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混沌を極める2学期
五十三話
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「何だと!?くそっ、ふざけやがって!」
激昂した男が立ち上がり、姫川の襟元を掴んだ。
「ひっ!」
「うわっ!」
それを見た周りの生徒が息を呑む声が聞こえる。
男が襟元を掴んだこの状況に姫川は仕方なく実力行使にでようとした。しかし、
「おい、待て!」
と今まで静観していた男が口を開いた。
その瞬間今にも姫川に殴りかかりそうだった男が不満げな表情を浮かべた。
「何でだよ、圭介。こいつのこの態度に腹が立たないのかよ。」
すると圭介と呼ばれた男が口を開く。
「お前、そいつ、腕に風紀の腕章を付けてるだろ。今揉めるのはまずい。わかるだろ?」
そう言われた男は、姫川の腕の腕章を確認すると、不貞腐れたように仕方なく手を離した。
それを確認した圭介は口元に笑みを浮かべると姫川に近寄り耳元に囁いた。
「悪いな。つい楽しくて悪ノリしちまった。気をつけるから今回は見逃してくれよ。」
そして姫川の肩を軽く叩くと少し多めのお金を机に置いた。
「おい、行くぞ。」
圭介はその後、後を振り返ることなく歩き出す。その後ろを2人の男達も渋々ついていくが、去り際に姫川に睨みを効かすことは忘れなかった。
姫川は先程圭介と呼ばれた男が言った言葉と、意外なほどあっさりとこちらの言い分を聞き入れた事実に気味の悪さを感じた。
そして、このままあいつらを逃してはいけない。と直感的に感じて、
「ちょっと待て!まだ話はー・・・」
と直ぐに追いかけよう踵を返す。しかし、それを遮るように、
「姫川くんありがとう。」
「かっこいい。」
「マジで助かったよ。あいつら、次から次へと難癖つけてくるんだもん。」
とメイド喫茶を出店している生徒達が姫川の周りに集まってきた。
少なくなっていた客からもパチパチと拍手をおくられ、囲まれ、姫川は男達を直ぐに追いかけることが出来なくなってしまった。
「悪い。感謝は後でいいからそこを退けてくれるか?あの男達をこのまま行かせたくない。」
未だ緊張感の残る姫川のその言葉に他の生徒はハッとしてその場を退いた。
そのまま姫川は直ぐに教室を飛び出し、周りをキョロキョロと確認したが、男達の姿はもうどこにも見えなくなっていた。
「ちっ、面倒なことになったな。」
姫川が舌打ちすると、物陰に隠れていた牧瀬が申し訳なさそうに出てきた。
「ご、ごめん・・・僕に勇気がないから去ろうとする彼らに声もかけられなくて・・・」
自分の舌打ちで牧瀬の罪悪感が増長されたことに後悔しながら姫川は口調を和らげた。
「そんな顔をするな。悪いのはあいつらであってお前じゃない。牧瀬を責めようだなんてこれぽっちも考えてないから。」
その言葉に少し安堵した牧瀬に姫川が再び口を開いた。
「牧瀬、教室から出た後、あの男達がどっちに行ったかわかるか?」
「それなら・・・そこの廊下を左に曲がって行ったよ。」
若干、挙動不審になりながら先の廊下を指差し、弱々しく牧瀬が呟いた。
「ありがとう。一応他の風紀のメンバーにも男達の情報を共有しといた方がいいな。」
「うん。」
姫川の提案に牧瀬も頷く。
2人とも何か嫌な予感がしていた。姫川は携帯を胸ポケットから取り出すと、素早く連絡を取り始めた。
激昂した男が立ち上がり、姫川の襟元を掴んだ。
「ひっ!」
「うわっ!」
それを見た周りの生徒が息を呑む声が聞こえる。
男が襟元を掴んだこの状況に姫川は仕方なく実力行使にでようとした。しかし、
「おい、待て!」
と今まで静観していた男が口を開いた。
その瞬間今にも姫川に殴りかかりそうだった男が不満げな表情を浮かべた。
「何でだよ、圭介。こいつのこの態度に腹が立たないのかよ。」
すると圭介と呼ばれた男が口を開く。
「お前、そいつ、腕に風紀の腕章を付けてるだろ。今揉めるのはまずい。わかるだろ?」
そう言われた男は、姫川の腕の腕章を確認すると、不貞腐れたように仕方なく手を離した。
それを確認した圭介は口元に笑みを浮かべると姫川に近寄り耳元に囁いた。
「悪いな。つい楽しくて悪ノリしちまった。気をつけるから今回は見逃してくれよ。」
そして姫川の肩を軽く叩くと少し多めのお金を机に置いた。
「おい、行くぞ。」
圭介はその後、後を振り返ることなく歩き出す。その後ろを2人の男達も渋々ついていくが、去り際に姫川に睨みを効かすことは忘れなかった。
姫川は先程圭介と呼ばれた男が言った言葉と、意外なほどあっさりとこちらの言い分を聞き入れた事実に気味の悪さを感じた。
そして、このままあいつらを逃してはいけない。と直感的に感じて、
「ちょっと待て!まだ話はー・・・」
と直ぐに追いかけよう踵を返す。しかし、それを遮るように、
「姫川くんありがとう。」
「かっこいい。」
「マジで助かったよ。あいつら、次から次へと難癖つけてくるんだもん。」
とメイド喫茶を出店している生徒達が姫川の周りに集まってきた。
少なくなっていた客からもパチパチと拍手をおくられ、囲まれ、姫川は男達を直ぐに追いかけることが出来なくなってしまった。
「悪い。感謝は後でいいからそこを退けてくれるか?あの男達をこのまま行かせたくない。」
未だ緊張感の残る姫川のその言葉に他の生徒はハッとしてその場を退いた。
そのまま姫川は直ぐに教室を飛び出し、周りをキョロキョロと確認したが、男達の姿はもうどこにも見えなくなっていた。
「ちっ、面倒なことになったな。」
姫川が舌打ちすると、物陰に隠れていた牧瀬が申し訳なさそうに出てきた。
「ご、ごめん・・・僕に勇気がないから去ろうとする彼らに声もかけられなくて・・・」
自分の舌打ちで牧瀬の罪悪感が増長されたことに後悔しながら姫川は口調を和らげた。
「そんな顔をするな。悪いのはあいつらであってお前じゃない。牧瀬を責めようだなんてこれぽっちも考えてないから。」
その言葉に少し安堵した牧瀬に姫川が再び口を開いた。
「牧瀬、教室から出た後、あの男達がどっちに行ったかわかるか?」
「それなら・・・そこの廊下を左に曲がって行ったよ。」
若干、挙動不審になりながら先の廊下を指差し、弱々しく牧瀬が呟いた。
「ありがとう。一応他の風紀のメンバーにも男達の情報を共有しといた方がいいな。」
「うん。」
姫川の提案に牧瀬も頷く。
2人とも何か嫌な予感がしていた。姫川は携帯を胸ポケットから取り出すと、素早く連絡を取り始めた。
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