風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

五十一話

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直ぐに校舎内に入り、様々な装飾がなされた教室の前をズンズンと通り過ぎていく。姫川の形相に、すれ違う生徒や客達がギョッとした目を向け、自然と道をあけた。
そうして数分でメイド喫茶をしている教室の前まで来た姫川は、そこから少し離れたところで顔を青くしてしゃがみ込んでいる牧瀬を見つけた。
「大丈夫か?」
姫川が声を掛け近寄ると、血の気の引いた顔で牧瀬が顔を上げた。
「どうした!?何があった?」
余りの牧瀬の怯えように姫川も慌てて詰め寄った。
「ごめんね。姫川くんにも持ち場があるのに呼び出したりして・・・」
弱々しい牧瀬の声に姫川の心配が増す。
「いや、こっちは特に問題もなかったし気にするな。そんなことより本当に大丈夫か?まさか暴力でも振るわれたのか?」
牧瀬が不当な暴力に晒されたのかと思うと、それだけで姫川は居ても立っても居られなくなった。しかしそれを牧瀬が首を左右にふって否定した。
「ううん。トラブル自体は本当によくある難癖だよ。メイドのくせにむさ苦しいとか、本当の女を出せとか、料理がまずいとか事あるごとに文句を言っている感じで•••それだけなら僕も声を掛けるくらいはできるんだ。でも•••」
やけに歯切れの悪い牧瀬はそこまで言って一旦言葉を切ると、縋るような目で姫川を見て言葉を続けた。
「多分あの男達、夏祭りの会場で僕たちを追いかけてきた奴らだよ。」
「!?」
牧瀬の言葉に姫川は思わず息を呑んだ。
そして遠目から教室の中を確認すると、柄の悪そうな男が3人、だらしなく椅子に座り次々と生徒達に絡んだり、怯える生徒を揶揄って遊んでいた。
しかし姫川はその男達の顔を見ても、それがあの夏祭りの時の男達だという判断はつかなかった。
あの時、脇道から出てきた男達に見つかってすぐ、牧瀬の手を引いて脱兎の如く逃げ出した為、顔までは確認できていなかったからだ。
しかし、牧瀬は一度この男達に見つかり、捕まりかけている。忘れたくても忘れられないだろう。
今も肩を震わせながら、廊下にしゃがみ込んでいる。
「ごめん!本当は僕が行ってきちんと対応しないといけないってわかってるのに、どうしても勇気がでなくて・・・」
少し涙目になりながら牧瀬が申し訳なさそうに姫川に謝った。
その姿が不憫で姫川は牧瀬の肩に手を置くと、できるだけ穏やかな口調で話しかけた。
「牧瀬がこうなるのも無理はない。それだけ怖い思いをしたんだろ?大丈夫。こういう時には遠慮なく頼ってもらっていい。俺たちは友達だろ?」
姫川の言葉に堪らず牧瀬の目から涙が溢れた。
そんな牧瀬の頭をポンポンと撫でると姫川は男達のいる教室に向かって歩き出した。
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