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混沌を極める2学期
三十七話
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姫川は自室に戻ると、浴室にいく事もなく真っ先にベッドに倒れ込んだ。
「出ていってくれ。」
最後にそう呟いた正木の顔が頭から離れない。傷ついた顔をしていた。
無理もない。
と姫川は思う。我ながら酷いことを言った自覚はあるし、正木を傷つけてしまったことも十分に理解していた。そしてそれほど自分を好きでいてくれたことも。
それでも姫川には耐えられなかった。自分より柏木を信じて疑わない正木の姿をこれ以上見ることも、自分のせいでその都度傷つく正木を見ることもしんどい。なら一層離れてしまおうと思ったのだ。
姫川が正木に関わる以上、それだけ正木も柏木の毒牙にかけられる可能性が高い。幸いにも柏木が狙っているのは今の所姫川だけで、自分が囮になれば正木には実害がないかもしれない。
そう考えるとやはり自分のこの判断は間違っていなかったと思わざるを得ない。
苦しいのは今だけだ。時間が解決してくれる。
姫川はそう自分に言い聞かせる。
しかし、そう言い聞かせないと心が壊れてしまいそうになる意味を姫川が深く考えることはなかった。
次の日、姫川が風紀委員室に行くと心配そうに佐々木が声を掛けてきた。
「昨日の話し合いはうまくいかなかったの?」
昨日は柏木や正木とのことがあり、ベッドに入っても眠ることが出来なかった。目を瞑ると正木の傷ついた顔や、柏木の嫌な笑顔が頭に浮かびその都度それを振り払うように目を開けた。
そんな寝不足の酷い顔を見て、佐々木は瀬戸田との話し合いがうまくいかなかったと推測してそう聞いてきたのだ。
「あぁ、きちんと話せなかった・・・」
本当は待ち合わせ場所に来てもくれなかったのだが、昨日の柏木と山田との事を佐々木に知られたくなくて、姫川はそう返事をした。
「そっか。まぁそう落ち込むなよ。瀬戸田も今は頭に血が昇ってるかもしれないけど、時間が経てばもう少し落ち着いて話かできるかもしれないよ。」
慰めの言葉を口にする佐々木に、
「そうだな。ありがとう。」
と姫川は礼を言った。
「それで、今日は正木と会う日だろ?こっちの話はヘマをするなよ。俺たちの今後の仕事のし易さにも関わってくるからな。」
元気付けようとしているのか佐々木がそう明るく言うが、姫川にとっては今1番触れられたくない話題だった。
「どうした?昨日正木となんかあったのか?」
よっぽど顔に出ていたのか、姫川の顔を覗き込むように佐々木がそう聞いてきた。しまったと思ったがどうせ黙っていても自分たちの関係を見ればそのうちわかる事だと思い、姫川は渋々重くなる口を開いた。
「あいつとの関係も終わった。これからは前のように、風紀と生徒会として関わっていく。」
「はっ?」
その言葉に佐々木が目を丸くした。
何で?どうして?とその顔には書いてあるが、それ以上話したくなくて姫川は有無を言わさず話をそこで打ち切った。
空気の読める佐々木は姫川の思いを汲み取ったのかそれ以上詮索することは無かったが只々心配そうな顔を姫川に向けていた。
「出ていってくれ。」
最後にそう呟いた正木の顔が頭から離れない。傷ついた顔をしていた。
無理もない。
と姫川は思う。我ながら酷いことを言った自覚はあるし、正木を傷つけてしまったことも十分に理解していた。そしてそれほど自分を好きでいてくれたことも。
それでも姫川には耐えられなかった。自分より柏木を信じて疑わない正木の姿をこれ以上見ることも、自分のせいでその都度傷つく正木を見ることもしんどい。なら一層離れてしまおうと思ったのだ。
姫川が正木に関わる以上、それだけ正木も柏木の毒牙にかけられる可能性が高い。幸いにも柏木が狙っているのは今の所姫川だけで、自分が囮になれば正木には実害がないかもしれない。
そう考えるとやはり自分のこの判断は間違っていなかったと思わざるを得ない。
苦しいのは今だけだ。時間が解決してくれる。
姫川はそう自分に言い聞かせる。
しかし、そう言い聞かせないと心が壊れてしまいそうになる意味を姫川が深く考えることはなかった。
次の日、姫川が風紀委員室に行くと心配そうに佐々木が声を掛けてきた。
「昨日の話し合いはうまくいかなかったの?」
昨日は柏木や正木とのことがあり、ベッドに入っても眠ることが出来なかった。目を瞑ると正木の傷ついた顔や、柏木の嫌な笑顔が頭に浮かびその都度それを振り払うように目を開けた。
そんな寝不足の酷い顔を見て、佐々木は瀬戸田との話し合いがうまくいかなかったと推測してそう聞いてきたのだ。
「あぁ、きちんと話せなかった・・・」
本当は待ち合わせ場所に来てもくれなかったのだが、昨日の柏木と山田との事を佐々木に知られたくなくて、姫川はそう返事をした。
「そっか。まぁそう落ち込むなよ。瀬戸田も今は頭に血が昇ってるかもしれないけど、時間が経てばもう少し落ち着いて話かできるかもしれないよ。」
慰めの言葉を口にする佐々木に、
「そうだな。ありがとう。」
と姫川は礼を言った。
「それで、今日は正木と会う日だろ?こっちの話はヘマをするなよ。俺たちの今後の仕事のし易さにも関わってくるからな。」
元気付けようとしているのか佐々木がそう明るく言うが、姫川にとっては今1番触れられたくない話題だった。
「どうした?昨日正木となんかあったのか?」
よっぽど顔に出ていたのか、姫川の顔を覗き込むように佐々木がそう聞いてきた。しまったと思ったがどうせ黙っていても自分たちの関係を見ればそのうちわかる事だと思い、姫川は渋々重くなる口を開いた。
「あいつとの関係も終わった。これからは前のように、風紀と生徒会として関わっていく。」
「はっ?」
その言葉に佐々木が目を丸くした。
何で?どうして?とその顔には書いてあるが、それ以上話したくなくて姫川は有無を言わさず話をそこで打ち切った。
空気の読める佐々木は姫川の思いを汲み取ったのかそれ以上詮索することは無かったが只々心配そうな顔を姫川に向けていた。
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