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混沌を極める2学期
二十八話
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「瀬戸田。少し話が出来ないか?」
突然の瀬戸田の登場で完全に戦意を喪失した姫川は親衛隊の申請書を受け取ると直ぐに出て行った瀬戸田を追いかけて声を掛けた。
この前話した時にはそんな素振りは一切なかったのに、急に親衛隊に入った動機や、自分をどこか冷めた目で見る瀬戸田がどうしても姫川には放っておけなかった。
「俺は別にあなたと話すことなんかないですけど・・・プレゼンテーションの後なら少し時間があるのでいいですよ。」
冷たい口調のまま姫川を見ようともせず、瀬戸田がそう言った。
また柏木に何か言われたのか?
そう思わざるを得ない瀬戸田の態度に姫川は奥歯を噛み締める。最後に瀬戸田と話した時、柏木に自分が受けている虐めについて話すと強い瞳で言っていた。その後にこの態度となると、最早柏木が関わっていないと考える方が難しかった。
「恐らく何か誤解があると思う。じっくりと話がしたい・・・」
瀬戸田を柏木の一件に関わらせたくなくて、気がつけば姫川はそう言っていた。
「わかりました。では放課後いつもの場所でいいですか?」
瀬戸田の問いに、
「あぁ・・・」
と姫川が短く答えた。
その様子を立野が楽しそうに見ていたがそれに気づく余裕は今の姫川にはなかった。
「瀬戸田って生徒、この前調査した生徒だよな。お前、きちんと話したんじゃないのか?まるで敵でも見るような顔でお前のことを見てたぞ。」
風紀委員に戻るなり、小声でそう話しかけてくる佐々木に姫川もため息を吐いた。
「俺も瀬戸田がどうしてあんな態度なのかさっぱり分からないが。恐らく柏木が関わっていることは間違い無いだろう。」
自分を潰すと宣言していた柏木の言葉を思い出して姫川は頭を抱えたくなった。
「顔色悪いけど大丈夫か?」
横から佐々木の心配そうな声が聞こえる。
「あぁ、取り敢えず今日の放課後に瀬戸田と話をしてみるよ。」
気乗りしない顔で姫川がそう言うとそれを気の毒そうな顔で佐々木が見ていた。
はぁぁぁ、正木との約束を明日にずらしてもらうかな。
自分の椅子に戻りながら姫川はそんな事を考えていた。瀬戸田と腹を割って話すつもりの姫川は、おそらく互いが納得するまでに時間がかかるだろうと踏んでいた。その為、次の予定を気にしなくてもいいよう正木との約束を別日に変えてもらう必要があると感じた。
気は乗らないまま、姫川は携帯を手にするとその旨を正木にメッセージで送った。
“悪い。今日は予定が出来てしまったから話は明日でもいいか?”
意外に直ぐに返信が届き、確認すると
“わかった”
と短い返事が書いてあった。
それに姫川はフッと胸を撫で下ろす。
正木のことも、柏木のことも、瀬戸田のことも考えたらキリがないが、取り敢えず今は目の前のプレゼンテーションに全力を注ごうと、姫川は再び企画書に目を落とした。
突然の瀬戸田の登場で完全に戦意を喪失した姫川は親衛隊の申請書を受け取ると直ぐに出て行った瀬戸田を追いかけて声を掛けた。
この前話した時にはそんな素振りは一切なかったのに、急に親衛隊に入った動機や、自分をどこか冷めた目で見る瀬戸田がどうしても姫川には放っておけなかった。
「俺は別にあなたと話すことなんかないですけど・・・プレゼンテーションの後なら少し時間があるのでいいですよ。」
冷たい口調のまま姫川を見ようともせず、瀬戸田がそう言った。
また柏木に何か言われたのか?
そう思わざるを得ない瀬戸田の態度に姫川は奥歯を噛み締める。最後に瀬戸田と話した時、柏木に自分が受けている虐めについて話すと強い瞳で言っていた。その後にこの態度となると、最早柏木が関わっていないと考える方が難しかった。
「恐らく何か誤解があると思う。じっくりと話がしたい・・・」
瀬戸田を柏木の一件に関わらせたくなくて、気がつけば姫川はそう言っていた。
「わかりました。では放課後いつもの場所でいいですか?」
瀬戸田の問いに、
「あぁ・・・」
と姫川が短く答えた。
その様子を立野が楽しそうに見ていたがそれに気づく余裕は今の姫川にはなかった。
「瀬戸田って生徒、この前調査した生徒だよな。お前、きちんと話したんじゃないのか?まるで敵でも見るような顔でお前のことを見てたぞ。」
風紀委員に戻るなり、小声でそう話しかけてくる佐々木に姫川もため息を吐いた。
「俺も瀬戸田がどうしてあんな態度なのかさっぱり分からないが。恐らく柏木が関わっていることは間違い無いだろう。」
自分を潰すと宣言していた柏木の言葉を思い出して姫川は頭を抱えたくなった。
「顔色悪いけど大丈夫か?」
横から佐々木の心配そうな声が聞こえる。
「あぁ、取り敢えず今日の放課後に瀬戸田と話をしてみるよ。」
気乗りしない顔で姫川がそう言うとそれを気の毒そうな顔で佐々木が見ていた。
はぁぁぁ、正木との約束を明日にずらしてもらうかな。
自分の椅子に戻りながら姫川はそんな事を考えていた。瀬戸田と腹を割って話すつもりの姫川は、おそらく互いが納得するまでに時間がかかるだろうと踏んでいた。その為、次の予定を気にしなくてもいいよう正木との約束を別日に変えてもらう必要があると感じた。
気は乗らないまま、姫川は携帯を手にするとその旨を正木にメッセージで送った。
“悪い。今日は予定が出来てしまったから話は明日でもいいか?”
意外に直ぐに返信が届き、確認すると
“わかった”
と短い返事が書いてあった。
それに姫川はフッと胸を撫で下ろす。
正木のことも、柏木のことも、瀬戸田のことも考えたらキリがないが、取り敢えず今は目の前のプレゼンテーションに全力を注ごうと、姫川は再び企画書に目を落とした。
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