。
その丁度道向かいにある茂みに視線を移すと、圭介たちは顔を見合わせてほくそ笑んだ。

立野が行ってしまった後、瀬戸田は心細そうに、しかし言われた通りに男達の動向を茂みに隠れて窺っていた。
男達はゆっくりとした歩みで目的もなく歩いている様子だったがその直後急に立ち止まった。
そして1人の男がスマホを手に取り操作していた。
他の2人も覗き込むようにして男のスマホを見ている。そして顔を上げた男が瀬戸田が隠れている茂みに迷わず目を向けてきた。
ドキッ!
その瞬間瀬戸田の心臓が大きく跳ねた。
茂みといっても結構背の高い植木で、手入れが行き届いていないのか、その周りにも雑草が生い茂っている。
そんな場所で身を隠している自分が簡単に見つかる筈がないと、更にギュッと身を丸め、うるさい心臓を強くギュッと掴む。
いつまでそうしていたか・・・
瀬戸田にとってはとてつもなく長く感じた時間だったがほんの数分だったかもしれない。瀬戸田は男達の気配がしない事に少し落ち着きを取り戻し強く閉じていた目をゆっくりと開いた。
すると・・・
「こんにちはー。」
頭上から瀬戸田を見下ろす3人の男達と目が合った。男達は至極楽しそうに目を弓なりに細めていた。
ひゅっ
瀬戸田は恐怖のあまり、喉に詰まるような呼吸を一つすると、
「あっ・・・あっ・・・」
と声にならない声をあげた。
「まあまあそんなに怖がらずに、俺たちと楽しいことしようよ。」
「お前の顔が怖いんだろ!こんなに怯えさせて可哀想に。」
「うるせえよ。」
軽快な会話とは反対に男達は瀬戸田の腕を掴むと、強引に茂みから引き摺り出そうとした。
「いっ!嫌!」
そのような状況になっても瀬戸田は恐怖が先行し、あまり抵抗もできないまま茂みから引っ張り出された。
辛うじて出す拒絶の言葉も酷く弱々しいものだった。
どうして自分がここに1人残されたのかも、何故男達にこうもあっさり見つかってしまったのかも何も分からないまま、瀬戸田は3人の男達によって、向かいの倉庫に押し込まれたのだった。
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