風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

二十六話

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どうやって部屋まで帰ってきたのか記憶はないが、気がつけば姫川は自室のソファに座っていた。
柏木の言葉がグルグルと頭を回る。そして本当に自分を信用してくれる人が少ないことに自信をなくしていく。
何より正木が自分より柏木を信じてしまった事実が姫川を打ちのめしていた。
本当はこれから正木と話すつもりだった姫川も柏木と話したことで、そんな勇気は完全に萎んでしまっていた。

数日後、プレゼンテーションが始まる日を迎えようとしていた。前日から生徒会と会場準備をした姫川だったが未だに正木と話し合えずにいた。
柏木との一件で正木と向き合うのが怖くなってしまった姫川はタイミングを掴めず、日々焦りだけが募る。
風紀と生徒会が体育館に集まり、生徒が座る場所にマットを敷いたり、職員用の椅子を用意したり。壇上に巨大なスクリーンやプロジェクターを設置する。12人で作業に取り組み、1時間程で準備が終わった。
その後、風紀のメンバーと会場を後にしようとしたところで、
「姫川、少しいいか?」
と正木に呼び止められた。
「俺たちは先に風紀委員室に戻っているから。」
佐々木達は気を利かせてそう言うと、直ぐに姫川を残して
去っていった。
生徒会のメンバーも2人を気にしながらも生徒会室に戻っていく。柏木のジトっとした視線を姫川は感じたが敢えてそちらには目を向けず、正木を正面から捉えた。
「何だ?」
自分の声が緊張で震えていないか姫川は少し心配になりながら言葉を返す。
「プレゼンテーションが終わったら一度ゆっくり話をしないか?」
「どういう風の吹き回しだ?俺の事を無視していたんじゃないのか?」
若干正木を責めるような口調になってしまったことを自覚しながら姫川が言葉を返す。
「俺がこうなっていることに心当たりはないのか?」
正木が顔を顰めて言うが姫川は
「ないな・・・。」
と短く返した。
「だったらそれも含めて一度きちんと話をしたい。」
どういった思いで正木がそれを口にしているのか姫川は図りかねたが、なかなか自分からは話し合いを設けるきっかけをみつけられなかったので、姫川は静かに頷いた。
それは正木に誤解されたまま今の関係を終わらせたくないという姫川の気持ちの現れでもあった。
「あぁ、じゃあプレゼンテーションが終わって落ち着いたらお前の部屋で話をしよう。」
「分かった。」
互いに感情をそこまで面に出さずそうやり取りをして別れた。
何日か前に柏木と話した事で、完全に自信を失っていた姫川は、正木から歩み寄ろうとしてくれた事に少なからず安堵していた。
そしてこの話し合いで、もし自分の言う事に正木が耳を傾けてくれるのなら、柏木の事も相談してみようと姫川は心に決めたのだった。


「いい事聞いたなぁ・・・明日のプレゼンテーションの後か。じゃあその前に手を打っとかないとな。」
体育館の影に隠れて柏木がニヤつきながらそう呟く。
1度は流たちと生徒会に戻ろうとした柏木だったが2人の話がどうしても気になり、トイレと適当に理由をつけて此処に隠れていたのだ。
「危ない危ない。あの2人が仲直りするとまた厄介な事になるからな。」
そう言うと慌ただしく柏木は携帯を握って連絡をとり始めたのだった。





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