風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

三十四話

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最近イライラが治らない。正木は教室で山田とかいう男と姫川を見てから感情を上手くコントロールする事が出来なくなっていた。
企画書の選定の時も、プレゼンテーションの準備の時も皆が自分に気を遣っていることも分かっていた。姫川が自分を気にするように何度も視線を送ってきていたことも全部わかっていたのに口を開けば姫川を強く問い詰めてしまいそうで正木自身どうしていいか分からなくなっていた。
恋愛経験はそれなりにある。男、女関わらず付き合ったことは何度もある。しかし自分の中にこんなに醜い感情があることは正木自身知らなかった。どちらかといえば、恋愛には淡白な方だとさえ思っていた。
ここ何週間かで、やっと姫川と向き合う覚悟が出来たのに、さっきの光景に全てが吹き飛んでしまった。
柏木に呼び出され、行った先でまさかあんな光景を見る事になるとは正木自身夢にも思っていなかった。
「最近あの2人、よく会ってるんだよ。」
そう言っていた柏木が、その現場に遭遇し、正木に連絡を寄越してきた。自分の誘いを断っておいてまさか他の男と会うわけ無いと半信半疑になりながらその場所へ行き、あの現場に遭遇した。
姫川と山田がキスをしている姿。正木から見る限り姫川からキスを迫ったような体制だった。
そしてどういう事か尋ねても姫川は正木と顔を合わそうともしなかった。
正木はこれまで関わった感じでは、姫川は恋愛やそう言った経験に乏しいと思っていた。しかし、今日のあの姿を見せられては認識を改めざるを得ない。
あれは、俺を油断させるための態度だったのか?恥じらった様な顔も慌てた顔も全て演技だったのか?
そこまで考えて正木は首を振った。
今までだっていい関係だったことなどなかった2人だ。今更正木に取り入って仲良くしようとする理由がない。
やはり一度話をする他ないか•••
そうは思うものの、先程の光景を思い出すとカーッと頭に血が昇る。どこにもやり場のないその感情をどうすることも出来ず正木は只々拳を強く握りしめた。
「おーい、恭治!どこ行ったんだよ!」
近くで柏木が正木を呼ぶ声がした。心配で追いかけて来てくれたのはわかるが、今はどうしても話す気になれなかった。何でも自分の話を真摯に聞いてくれる柏木に助けられる事もあるが、土足で自分の心に入ってくるような強引さもあるので、今はとても話す気にはなれなかった。
柏木が通り過ぎるのを待った後、鬱々とした気持ちを引きずりながら正木は寮への道を戻って行った。
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